旬という概念、わかりますか?

By: Kazusei Akiyama, MD

What a view! Harukas. Caju©2019


2019年4月

旬という概念、わかりますか?

このコラムの24人の読者様は毎日数回食事をされてますよね?当たり前のように「食べている」訳ですが、多分健康に良い食事をするように心がけている方が多いのではないかと思います。何をどう食べたら良いか、何は摂りすぎたら良くないとか考えますよね。しかし、なぜモノを「食べるか」わかってますか?

巷で「どうして食べるか」聞いてみると、一番多い回答は「空腹になるから」でしょう。また、「食べないと力が出ない」とか「健康を維持するため」なども答に挙がるでしょう。当たり前すぎて「どうして私たちは食べるのか」あまり考えないですね(註1)。ここで筆者が一番大事な答えと考えるのが、もっと当たり前の「食べないと死ぬから」です。これを見落としているから現在の「変な」「本当に健康なのか」「これで大丈夫なのか」食生活をしているのではないかと思います。

  • 註1:実際あまりこの手の研究もない。

そう、当たり前でしょ?食べないと死ぬ。食べないと生きられない。食べることは生きることだ。ここに来ると、生きるとは何か?になりますね。極限まで縮小すると、「生きるとは他の生き物を体内に取り込む」ということです。最近、特に都市部の生活では、食糧の生産現場と消費現場の隔たりが大きいですし、食品を加工することで「元の形」を連想しにくくなった等、生き物を食べるといった行為に対する認識がとても薄れているのではないでしょうか?生あるモノは死ぬ。これは絶対的なお約束です。生きると言うことは死なないようにすると言えます。

では他の生き物を取り込むとはなにか。我々は生物として環境から色んな分子を共有してます。例えば今、読者様の血液内を移動している「ブドウ糖」、これは炭素と水素で構成されてます。ブラジルであれば、サトウキビの砂糖が一般的なのでサトウキビ由来のブドウ糖としましょう。サトウキビ畑を取り巻く空気中の炭素がサトウキビに取り込まれ、砂糖(ショ糖)になり、これを人間が食べて体内で代謝され、二酸化炭素と水になり、呼吸によってまた大気中に戻されます。つまり、炭素や水素や窒素や酸素などの分子が生命体と環境の間を行ったり来たりして生命活動を継続しているのが「生きている」という事なのですね(註2)。

  • 註2:我々動物は大きく分けて、組織を構成・維持する物質(主にタンパク質、アミノ酸)、組織を稼働させるエネルギー源になる物質(主に炭水化物と脂質)、これらを円滑に機能するのを担う物質(ホルモン、免疫物質、ビタミンなど)の三種類の物質を生きるのに必要とします。これを肉を食べたり、野菜を食べたりして取得し、体内で吸収・消化・消費してます。肉も野菜も全て元は生き物です。

ここで重要なのが、我々は環境の賜物である事実です。アミノ酸などが作られた環境があるから、生き物がある。その反対ではない。だから、人類も永い間、環境が造ってきた結果であると考えられます。筆者も読者様もその環境の特徴に最も順応・適応してきた産物の子孫なのですよ。なので、環境がもたらす食べ物が一番生体維持に向いているのです。例えば最近冬に日本へ行くと、「イチゴ」が山の様に売ってます。苺って春の食べ物じゃなかったでしたっけ?このような例は一杯ありますが、現在は元の季節でない食べ物が日常的に入手できるようになってます(註3)。また、もてはやされてます。これが現在の食に関する「体調を壊す一因」になるのではないかと思います(註4)。旬の食べ物に注意しなくなったとも言えるのではないでしょうか?

  • 註3:元の季節でない時期に出荷することで高価になったり、収入を維持できるため生産者が頑張った結果や、地球規模の流通が発達しその場所の季節とは関係ないモノが手に入るなどのためですな。
  • 註4:その他に「食事の仕方」や「工業的に加工した食品」に関する原因もありますが、これは別の機会にひとりごとします。

広辞苑で「旬(しゅん)」をひくと、意味の一つに(註5)「魚介・野菜・果物などがよくとれて味の最もよい時。」があります(註6)。これは旬の食べ物を摂る事によって、最も生命の維持が効率がよい事を示します。我々はその時期に採れるモノを食べて出来上がった動物なのです。表に旬と食べ物の特徴をまとめてみました。

どんな食べ物? どうして食べるの?
苦いモノ。山菜や野草。 冬の間に体内に溜まった老廃物排出を促す。
水分や酸味が勝モノ。キュウリ、茄子、トマト、スイカなど夏野菜や夏果物。 身体を冷まし、暑さを和らげる。
カロリーが高めのモノ。秋の魚(サンマ、イワシ、サバなど)は良質の油を提供する。 寒い冬に備え、身体を整える。
寒さから身体を守る食材。人参、ダイコン、ゴボウ、レンコンなど根菜類。 身体を温める効果があるモノをとって冬を乗り越える。

 

旬の食べ物を無視して生活している現在、生命の維持に脅威ではないでしょうか?


  • 註5:もう一つの意味が「旬儀」の略で、古代、朝廷で行われた年中行事の一つ。
  • 註6:同じ漢字を「じゅん」の読みにすると、時間の単位になり、10日、10ヶ月、10年を示します。旬という字を調べていて関心したのが、「筍」タケノコという漢字です。たけかんむりに旬。竹が芽を出して、10日経ったモノ。なるほど。