お腹が痛いのは何が病気?上腹部編。

By: Kazusei Akiyama, M.D.

Stamens and pistils. São Paulo. Caju©2024


2024年10月

お腹が痛いのは何が病気?上腹部編。

先月からの腹痛のひとりごと第二弾です。前回はどのような状況の時には必ず受診するについて展開しました。腹痛の多くはなにもしなくても快復しますが、命取りになるような急性腹症もあります。腹部は人体の内臓器の2/3が入っているといって良いほど、多様な臓器が収まってます。また、性別により、生殖器が異なるのは、このコラムの25人の読者様(註0)にとっても当たり前ですよね。今月は生殖器が直接関係していない「上腹部」の腹痛についてひとりごとします。

『つまり、男性と女性とその他性に共通の腹痛の話。』

上腹部と下腹部の定義は分かりやすく言うと、おへそが境でその上が上腹部、その下が下腹部になります。上腹部に収まっている臓器は「胃」、「十二指腸」、「肝臓」、「胆嚢」「膵臓」、「脾臓」、「腎臓」、「副腎」、「小腸」、「横行結腸」です。小腸は大変大きな臓器で腹腔内のかなりの部分を占めますが、問題があると上腹部に症状が出ることが多いので、上腹部とします。横行結腸は大腸の一部で、正常範囲だと上腹部にありますが、大腸に問題が現れた場合、ほとんど下腹部に症状が出るので、結腸は下腹部編で説明します。次に、腹痛の種類のおさらいをすると「内臓痛」、「体性痛」と「関連痛」の3種類の分類です。上腹部の腹痛はこれらの臓器と3種類の痛みという要素間の関連になる訳です。それぞれ見ていきましょう。

臓器

病名

痛みの原因

痛みの種類、場所

とても痛いヤバい状況

胃

急性胃炎

  • 胃酸過多
  • 薬物で胃粘膜損傷
  • 食中毒
  • 暴飲暴食
  • 寄生虫(例アニサキス)
  • 内臓痛、体性痛
  • みぞおち、背中の真ん中
  • キリキリ痛、鈍痛、焼ける
  • 全体胃炎、粘膜真っ赤、臓器としての役割を失っている

感染性胃腸炎

  • ウイルス感染
  • 細菌感染
  • 寄生虫
  • 内臓痛、体性痛、関連痛
  • 腹部全体
  • 鈍痛、うねり(波)、刺す
  • 結果として脱水状態、栄養不足状態

慢性胃炎

  • 胃粘膜萎縮
  • ピロリ菌感染
  • 機能性胃痛
  • 胃下垂
  • 内臓痛、体性痛
  • みぞおち、背中の真ん中
  • キリキリ痛、鈍痛、焼ける
  • 急性化した場合

胃潰瘍

  • 胃粘膜の潰瘍
  • 粘膜下組織の損傷
  • 内臓痛、体性痛
  • キリキリ痛、刺す
  • 潰瘍が血管まで達すると出血
  • 穿孔(穴が開く)

十二指腸

十二指腸炎

  • 胃酸過多
  • 寄生虫
  • 内臓痛、体性痛
  • みぞおち、右脇腹
  • キリキリ痛、鈍痛、焼ける
  • 寄生虫が十二指腸のフアーター乳頭(註1)に入り込んで詰まった状態

十二指腸潰瘍

  • 胃酸過多

同上

  • 潰瘍が血管まで達すると出血
  • 穿孔(穴が開く)

肝臓

急性肝炎・慢性肝炎

  • 薬物中毒(酒を含む)   
  • 内臓痛、体性痛
  • 右上腹部、右脇腹、背中
  • 鈍痛
  • 劇症肝炎の場合急性肝不全に至る

肝硬変

  • ウイルス感染
  • 薬物中毒(酒を含む)

同上、あまり痛まない

  • 慢性肝不全で脳症に至る

胆嚢

胆嚢炎・胆管炎

  • 胆嚢の収縮機能の低下
  • 胆石
  • 胆嚢捻転
  • 内臓痛、体性痛、関連痛
  • 右脇腹、右肩
  • 強烈な鈍痛
  • 胆汁が流れない状態で胆嚢が腫脹、細菌感染

胆嚢結石

  • 体質
  • 食生活

同上

  • 胆管が詰まり、胆嚢炎・胆管炎を起こしている状態

膵臓

急性膵炎

  • 薬物中毒、主にアルコール
  • 胆石
  • 内臓痛、体性痛、関連痛
  • 左脇腹、上腹部全体帯状、背中全体
  • 猛烈な鈍痛
  • 膵管が詰まった状態
  • 膵臓細胞の破裂による組織破壊

慢性膵炎

  • 飲酒
  • 突発性
  • 内臓痛、体性痛、関連痛
  • 左脇腹、右上腹部、みぞおち
  • 鈍痛、シクシク痛
  • 症状が急性化した場合

脾臓

脾腫

  • 感染症
  • 肝臓病
  • 心不全
  • 代謝異常
  • 内臓痛、体性痛、関連痛
  • 左脇腹、背中左
  • 鈍痛
  • 破損(割れる)や梗塞に至った場合

脾損傷

  • 運動
  • 打撲(交通事故)
  • 脾腫

同上、激痛

  • 破損が広範囲で多量出血

脾梗塞

  • 心原性塞栓
  • 自己免疫疾患

同上、激痛

  • これ自体がヤバい状況

腎臓

急性腎炎

  • 細菌性感染症
  • 内臓痛、関連痛
  • 両脇腹、背中
  • 鈍痛
  • 急性腎不全に至った場合

腎盂炎

  • 細菌性感染症

同上

同上

慢性腎炎

  • はっきりした原因不明

同上、あまり痛まない

  • 感染症を合併した状態

副腎

副腎腫瘍

  • 良性腫瘍
  • 悪性腫瘍

同上、あまり痛まない

小腸

急性胃腸炎

  • 感染症
  • 食中毒
  • 暴飲暴食
  • 内臓痛、体性痛
  • 腹部全体
  • 鈍痛、シクシク痛、うねり(波)、刺す
  • 結果として脱水状態、栄養不足状態

腸閉塞

  • 術後癒着
  • 腸捻転
  • 腫瘍
  • 内臓痛、体性痛
  • 腹部全体
  • 鈍痛、刺す、激痛
  • 腸が壊死した状態

腸梗塞

  • 血栓あるいは塞栓のため小腸に血液を運ぶ動脈の閉塞
  • 内臓痛、体性痛
  • 腹部全体
  • 猛烈な鈍痛

同上

  • 註1:胆管と膵管が合流して十二指腸に開口する部分名。

さらにこれらの臓器には「癌」が発現しうるわけですが、癌に関する疼痛はその進行度により、急性か慢性かの痛みが現れます。癌の発生率が高いのは胃、膵臓、肝臓です。一般的に癌の疼痛は初期はほとんど痛みがなく、あれば関連痛であることが多く、内臓の問題である事が見落とされる原因になります(註2)。癌が進行すると、内臓の破壊や腫脹により周辺組織や臓器に影響が起こり、内臓痛や体性痛が顕著に現れる事が多々見られます。癌が原因で腹痛が起こっているのはある程度、普通かなり、進行しているためなので、痛みの強弱に関わらず、ヤバい状況と言えます。

  • 註2:関連痛は皮膚や体表に現れる。

命に関わる腹痛はすぐに処置する必要があります。次のように発症してあまり時間が経っていない(1週間以内)、「急性腹症」と呼ばれる状況は外科的措置が必要な場合が多いのでガマンしてないですぐに受診する必要があります:

  • 突然発症した腹痛
  • これまでに経験した事がない腹痛
  • とても痛く、耐えがたい腹痛
  • 時間が経つにつれて増してきた腹痛
  • 安静にしても6時間以上続く腹痛
  • 嘔吐、発熱、胸痛、下血、呼吸困難、意識低下が伴う腹痛

『ヤバい状態は個人差がある耐性に左右されるので、どうもおかしいなとか、ちょっとわからんなとか疑問がある場合は念のため診察を受けたほうがよいと考える。かかりつけ医がいる方は相談事項です。』

次回は下腹部の腹痛の原因疾患について展開していきます。


註0:先月お一人読者様がおられた事が判明しましたので25人になりました。

お腹が痛いのは何処までガマンするか?

By: Kazusei Akiyama, M.D.

Moonlight on waves. Guaecá. Caju©2024


2024年9月

お腹が痛いのは何処までガマンするか?

今年に入ってなんとなく診療所でよく見るな〜になっているのが「腹痛」です。お腹が痛くて受診があるのは総合内科では一般的です。ヒトを含む哺乳類の腹部には沢山の臓器、組織、機能が集まってますので、簡単に網羅できるものではありません。ここ開業医のひとりごとでも8回、色んな場面で腹痛が現れてます。それらも一例であるように腹痛はあらゆる病気の症状として現れます。

「痛み」は感じている本人にしかわからないもので、客観的に評価不可能な症状です。また、その感じている痛みに対してどのくらい耐性があるかは大変個人差があるものです(註1)。大まかに分類すると、「ちょっと痛いから大丈夫」、「やっぱり痛いから医者に診てもらおう」、「すごく痛いからヤバい、病院へ行こう」、とこのように大体3段階に分けられるのではないかと思います。ただ、この痛みの度合いが人によるのですね。医学生だった時、救急外科の教授の授業で一番記憶に残っているのが次の講義です:

「ブラジルは多民族国家である事を常に念頭におくこと。痛み方に差が大きい。つまり、民族や文化によって痛みの捉え方や表現が違う。例えば、いかにもイタリア系とわかるオバチャンが救急で「痛い痛いとワアワア騒いでたら」、まあちょっとは痛みもあるのかなと思ってもよい。しかし東洋系の男性が「少しでも痛い…と言ったら」これは大変痛くてヤバいはずなので即処置が必要である。(註2)」。

『正にそのとおり、完璧に的を射た教えですな。』

  • 註1:痛み(疼痛)の定義や分類は2023年3月のひとりごと-毎日痛いのは生きてる証拠?-で展開してます。
  • 註2:6回生の時に実際に見た症例が正にそれだった:腹痛を一週間我慢して救急搬送された日系の男性、単なる虫垂炎だったのが、盲腸が破裂し、膿をまき散らして広範囲な腹膜炎になり、長期入院になってしまった。早期に病院に来ていれば2泊くらいの入院で済んだのに…

ではどのような仕組みでお腹が痛くなるかまずみてみましょう。

  • *内臓そのものの痛みである「内臓痛」。腹部内にある臓器が痙攣したり、破損するような状況が原因。痛み方は鈍痛、波状(行ったり来たり)、場所が漫然としてはっきりしない。
  • *腹腔を覆っている腹膜や横隔膜の神経が刺激されて現れる「体性痛」。痛み方は刺すような鋭い痛み、持続的で歩行時の振動や打診・触診で痛みが増強、場所が明確。
  • *内臓の痛みが脊髄神経を刺激し、それに関連した皮膚の部分が痛みを感じる「関連痛」。痛み方は刺したり焼けたりするような鋭い痛み、場所は必ずしも腹部ではないが明確。

時間軸ではいつから、いつ、いつまで痛むか。時間が経つにつれて悪化していくか、軽減していくか。食事や生活活動と関連するか。痛み以外に他の症状(音がする、お腹が張る、下痢や便秘、血便や粘液便など大便の変化がある、排尿困難や血尿など小便の変化がある、不正出血や性交痛など婦人科系の症状、等)があるか。などの症状や愁訴の組み合わせでどの臓器に問題があるのか見当をつけながら臨床では診断を進めていく訳です。また、腸管神経系と呼ばれる腸全体に広がる神経は脳と脊髄の次に数が多く、第二の脳と呼ばれるくらい精神状態に敏感に反応します。したがって精神の不調で腹部に痛みがでる事は多々あり、これは関連痛の一種になります。

腹痛の多くは何もしない、あるいは簡単な市販薬を使う、で治るのはこのコラムの24人の読者様も経験があると思います。腹部には毎日何度も食べ物が入りそれに反応する臓器が複数あるので、それらの反応の兼ね合いで少しや短時間の痛みが出やすいのです。しかし、命に関わる腹痛はすぐに処置する必要があります。次のように発症して1週間以内であまり時間が経っていない「急性腹症」と呼ばれる状況は外科的措置が必要な場合が多いのでガマンしてないですぐに受診する必要があります:

  • 突然発症した腹痛
  • これまでに経験した事がない腹痛
  • とても痛く、耐えがたい腹痛
  • 時間が経つにつれて増してきた腹痛
  • 安静にしても6時間以上続く腹痛
  • 嘔吐、発熱、胸痛、下血、呼吸困難、意識低下が伴う腹痛

『ヤバい状態は個人差がある耐性に左右されるので、どうもおかしいなとか、ちょっとわからんなとか疑問がある場合は念のため診察を受けたほうがよいと考える。かかりつけ医がいる方は相談事項です。』

次回は上腹部と下腹部に分けて色んな腹痛の原因疾患について展開していきます。


そのエステ、命かけてやります?

By: Kazusei Akiyama, M.D.

Yodogawa Suikankyou. Osaka. Caju©2018


2024年8月

そのエステ、命かけてやります?

当地サンパウロでは冬になり、デング熱が落ち着き、今度はインフルエンザの番だなと思っていたところ、新型コロナが感染拡大の様子です。このコラムの24人の読者様は感染症対策されてますか?ブラジルでは新型コロナ感染の統計を録るのを止めてますので詳細は不明なのですが、多分今日本でも流行っているオミクロン株の派生の伝染だと思われます。でも今回はコロナの話ではないのです。

ブラジル連邦医師評議会(当地の医業を監督するお役所、ポル語CFM-Conselho Federal de Medicina)が最近躍起になって注意喚起と関係者訴訟をしているのが、フェノール(fenol)を使用したエステの施術です。エステは流行があり、時の注目を浴びているのが件の物質です。理由は事故が増えているだけではなく、死亡例まで出ているからです。フェノールはピーリングと呼ばれる「皮膚をキレイにする施術」に使われている物質ですが、以外と歴史があり、19世紀から医療で使用されるようになってます。フェノールの和名は炭素酸、毒性と腐食性がある有機化合物の一種で多岐にわたる医薬品や化粧品などの化成品の原料としてほとんどが消費されてます。当初は消臭剤として使用されてました。19世紀の終わり頃には消毒薬として地位を獲得し、病院内のあらゆる消毒に利用されてたのですが、毒性がデメリットとなり、消毒液としては落ち目になります。しかしその皮膚毒性、薬傷を起こす点に目をつけられ、ピーリングに応用されるようになりました。ピールとは英語で「(皮を)むく」という意味です。ピーリングはその行為、つまり「一皮むいて」皮膚の再生を促す方法。このような場合、フェノールのような化学品を使うと「ケミカルピーリング」と分類されます。

『皮膚の再生というと聞こえが良いが、化学品で皮膚に傷害をあたえ、皮膚の組織を化学的に溶かして一皮むく訳ですな。』

元々皮膚病変を取り除く医療的手技として開発されたはずですが、新しい皮膚が再生される事で美容に転用されました。ピーリングも19世紀末に開発され、早い段階からフェノールが使用されましたが、その毒性のため他の薬品も開発、ラインナップされました。現在は日本で使用されているケミカルピーリングは次のものが挙げられます:

  • AHA(アルファヒドロキシ酸、別名フルーツ酸)
  • TCA(トリクロール酢酸)
  • サリチル酸
  • ジェスナーズ液(レゾルシノール(フェノールの一種)+サリチル酸+乳酸のアルコール溶液)
  • フェノール

治療の目的に合わせて皮膚への浸透性や薬傷の強度が適当な薬品を選択する事になります。皮膚の表皮の角質だけをピールするくらいで済めば別に美容室的なエステ(エステサロン)の施術でも良いのですが、もっと深い真皮までピールするのは筆者のような開業医からは一種の手術にみえます。これらの薬品の中でも、フェノールは深く浸透します。

『どの程度「皮をむくか」で美容か医療かになってくる訳ですな。チョロッとむく位だとさほど問題ないが、ズルッとむくと皮膚のバリア機能や保湿機能が失われる。それにしっかり対応した処置をしないと、皮膚感染などのトラブルが現れるのだな。これって医療でしょう。』

ブラジルで問題になっているフェノールを使ったケミカルピーリングは美容系エステで行われたのが大半を占めてます。フェノールは消毒液にも使われた実績から致死的な毒性があるとは認識されてなかったのですが、最近フェノールピーリングの死亡例が報告されました。サンパウロ市で20代の男性が顔のピーリング後に死亡した例があり、フェノールの吸入による上部呼吸器粘膜や肺の薬傷が司法解剖で認められました(註1)。これにより、保健当局のANVISAが6月下旬にフェノールおよび化合物の販売を全国的に禁止するに至りました。

  • 註1:その他フェノールの薬理作用として、体内に吸収されると心臓毒にもなり、不整脈を起こすことが知られている。本件は施術直後に死亡したので、呼吸器系の損傷より心臓毒によるものの可能性が高い。通常のフェノールピーリングではこのような損傷はそう起こるものではないので、相当量使用・吸収されたことになりますね。

エステというと日本ではHIFUハイフと呼ばれる施術が問題になってます。HIFUは高密度焦点式超音波を出す器機を使い、皮下組織や筋膜に照射する事で肌の深い部分を引き締め、「たるみ」をとる方法です。高密度の超音波で高熱を生じる機械であり元々前立腺がんの治療に開発されたモノです。約10年前から事故(註2)が報告されており、特にエステサロンでの事故が増加傾向にあります。エステ業界の団体は加盟店での使用は禁止してますが…すべてが加盟店ではなく、さらに恐ろしい事に利用者が自分でおこなう「セルフエステ」まで出現してます(註3)。c

  • 註2:神経や血管の損傷、火傷、火傷跡、色素沈着など。
  • 註3:最近「コンビニジム」なるものがボコボコ出現してますが、サービスの一環でセルフエステがあるようです。勝手にHIFU系の器機を操作して自分で照射するのですが、流石にジム運営会社も事故が怖いだろうから出力が弱い事は察しがつく。つまり、「あまり効果が期待できない」のではないですかね。

今月のひとりごとで警鐘したいのが、当地ブラジルで日本人種がケミカルピーリングを受ける時の注意です。日本人種は有色人種なので、皮膚が白人種とは異なります。欧米で実施されている方法が有色人種には必ずしも合わない事は医学的には認知されている事実です。そのため、日本で使用されるケミカルピーリング液は欧米のとは内容や濃度、使用方法が異なります。そのうち、フェノールは日本人種にとって副作用が出やすい薬品であり、第一選択から外されてます。販売中止になるくらい当地では利用されるので、あまり考えないでエステに行くと、フェノール塗られる確実が大変高いです。当地でエステする場合、サロン系でも医療系でも、日本人種を扱う事ができる施設でないとトラブルになる可能性が高くなるという事です。エステは20代が一番利用率が高く、世代が進むにつれて頻度が減ります。なので特に若い人達には、注意喚起をお願いします。

『サロン系と医療系の線引きが曖昧なのが問題だな。それと、当局の規制の対象でないからと野放しになっているモノが沢山ある。日本もブラジルも同じ。見た目を重要視する今の世の中の産物ですな。』


コレステロール、善悪対決?

By: Kazusei Akiyama, M.D.

Tsukami-shushi Endo. Kyobashi. Caju©2024


2024年7月

コレステロール、善悪対決?

前回悪玉コレステロールを下げるうたいで販売されていたサプリについてひとりごとしました。このタイプの健康補助食品を国に登録する方法の改定が検討に入ったほどの大事件になってます。診療所でもコレステロールが話題にあがる事が増えているようです。医師から見ると、コレステロールや脂質異常症の情報がいっぱい世の中に出ているのである程度一般市民の皆さんもよくご存じだと思ってました。しかし、以外に誤解が多いのが筆者の感じる今日この頃です。なので、前回の展開で「コレステロール」のひとりごとです。

まず名前ですが、発見された当時(1784年)はコレステリンと命名されてます。胆石から摘出されたので、ギリシャ語のコレ(胆嚢)とステロス(個体)からきてます。その後、アルコール体である事が判明したので、オールが付き、現在のコレステロールという名称になってます。

一番多い誤解が、「とにかく悪いものである」といった点だと思います。該当事件の製品のうたい文句であったり、食品売り場では「コレステロールゼロ」といった宣伝があったり(註1)、身体に悪いものだから摂取してはいけないモノの親分みたいな捉え方が多いですね。コレステロールは動脈硬化を起こす、血管が詰まると。ところが、コレステロールは生体の維持には欠かせない重要な物質なのです。細胞膜を作るのに必須、性ホルモンや副腎皮質ホルモン、ビタミンD、胆汁酸の原料です。なので、無かったら生きてません。コレステロールが欠乏すると、細胞膜が弱くなり、脳出血などが起こりやすくなりますので、減らせば減らすほど良いのだと言うことではありません。ホルモンやビタミンの重要性はいうまでもありませんし、胆汁がないと食事で摂取した脂質の消化吸収ができません。

  • 註1:コレステロールゼロは勘違いさせる広告の一種だな。食用油に表示されている事が多いが、植物油には「元々」コレステロールは含まれていないのだな。だからウソではないけど、なんか「取り除いた優秀な商品」みたいな勘違いすると思うには筆者だけですかね?広告について2019年12月にひとりごとしてますのでそちらもご覧ください。

次に多い誤解が、食事でコントロールできるといった部分です。実は人体内にあるコレステロールの7〜8割が体内で産生されるモノであり、食事由来はわずか2〜3割なので、むちゃくちゃ頑張ってゼロコレステロールの食事にしたところ、その効果は限定的なのです。では食事は関係ないかというとそうではありません。食生活を見直す重要性はものすごくあります。高脂血がみつかる人は食生活の乱れがあったり、肥満や糖尿病になる食事内容がほとんどです。

いわゆる高脂血と呼ばれる状況、つまり血中に脂質が多いと、その物質が血管にへばりつき、血管が詰まると考えられるのが妥当ですよね。しかし、近年の研究により、脂質が多いのが問題以上に、酸化による変性が血管壁に悪い影響をあたえ、血管内膜に取り込まれ、石灰化も起こし、動脈硬化と呼ばれる状態をつくる事が分かってきてます。したがって、以前は「高コレステロールイコール動脈硬化症」と考えられていたのが、正しくいうと「高コレステロールは動脈硬化症の危険因子」ということになります。なので、コレステロールの問題で最近医学の考え方は、「高脂血症」ではなく、「脂質異常症」になってきてます。つまり、高脂血は脂質の代謝の異常の結果であり、問題は”高値”より”異常”にウェイトが置かれるようになってきた訳ですね。悪玉コレステロールが多い状態は脂質代謝が故障している結果なのです。

『悪玉悪玉ばっかりが頭に入るけど、善玉もありますやん。同じコレステロールです。違いは悪玉は消費されるように身体の隅々まで届けられ、余ったりするコレステロール、善玉は隅々にあるのを回収できたコレステロール。回収されたのは肝臓に取り込まれ代謝され、余ったのは血管内にくっ付く訳ですな。』

ここで、先程の食生活の問題が絡んできます。つまり、動脈硬化症になりやすい人は、「酸化が起こりやすい食事内容」が多く見られる事だと理解してもらうのが重要です。食事制限で値がコントロールできるのは人体にある「中性脂肪、トリグリセライド」と呼ばれる脂質ですが、これは直接動脈硬化とは関係ありません(註2)。しかし、食生活や食事内容の指標になります。名称に脂肪と出ているので、油物と関係あると思われるのですが、油以上にカロリーの高い食品、つまり砂糖やエタノールなど糖質のほうが中性脂肪値に影響します。中性脂肪が高くなるような食生活をしている人は、結局体内で酸化が起こりやすい食品を好むので、コレステロールに関しても結局食生活も間接的に重要になってくると言えます。

  • 註2:中性脂肪はカロリー源として体内に蓄積されます。つまり、皮下脂肪など。また、悪玉コレステロールの原料になります。

ではどのような食事が宜しくないというと、この辺りは山のように情報が出てます(註3)ので簡単にいうと:

  • 加工食品:トランス脂肪酸が多く使われる。マーガリン、加工油脂。
  • 動物性脂肪:飽和脂肪酸が多い。脂身が多い赤肉、鶏肉の皮、ラード、乳製品。
  • 糖質過多食品:中性脂肪になる。酸化を促す。肥満になる。
  • 過度な飲酒:カロリーが多い、中性脂肪になる。

『日常的に摂取する油で覚えもらいたいのが、「室温で固まる油」は飽和脂肪酸が多い、避ける;「室温で固まらない油」が不飽和脂肪酸が多く良い油。』

ゴボウが多分一番有名だと思いますが、食物繊維は脂質の吸収を抑える効果がありますので、脂っこい食事には必ず野菜やキノコ類をとるように心がけて欲しいものです。この場合、順番が大事で、肉や脂身を「食べる前」に摂らないと吸収抑制効果はありませんのでご注意ください。


 

サプリ大好きな日本人へ

By: Kazusei Akiyama, M.D.

Brazil’s autumn leaves. Guaeca. Caju©2024


2024年5月

サプリ大好きな日本人へ

3月より日本でニュースになっているのが「紅麹サプリ事件」であることは広く知られてます。事件を要約すると、K製薬が製造販売する紅麹由来のサプリを摂取した人  に健康障害(主に腎疾患)がでて、4月中旬時点で5名死亡、240名入院;サプリそのものの商品回収や該当会社製の紅麹関連製品を使用している他社製品を自主回収する騒ぎに至っています。問題のサプリは服用すると悪玉コレステロール値を下げる効果があるとのうたいで、近年増えている高脂血症の世の中にドンピシャリ、的に当たった感がある商品です。日本人は先進国の内、一番「健康補助食品」いわゆるサプリメントが好きな民族なのでこの手のモノは人気があるのですね。

今回の事件を見て、「ふーん、麹菌でコレステロールが下がるんだ、下げる薬があるのに」と思った方はこのコラムの24人の読者様に何人かはおられると思います。ありません?下げる薬とはリピトール®やクレストール®など、スタチン剤(註1)と呼ばれる薬品の事だと思いますが、こういった薬を処方されている人が中年以降大変多いからだと考えます。しかし、元々スタチン剤そのものの始まりが1970年代に日本人研究者によって紅麹が産生する物質の一種「モナコリンK」である事を発見したのは広く知られてないのではないでしょうか?遠藤章先生が発見した物質はロバスタチン(lovastatin)と命名され、始め米国で認可販売になり、それ以降製薬会社各社が派生品を開発したのが現在脂質異常症治療に一番沢山使用されてます(註2)。なので、ある意味では紅麹菌サプリを服用している人は実は原点にかえっているとも言えます。

  • 註1:スタチン剤の正式名称は「HMGーCoA還元酵素阻害薬」。名前のとおり、人体内で脂質を合成する酵素を拮抗的に阻害するため、血中コレステロール値が低下する。
  • 註2:使用数一位が「ロスバスタチン」、二位が「アトルバスタチン」、三位が「プラバスタチン」。蛇足ですが、脂質異常治療薬は現在世界で一番売れている薬と言うことなので、かの遠藤章先生はノーベル賞ものではないですかね?

今回事件になった紅麹はモナスカス属のカビ、糸状菌の一種Monascus pilosusを発酵させたもので、中国、台湾、沖縄で昔から紅酒や豆腐ようなどの発酵食品として消費されてきました。また、紅麹は綺麗な赤色に発色するため、これも昔から着色料として利用されてきてますが、1970年代に標準的に使用されていた石油由来の赤色2号に発がん性がある事が判明し、天然由来の「ベニコウジ色素」が爆発的に需要が増えたようです。実はこの「ベニコウジ色素」はサプリを作っている方法とは異なる製法(註3)からくるので色素のみを使っている製品は今回の問題と関係ないはずですが、事件で一躍紅麹が有名になってしまったので、巻き添えを食らっている訳です。

  • 註3:紅麹菌を発酵させたものを「紅麹」と言い、食材あつかい。固体培養にあたる。菌を液体培養し、色素のみを抽出したものを「ベニコウジ色素」と言い、食品添加剤あつかい。

今回の紅麹も酒や味噌、鰹節に利用されるいわゆる麹の一種と思われがちですが、別物です。紅は前述のとおり、モナスカス属のカビですが、黒・白・黄麹はアスペルギルス属のカビです。紅麹菌の特徴は成長速度が遅く、培養が難しいといった所です。また、モナスカス属では一部毒性の物質「シトリニン」を産生する事が判明しており、昔から使用経験がある中華圏や韓国、日本以外では紅麹サプリは利用制限や禁止されている国がほとんどです。しかし、今回の事件ではこの物質は検出されてなく、青カビから産生される「プベルル酸」が健康被害の原因であるようです。紅麹菌は培養速度が遅いため、培養中に他の菌に汚染(コンタミネーション)されてしまう確立が高くなる欠点があります。この欠点が的中した事件であると筆者は愚考してます。

これはどのような天然物質にも言える事ですが、この場合従来の発酵食品として消費するには微量に毒性があっても健康被害にならなくても、薬効を求めて濃縮しり、薬効成分分離したり、製品に加工すると毒性が発揮される事が多々あります。このため、紅麹に関しては「医薬品」としての規制がかけられたり、使用禁止されたりする訳ですね。経口服用する事で人体に良い影響を及ぼす物質は「医薬品」と「保健機能食品」(いわゆる健康補助食品)に大きく分類できます。何が違うかというと、前者は単一の成分が効果を証明する治験があり、当局に認可許可されたモノでそのため「効果を表示する事」ができます(註4)。後者は関与成分を含む食用品であり、「保健の目的が期待できる保健効能成分を含む事が表示できる」のが一般食品と異なる所です。当局の審査と許可がある「特定保健用食品、特保」と特保でない「栄養機能食品」と「機能性表示食品」があります。「栄養機能食品」はビタミンやミネラルなど既に科学的根拠がある栄養成分を含んだ食品ですが、「機能性表示食品」は有効性や安全性の根拠に関する情報等を当局へ届出ることで、事業者の責任で機能性の表示をする食品です。

  • 註4:「医薬部外品」もありますが、今回は割愛します。

『今回の事件になったK製薬のサプリは機能性表示食品であり、単に届出で健康を左右する製品を販売しても良いのかとの議論の元になっているぞ。特保は許可を得るのに時間と費用がかかるので、迅速に製品化できるように法改正をしたのが裏目にでた例であろう。』

身体に良いと考えて健康補助食品を摂取する訳ですよね。なので、何らかの効果を期待するわけですが、反対に効果のあるものは副作用があったり、飲み合わせの問題があったりします。服用してもまったく問題がないモノはたぶん薬効がないのでお金を捨てているようなものでないですか?正直なサプリメントが大半と思われますが、医薬品や特保の規制にかからないように効能をぼかして販売している製品もよく見ます。サプリといえど、健康に関するモノの摂取は医師に相談してから使用したほうがよろしいかと思われる事件だとおもいます。


幸せなとしよりになるための25条。

By: Kazusei Akiyama, M.D.

Outside’s Light. Oxford. Caju©2023


2024年03月

幸せなとしよりになるための25条。

今年の1月は日本に滞在してました。元旦は能登半島地震で初まり、筆者も少し怖い思いをしました。亡くなられた方や被災された方達に心よりお悔やみとお見舞い申し上げます。震災の世の中です。現在は能登地方では支援活動がおこなわれていますが、雲の上の世界でも大震災が起こり、政治家が倒壊した家屋(註1)から這い出そうと必死の様です。

  • 註1:去年末から自民党の各派閥のパーティー券裏金問題で今月に入り、刑事告発や逮捕者が出ている。結局派閥の解散にまで発展してさらに政治倫理審査会開催に至っている問題。

ややこしくなっている自民党の関係者や地震の被災者が報道されてますが、目につくのは「としより」です。高齢者が多数でてきます。現実世界でも日本の何処へ行っても老人がいっぱいで、バスなんかに乗ると「優先座席」などいったい誰が優先的に座るのか「年寄りの判別基準」が必要なくらい多い印象です。

筆者も還暦を過ぎているので、しっかり高齢者の仲間入りをしている訳で、老人老人と偉そうに言えません。ハタから見るとそこらに歩いているとしよりとなんら変わらないのでしょう。結局自分の仲間も同じ世代なので、最近SNSとかで回って来る話がとしよりの話題が多いです。その内、「幸せなとしよりになるための25条」といったのが多分お笑い系なのだと思われますが中々的を射たモノだったのでコメント入りで紹介します。ブラジル人の感性・感覚である部分を加味して参考にしていただけたら幸いです。開業医のコメント部分が(コ)になります。

幸せなとしよりになるための25条。

第1条:息子や娘の生活に口出してはダメです。(コ)言わずもがな、もめ事の種の最たるものでしょう。意見して効果ありますか?

第2条:孫の教育方針に干渉してはダメです。(コ)これも第1と同じ系統ですな。

第3条:婿や嫁を愛しなさい。まあ、許容くらいはしてもよいでしょ。自分の娘や息子が選んだ人だと言うことを忘れてはいけません。(コ)そうなのです、結局自身の子経由でおこった選択なのだと言う事を自覚する必要がありますな。好みでない嫁や婿も実は自分の家族の感性や自分に対する当てこすりである可能性が大なのです。

第4条:息子や娘の結婚生活に意見したりどちらかの側につくのはいけません。(コ)これも第1や第2と関連するものですな。しつこく。それと、老後だれが介護してくれるのかといった問題もあるので、誰とでも仲良くしておいた方が良いぞという警告ですね。第1〜4を深読みすると、嫁や娘を大事にしろと言う事ですか?としよりの介護には結局女性が深く関わる現状がブラジルでも日本でもありますね。

第5条:ブチブチ文句を言うとしよりにならないようにしましょう。(コ)第1〜4を実行しないと、そうなります。うるさいだけ。よほど資産を持っていないとだれも寄りつかなくなりますよ。資産持ってるから寄りついてくるのも悲しいですけどね。

第6条:自分を気の毒に思うようなとしよりになってはダメです。(コ)これはさらに性格が悪い。自身の境遇を他人のためと思っているからそうなりますな。反面、その他人の慈悲を請う行為に出てしまう。なりより後ろ向きの生活をしている証拠なのです。

第7条:「俺の時とか自分の時代は」と言った発言は止めましょう。その時代は既に過ぎ去っているのです。(コ)わかりやすい項目。世の中は進歩してます。こういった発言は時代について行けてない事を告知しているのです。取り残され感満載。

第8条:将来の計画を持ちましょう。(コ)現在の世の中の事柄が分かってこそ将来の見通しができます。第7の反対・反省・対策ですな。

第9条:病気の話は止めましょう。誰も病気の話などしたくないのです。(コ)高齢になると誰しもどこか身体の不調や治療経験があり、話題になりやすい。でも鬱陶しいのです。同世代で情報交換程度にするのであればまだしも、若い人にこれをやると相当嫌がられます。顔に出さない場合は単に社交辞令なのです。

第10条:収入の如何に関わらず、毎月いくらか貯金をしましょう。(コ)歳いってからの不安の原因の一番は金銭的な不安である事は東西どこでも同じです。第8と同じく前向きに人生をみる行為ですな。この場合、貯金する行為が重要と思います。

第11条:分割払いは止めましょう。としよりが月賦払いなどとんでもないです。(コ)第14と関連です。明日がないかも、借金が子孫に残るとよくないでしょ?

第12条:医療保険に入るか、医療費が必要な時に備えて貯金しましょう。(コ)高齢になると医療費がかかります。日本の厚労省のデータによると、75歳以上の医療費は44歳以下の7.5倍です。身体がポンコツになってくると、あちこち故障するのは誰にでも起こりうる現象で、違うのは「故障の度合い」だけ。

第13条:自分の葬式の資金を残しておきましょう。(コ)日本ではよく言われる終活ですな。ブラジルと日本では温度差がありますね。これは死の観念の違いから来るのではないかと筆者は思います。キリスト教のブラジルでは死は終焉とみてますから、誰も終わってなにも無くなってしまいたくない。ので、そんな用意はしたくない。

第14条:子孫に自分の「問題」を残さないでおきましょう。(コ)まあ、この場合、一番の問題は借金の事でしょうな。死んでから現れる親類とか。

第15条:時事問題や政治報道に関心を持っても無駄です。それらを解決する能力はもう持ち合わせてないのです。(コ)そうです。何もできません。ブラジルは選挙義務があるけど、高齢者はそれすら免除されますからね。一般のとしよりは大抵相手にすらしてもらえないので、害がないと言えばないけど。問題は経営や政治に関わって居座っているとしより。「老害」と言う言葉もありますな。

第16条:テレビ鑑賞は楽しむためにしましょう。イライラするためではありません。(コ)これは第15の派生だな。イライラしてもどうしようもありません。損するだけ。

第17条:動物が好きであれば、ペットを飼いましょう。(コ)最近は高齢者施設で動物を導入する事が普通になったくらい、良い事が多いです。癒しというヤツですな。ペットと生活する事で生活の質や日常生活動作が向上し、ペットを介して他の人と接する機会がふえ、全体的にとしよりの社会性が増します。スエーデンで実施された研究によると、犬を飼っている一人暮らしの死亡リスクが33%減少する結果があります。また、犬を飼っている人の平均寿命が伸びる効果も認められてます。ただ最近はペット自体も高齢になり、介護が必要になってくる現象もありますね。また、高齢オーナーが死去してペットが孤立してしまう問題なんかもありますから、そのあたりもちゃんと終活しておく必要があると思われます。

第18条:毎日起きたら、散歩や料理や裁縫や家庭菜園など何か活動をしましょう。ジッと死ぬのを待っていてはいけません。(コ)身体を動かすのは長寿の条件です。血行が宜しくないと、身体の細胞が死にます。そうなると長生きできません。同時に頭を使う活動をして脳が老化するのを防ぐのですな。自分が興味がある活動を把握しておかないと、としよりになってドテッとソファに座ってテレビ視て死ぬのを待つ毎日になりますよ。

第19条:綺麗で良い匂いがするとしよりを目指しましょう。歳いってるので臭いのはダメです。(コ)加齢臭というのがありますね。これは皮脂が変質し、ノネナールやペラルゴン酸といった物質になりこれが悪臭になるのですな。男性の方がホルモンの加減で皮脂が多く生成されるので臭いがキツくなる傾向があるのでじじいは要注意です。歳いってしょうがないと、清潔にしてないとさらにとしより臭くなりますよ。

第20条:としよりになっている事実を素直に喜びましょう。としよりになれなかった人もいっぱいいるのです。(コ)ある意味としよりは生き残りですからね。そのためわざわざ本条があるのだと思います。でもそのうち回りには誰もいなくなっていくのも悲しいです。

第21条:皆が来たがるお家を作りましょう。人が来るか避けるかは自身によります。(コ)これは前述の20カ条の行為によるものですな。宜しくないと、結果として自分の子孫も寄りつかなくなってしまう。そんな例をたくさんみてます…寂しいです。本人は孤独です。悲しいです。そしてもっと悲しいのが本人のせいでそうなっている事をまったく自覚していない。

第22条:重ねた歳を未来への橋として活用しましょう。過去への下り階段ではダメです。(コ)第8、第10と関連するモノですな。としよりであっても、過去に縛られないで前進してこそ人生を楽しめると言っているのです。最近のSDGな言い方をすると「としよりであってこそ」ですかな。

第23条:良い思い出を残す方が安堵を残す方よりいいです。(コ)これはポルトガル語の原文ではなかなかカッコ良いです:“é melhor ir deixando saudades do que deixando alívio”。要するに逝って安堵されるより逝って良い思い出をされる人物のほうが良いという事ですね。あーやっと亡くなってくれたなんて思われる人生、悲しい人生じゃあないですか。

第24条:残りの人生を楽しみましょう。自身で笑い、人を笑わせましょう。(コ)笑顔は社会性を増幅するモノです。これは世界共通の価値観でしょう。ただし、としよりになると気をつけないといけないのが、「ヘラヘラ笑ってる老人」と「バカにしているのが明らかなお世辞笑いする老人」。笑ってる本人は以外とよろしく思ってますが、ハタから見ると嫌みなとしよりにしか見えません。

第25条:とっておきのワインや明日まで置いておいたらもっと冷えるであろうビールは今日中に消費しましょう。明日はないかもしれません。(コ)軽そうで実はとても深い最後の本条。自然の摂理からいうといつ死んでもよい事態が毎日迫っているので、その日その時を大事に生きろという事ですな。

このコラムの24人の読者様、当たり前の25条ですか?意外とやらない、やってない、できない行為じゃあないでしょうか?だから悲しいとしよりが多いのでは?としよりは悲しいモノだとか言ってないで加齢する事実を見直してみたいと考える筆者でした。


 

アレはアレだけど、アレでないかもしれない。

By: Kazusei Akiyama, M.D.

Osechi Food. Japan. Caju©2023


2024年01月

アレはアレだけど、アレでないかもしれない。

明けましておめでとうございます。今年はこのコラムの15周年です。筆者も自分でよくこんなに長く続けているのだと改めて感心する2024年の新年です。世の中はコロナ禍が一段落したと思いきや、侵略だの、分断だの、恐怖だの、新年の話に全然合わない話題が満載の去年でした。枡ゴミはこれとばかりに不安を煽る報道ばっかりしてるので、気分がすぐれない人達が大量生産されてますね。このコラムの24人の読者様はどうなってますか?

そこでこのような時の反応はまあ大きく分けて二通りあるでしょう。いや、二通りしかないでしょ。一つは煽られたとおりに不安神経症になる。もう一つは逃避行にたよる。当地ブラジルでは2023年1月に始まった政権の選挙で社会がパックリ分断してしまったので、分断に関しては日本より顕著に見られます。反面、日本ではいつキタのミサイルが飛んでくるかもしれないので、恐怖のほうが顕著なのではないかと思います。

『キタ、去年は打ちまくりましたからねえ。』

こんな世の中なので、「明るい話題」があれば、皆飛びつきたくなります。2023年の圧倒的に明るかったのはなんといっても「アレ」で「盛り上がった」ところでしょう。アレがA.R.E.にまでなって新語・流行語大賞まで取りましたからね。アレって、意味が決まっていると思われがちですが、辞書で調べてみると意外と沢山の状況や事柄を示す言葉なのです。広辞苑によると、アレの発音で次の6っの漢字が載ってます:村、荒、阿礼、吾・我、彼、感。大賞になったアレは「彼」の意で「②今の話題とは離れているが、その名を示さずとも相手にもそれと通ずる人・物事を指示する語。」でしょう。でも「我」と「彼」で広義では「こちら」と「そちら」で相反する意味なのに音が同じなのが面白いと思ったのは単なる筆者の脱線です。大賞のアレは優勝の事を示し、日本のプロ野球の2023年のリーグ優勝した阪神タイガースの監督が使って広まった言葉です。優勝する可能性が高かったチームのメンバーに「優勝」という言葉のプレッシャーをかけないため、「アレ」と言い換えたのは周知のとおりですね。

写真:タイガースの応援はトコトンやらせてもらいます。

物事を直接的に示さないように使うアレは日常でも良く使用されます。医療の現場でも患者さんの話によく出てきます。不都合だとか、恥ずかしいとか、公言したくないとかの場面ですね。アレがないとか、アレをしたとか、アレは良かったとかダメだったとか。会話の流れで何の事か分かっている場合は良いのですが、分からん事もありますから、「ソレ」で聞き返す事になります。つまり、相手に通じていればとても便利なアレですが、通じていなければ誤解を招く危険がある言葉でもあるのです。そして、最近の社会と文化はこの「相手に通じる」あたりに問題があると愚考します。明言しなくてもお互いに分かる事柄は、社会の通念や価値観が一貫していないと上手くいきません。日本の昔からある「アウン」ですね。しかし、今の時代、「多様性」そしてそれを尊重するのが最優先事項ですから、ややこしくなってきました。悲しいかな、「物事の通念」が無くなってきた。現在はチ○ポがついていても自身が女であると自認すれば、女であるという時代です。アレがついていても、男では必ずしもない。で、そういった事を尊重し、共生していくのが正しい生き方だそうです。気をつけないと、アレが見えているけど、アレでないので、アレだと思っている自分が悪い事になります。(註1)

  • 註1:医療の現場でもややこしくなってきてます。去年母校で開催された婦人科の学会で「前立腺をもった女性」といったテーマもあった。

『誤解のないように明言しておくが、多様性を否定している訳ではない。ブラジルでは少数民族である筆者は人種差別も受けた事もあるので、多様性の尊重は重要だと思う。ここでは物事に一貫性がないとアレは何か分からなくなる場合がある話。』

要するに、訳のわからん世の中になってきてると言う事ですかね。今回の阪神のアレはA.R.E.に発展し、来シーズン向けのチームのスローガンなんだそうです。Aは目標を意味する「Aim」、Rは敬意を意味する「Respect」、Eは力をつけることを意味する「Empower」の3つの英単語の頭文字を合わせたものだそうです。深読みをすると、これらの意味は最近流行のSDG(持続可能な開発目標)そのものではないですか。Aはその意味のとおり、「リスペクト」は敬意以外に尊重の意味もありますし、エンパワーは自認、変革の意味もあり、自身や社会の新規開発と関連します。元々チーム監督が使った「アレ」は単純にプレッシャーにならないようにするためだったと考えられますが、ここまで発展するのか!と感心してます。

『ちょっとゴリ押しの感じがするのですけどね。時代の波に乗ってると言うんですか。』

開業医の立場から意見すると、現在の多種多様の価値観の中で生活していると、精神が病む確立が多くなるのではと思われます。今は何をしても容認されますからね。それ以上に今までにない事に挑戦して勝ち取るこそが人生の勝者とされてますから、これから人生を築く若い人達にとってはものすごいプレッシャーなのです。特に学校に上がる前からこのような状況に曝されている子供達がかわいそうです。ハタから見てると、「何して良いのかわからない」けど「どうしろ、こうしろ」と誰も言わない、言えないので、戸惑いと尻込みをする子供が多い。だって子供だから、こんなややこしい時代を世渡りするだけの能力があるわけないでしょ。この様な話をすると、人権侵害だとか、共生を否定しているとかギャーギャー言われかねないので、元々の意味とは違った使い方で「アレ」が便利になってきました。つまり、攻撃対象にならないようにするため、はっきりしない、ぼやかした運用で「アレ」が利用できると思います。「アレってどう思う?」みたいな。

『パッと相手に通じる状況ではないので、何の事言ってるのかわからん場面が増えたのでは?自分のアレと相手のアレはアレだと思っていると、アレになります。またはアレになりません。はっきり発言するのが益々大事だと思う新年です。今年もよろしくご愛読をお願いします。』

糖尿病治療で医術を考える(V):どうして生活習慣が影響するの?

By: Kazusei Akiyama, M.D.

Wine Glass. São Paulo. Caju©2017


2023年12月

糖尿病治療で医術を考える(V):どうして生活習慣が影響するの?

さて4月に開始した「我々人類の将来を脅かす糖尿病」のひとりごと第5弾です。途中医療の危険性について道草しましたが、今回は糖尿病治療の原則である生活習慣の改善について考えていきます。1回目は「糖尿病とは」、2回目は「高血糖値の問題」、3回目は「糖尿病のなり方」、4回目は「治療薬」を展開してきました。3回目ではインスリンが不足したり細胞が糖を取り込む能力が低下する2型が生活習慣や食生活と関係がある事を考察しました。

『3回目で考察したのになんでもう一度この話になるんや?』

はい、前回はどのような生活が血糖値を上げたり、インスリン抵抗性を生んでしまうのかを書きましたが、今回はどうしてその良くない生活習慣になってしまっているのかを考えてみます。暴飲や暴食、ストレスの多い生活がよろしくない事はこのコラムの24人の患者様も耳にタコができるほど聞いた話ですよね。炭水化物の過剰摂取とかも。糖尿病は現在大変有病率が高い疾患なので、行政・企業・医療従事者が注意しろ!予防しろ!とギャーギャー言ってますが、それでも全然減る傾向にありません。例えば子宮頸がんはギャーギャー言われて減少しています(註1)。これは特にWHOが力を入れ、子宮頸癌検診が普及してこの種の癌の予防が進んだからです。日本では血糖値異常を含むメタボ健診と呼ばれる医療政策まで法制化されましたが、糖尿病減りませんね…

  • 註1:先進国の例外で日本では増えている。国の医療政策の失敗例。

糖尿病と食事の「内容」「食べ方」「順番」「適量」等の情報は書籍やサイトが山のように出てます。本にもなるくらいですから、この話はいくらでも書けますが簡潔にまとめると次のようになります:

内容:炭水化物は少なく;食物繊維をたくさん;タンパク質も必要、でも油脂が少ないもの。食品の種類は多く、バランスよく。果物は注意。

食べ方:1日3食決まった時間に食べる。食事を抜かない。良く咬んで、ゆっくり食べる。

順番:食物繊維とタンパク質を先に食べ(註2)、炭水化物は最後。

適量:腹8分目。ドカ食いダメ。アルコールは可、でも微量。(註3)

  • 註2:高齢者(65歳以上の方)はタンパク質・脂質を先に食べる、次に食物繊維。高齢者でない場合は先に食物繊維、次にタンパク質・脂質。
  • 註3:各自必要カロリーは年齢や性別、体格や身体活動量などによって変わる。計算できるアプリやサイトは多数あり。「糖尿病カロリー計算」で検索。

また、糖尿病治療の基本は食事療法と運動療法が医療の常識となってますね。毎日の定期的な運動、最低30分の早歩き散歩が理想的と言う事になります。この運動も、食後直後にできたら最高によろしい。筋トレとかではなく、有酸素運動。血行が良くなり、体内で溜まった老廃物の排出を促進し、骨密度をキープするし、良い事ばっかりです。まあ、サンパウロ市などでは下手に普通の道路などで散歩していると歩道の段差で足を捻挫したり、車やバイク便に引かれたり、犬のウンコを踏んだりと色々危ない事も多々あるので良く考えて実行に移さないといけないですけど。

『早い話、前述のような食事をして、運動もした生活をしていると2型糖尿病にはまずならんぞ、と言うことですな。』

反対に考えると、これらができない生活をしているから、我々は糖尿病を含む、ちょっと前までは「生活習慣病」と呼ばれる状況に至っている訳です。現実的には現在これを読んでいる読者様は今の生活、前述のようになるように改善できますか?このような生活をしている人はいないとはいいませんが、ごくごく少数でしょう。大多数ができない。したくてもできない。わかっていてもできない。わかっているけどしない。わかっていないからしない。このような世の中なので生活習慣病は減らないのだと、この筆者は愚考します。当たり前ですかね?

どのように血糖値が上がるとか下がらないとかインスリンが分泌されるとかされないとか、食事の仕方の解明、治療薬の開発などは「科学としての医学」です。このような科学の進歩はめまぐるしいですが、糖尿病が増え続けているのが現状です。元々このシリーズは「医術を考える」がテーマで始めました。医術は英語でmedical artと言います。アート。つまり芸術。医学は英語でmedical science。つまり科学。科学と芸術の違いは前者は「だれがおこなっても同じ結果がでるモノ」、後者は「各個人の感性により同一性が無いモノ」といえます。医術の場合は医学の知識を施術者(医者)の感性によりそれぞれ違う患者さんに使用する事であると思います。糖尿病の場合、それぞれの患者さんに合った治療方法を探るのもひとつ、生活習慣がよろしくないからこそ糖尿病になっている方のどのあたりを変えられるかを探るのもひとつ。それ以上に医術であるのは、すでに発症している患者さんや予備軍の患者さんを糖尿病になる(が悪化する)状態から「遠ざかる生活習慣を取り入れる気にさせる」手腕こそが医術ではないかと思います。

『医科学があっても糖尿病が減らない。今でこそ医術が必要なのでは。』


ブラジルの医療って危険なの?(後編)

By: Kazusei Akiyama, M.D.

Sunset at Guaecá. São Sebastião. Caju©2023


2023年11月

ブラジルの医療って危険なの?(後編)

前回に引き続き当地ブラジルの医療に関する疑問について真偽型の設問でひとりごとしてみます。

疑問:ブラジルで流通している薬は危険である

回答:「真」一般的に市販されている医薬品は当局の認可を受けたものであるので、例えば中国で流通しているような訳のわからない薬ではありません。しかし、用量が日本とは異なる事が多く、そのような場合は日本で使用する量の2倍またはそれ以上です。日本人種は欧米人種と比べて体格や代謝が異なるのでブラジルで使われる量は過剰になりやすいので注意が必要です。特に日本人種の女性(註1)は明らかに体格が異なるのでトラブルになりやすいです。このような事情があるので、「ブラジルで使用される薬は強い」といった話になるのです。

  • 註1:ここは「人」ではなく「人種」がポイント。つまり混血していない日系も同じ条件である。

対策:これは日本人種の特徴を理解している医療従事者にかかるしか対策のしようがないと思います。

 

『日本人種は薬の用量の違いだけではなく、ブラジルで実施された検査の基準値の相違もあるぞ。正常範囲と安心していたら、日本人種の基準値では異常値である事も臨床現場でよくみるぞ。』

 

疑問:ブラジルでは日本で使用されない薬を出される

回答:「真」最近日米では使用禁止になっている解熱鎮痛剤の一種のジピロン( 英語dipyrone,  ポル語dipirona, 商品名 Novalgina®) の副作用、無顆粒球症が広範囲に報道され、医療に関する不安材料になってます。認可制度などの違いからブラジルと日本で流通している医薬品は100%同じではありません。日本は1991年まで外資系の製薬会社の活動を制限していた歴史(註2)があるので、日本の製薬会社が開発した独自の医薬品が沢山あり、日本国内でしか使用されない薬が多い。ので、当地の医者側からしたら反対に日本では海外で使用されない薬を出されている事になります。

  • 註2:日本の薬事法により、1991年までは外資系は自由に日本市場で治療薬の販売ができなかった。日本の製薬業界のために市場閉鎖していたのだな。

対策:①日本で流通している治療薬を把握している医療従事者にかかり、投薬の調整をしてもらう。②前述のジピロンのように日本で使用されない薬を日本人種に投薬経験が豊富にある医療従事者にかかる。

 

疑問:ブラジルでは処方箋無しで薬が購入できる

回答:「真」これはブラジルの薬局が商売として倫理が甘いだけで処方箋薬を必要書類(処方箋)無しで販売しているからです。このような事情があるため、販売したら当局に処方箋を提出しないといけない治療薬の分類があります。そのため当地では処方箋は四段階に分かれ、使い分ける必要があります。詳しくは2022年9月のひとりごと(ブラジルには4種類も医療用処方箋があるのだ)をご覧ください。

対策:薬局で「自由に購入できる市販薬」ではない処方薬(正式名:医療用医薬品、ブラジルでは薬の外箱に赤、または黒い帯が印刷されており、”venda sob prescrição médica”と記載がある)は効き目が強かったり、副作用が強かったりなどで医療従事者(この場合は医師、歯科医師、獣医師)の判断が必須であるからこそ処方薬なのである。慢性の疾患なので服薬の継続が必要と、勝手に医薬品を購入し漫然と服用して治療になっていると思っている患者さんはいっぱいいます。『自己投薬行為(auto-medication)というヤツだな。註3』後進国によくみられる現象です。しかし実は病態が進行している場合も多くみられる。副作用で命に関わる場合もある。伊達に処方薬として流通しているわけではないので、ちゃんと医療従事者の判断(診察)を受ける事が大切と考えます。

  • 註3:英語でself-medicationとも言われる。一般的には「市販薬」で行われるが(日本の例:薬局で売ってる風邪薬を飲む)、「処方薬」で行うのが危険(日本の例:以前医院で出た抗生剤が残っているのを飲む)。ブラジルの場合、勝手に入手できる処方薬が多数あるので、自分で勝手に治療しているケースが大変多い。

 

疑問:ブラジルでは日本語が通じる医療機関が多くて助かる

回答:「真」と「偽」の両方です。真の部分は「多くて」で、偽の部分は「助かる」です。当地は日本以外では一番たくさん日系が住んでいる国です。医療従事者ともなると日本の色んな奨学金制度で日本へ留学している方も多いです。なので、他の国と比べて圧倒的に日本語が通じます。日本の政府系の給付金や企業の助成金が出ている医療機関もあります。しかしこの筆者はこのような環境のため「助かる」部分が「偽」と考えます。日本語ができるイコール日本人種の特徴や日本人特有の文化や価値が理解できている訳ではないのが現状としか言いようがありません。前述の問題点に展開したとおり、医療の場合、「日本語が通じるだけ」 では不十分なのです。

対策:医療従事者や医療機関を選ぶ時にはまず技術的な熟練度や設備の内容などを最重視し、その上言語的なコミュニケーションがスムーズにいけば言う事なしといった手順こそがよろしいのではないでしょうか?


ブラジルの医療って危険なの?(前編)

By: Kazusei Akiyama, M.D.

Watching waves. Fernando de Noronha. Caju©2009


2023年10月

ブラジルの医療って危険なの?(前編)

今月は4月に開始した「我々人類の将来を脅かす糖尿病」のひとりごとは一休みです。最近当地の駐在員社会の中で「医療事故で死亡した件」の噂が出回っている事、コロナ禍が一段落したためサンパウロにも新規の赴任邦人が増えてきている事、等を踏まえて今回は当地ブラジルの医療に関する疑問について真偽型の設問でひとりごとしてみます。

まず、次の表に日本とブラジルの医療の違いを示します。これらの差異をふまえた上で、設問の回答をご覧ください。

疑問:ブラジルの医療は危険である

回答:「真」まず、医療自体が危険です。医療は元々病気を治したり、病気にならないような措置をしたりして人間の役立つのが存在意義です。しかし命を扱う業務なので、一番命に関わる仕事なのです。なので、措置を失敗すると医療事故という事態になり、その内最悪が「医療事故による死亡」です。米国の統計では年間44000人〜94000人の医療事故による死亡があると試算されてます。日本では年間100〜150人といった数字があります。この数字の開きは法律的な「医療事故・医療事故による死亡」の定義の違いや医療制度の違いによるもの(註1)ですが、確実に医療事故といった事故はありますし、それによる死亡も存在します。ブラジルの場合、さらに危険です。当地の社会のすべてにおいてピンとキリの間がとてつもない距離があるのはこのコラムの24人の読者様もよく承知されておられるとおもいますが医療に関しても同じです。医師・医院・病院を標榜していても最低限のサービスすら保証がありません。ブラジルでは医師国家試験がないので、医学部を卒業したら医師を標榜できます。また、2013年に労働者党政権下で始まったPrograma Mais Médicosという「ブラジルの医療が行き渡らないのは医師不足である」と言う誤った見解(註2)を元にした政策があり、”医師不足を補う”ため、医師免許すら持っていない外国人や海外の医学部に通学したブラジル人が医業をしている状態です。

対策:①医療従事者の出身校、専攻など学歴をチェックするのは必須。医療機関に関しては、どこの学派であるかや雇用規準を把握する事は必須。②一番の宣伝は口コミといいます。回りの人達の評価は非常に重要です。

  • 註1:米国は多すぎて日本は少なすぎると考える。定義や制度の違いもあるが、それ以前に訴訟文化の違いがあるのでは?
  • 註2:ブラジルの人口に対して医師の絶対数が不足している訳ではない。都会では医師が溢れ(サンパウロ市だけで在住医師が4万人強いる)地方では過疎地が多い。また、意外と大都会の郊外にも医師過疎地が存在する。これは主に治安が悪いため、医師が定着しないのが一番の原因とされている。地方の医師過疎地は医師(とその家族)が安定して定着できる政策が無いため。

 

疑問:ブラジルの医療の手技は低度である

回答:「真」全体的にはレベルは高いとは言えないと思います。特に都会と地方の差は大きく、なかなか差が埋まりません。ラテンアメリカ最大級のサンパウロ大学医学部付属病院の周辺には地方から来た救急車や自治体の車両が何十台も見かけますがこれらは田舎から高度医療を受診に来る患者さんの搬送なのですね。また、サンパウロ市のような大都会でも地域差が大変大きい。加入している医療保険の善し悪し(高額・低額)で使用できる医療機関の差が顕著にあります。一般的に公共医療のほうがレベルが低いと思われがちですが、これらに採用されるには一応公務員試験があるので一定レベルの担保はあると思います。かえって安い医療保険で利用できる医療機関こそがレベルが低いです。理由はそのような所に採用されるには試験はなく、雇用側が提示する報酬(低いのが普通)を承諾する者が採用されます。この状態はさらに酷くなるのは間違いありません。前問で出ている医者を増やす政策で無尽蔵に医学学校の設立が2002年以降行われたため、2022年時点ではブラジル全体に334校あります(註3)。医学教育に必須の病院が無い市町村にも医学校があります。最近では入学試験すらない学校も出てきてます。ろくな教育を受けていない”医師”が溢れるのは特殊な計算をしなくてもわかりますね。しかし、ピンキリの上の方は日本でも一般的でない高度な施設や教育・訓練を受けているので良い所さえ選択すれば世界的にみても何処にも引けを取らない環境です。

対策:前問と同じ。

  • 註3:ブラジルの医学校数:2002年頃に約120校、2012年頃に約140校、2022年に334校。ちなみに現在、日本82校、米国184校、インド348校。ブラジルより医学校が多いのは世界でもインドのみであるが、人口は約7倍の国であるのでブラジルが異常に多いのがわかる。

 

疑問:ブラジルの医療報酬は高すぎる

回答:「偽」表でも示しているとおり、医療のやり方が異なるので一概に日本と比較できません。まず3分診察でないので時間をとった診療である事。自由診療で受診すると10割請求されますので1割請求とは額が一桁違う事。日本では診察費以外に管理料、電話相談料、基本料、時間外料、文書作成費など色々加算がありますが当地の場合の医療費はコミコミが普通といった点が違います。また、医療機関により報酬額が自由に設定できるのもブラジルの特徴です。

対策:良質な医療保険を利用できるようにする。