どうして新型コロナウイルス感染症の治療薬って無いの?

By: Kazusei Akiyama, M.D.

Black wall and exaust. Osaka. Caju©2019.


2021年5月

どうして新型コロナウイルス感染症の治療薬って無いの?

ブラジルでは新型コロナウイルス感染症の第二波の真っ只中ですが、このコラムの24人の読者様、皆さんお揃いですか?昨今の感染症で亡くなった方はおられないことを祈ってます。今月も去年から続いているコロナのひとりごとです。当地の第二波は感染者・死亡者ともに去年より多く、あまり見られなかった若齢層の発症と重症化が特徴です。この原稿を書いている4月下旬では一日の死者が3100人強で推移しており、その数字は「若干減少してきているのでよかった」と言った論調です。まあ、先月(2021年4月)は4000人死亡までいったので、減った事は減ったのですけどね。数ヶ月前までは「死者また1000人を超えた!」で騒いでいたので、人間、慣れって怖いです。1年前と今との違いは、ワクチン接種が行われているのとウイルスが変異株に置き換わっているところですが、変わらないのが決定的な治療薬がない感染症だと言えるのではないでしょうか?

『実際の生活をしていると、軽症の場合コロナにかかっても効く治療薬はないので、対処療法になるか、放置されるかになる事が多いのではないのか?後者は日本の場合だな、診てくれるとされているお役所(保健所)がパンク状態だから。でも実は”コロナ治療薬”はあるのだな、大きく分けて、三種類。まず、現時点で承認されている物がある。デキサメタゾンやレムデシビルなどでこれらは入院患者の重篤化に使用される治療薬なので、ほとんどが軽症の実状の生活にはあまり関係がない。次に承認されていないが治療薬として使える物、例えば最近日本のメディアでもよく載るイベルメクチンがこの分類に入る。そして実は既に承認されているが、あまり話題にあがらない物、日本では正規の医療に使用される漢方製剤があるのだ。』

何故新型の疾病に対して治療薬がない、あるいは少ないのは現在主流のいわゆる西洋医学の一番大きな特徴の為です。曰く、西洋医学の治療は次の様に決まります:

ヒトが発熱とか痛みとかの症状がある→診察と検査をする→診断が確定(推定)する→確定または推定された疾患名と関連する薬物(あるいは外科措置)などで治療方針を決定→治療をする

つまり、疾患名を確定しないと、その疾患に効果がある治療ができません。あるいは、疾患名が確定しても、その疾患に効果がある薬物や措置が存在しないと治療ができないといった制限があるわけです。診断が確定しない時や効果のあるモノが無い時はこの流れが最後の治療まで行き着かないので、そういった場合は対処療法しかできません。診断が確定しないのはそれまで未知の疾患であるか、検査方法が確立してないかのどちらかです。では確定した場合のそれに効果がある薬物(外科的や理学的な措置もありますが、ここでは薬物として考えます)はどの様に検証するかというと、コロナ禍で一躍有名になっている「治験」によって行われます。基礎研究や動物実験を経てヒトに”薬の候補”を使用して効果や安全性、投与量や投与方法などを確認する作業が「治療の臨床試験」略して治験と呼ばれます。この確認作業はいろんな方法があるのですが、医学の世界で一番良しとされているのが「double blind radomized (clinical) trial 二重盲検無作為比較試験」という試験のやり方です。

『いろいろ条件などもあるのだがすごく簡単に言うと、試験に参加する患者を抽選で二つのグループに分け、投与する医師も服用する患者もどんな薬(試験薬か偽薬)を投与/服用するのか一切知らずにすすめる方法だな。つまり、最後にならないと、誰が何を服用して効果があったかわからないので、”治療薬を使用して良くなった”といったような暗示、つまり主観的な判定を減らす方法とされている。二重盲検無作為比較試験は是非があるのだが、できるだけ万人に効果がある薬を求める西洋医学の考え方に沿っているので、この方法以外では治療薬の評価が有効でないと考える医者がほとんどである。モノによってはこの試験方法が一番よい訳ではないけど、一種の宗教的盲信だな。』

治験の結果は統計学的に解析されます。それで、統計学的に有意な結果がでるには検定力という概念、簡単にいうとある程度の数が必要です。例えば、「効果が半数にある」という結果があるとします。2人に試験して、1人に効果が現れるのと、1万人に試験して5000人に効果が現れるのでは同じ半数ですが後者の方が信憑性がありますね。つまり検定力がないと、「統計学的に有意差が認められない」といった状況になり、治験が成立しません。まさにこの状態に陥っているのが、日本の抗ウイルス剤アビガン(ファビピラビル)です。日本ではコロナ患者が欧米やインド、ブラジルなどと比べ少ないので”数”が足りないので評価できないという事になってます。

『しかし、現在のコロナ禍は衛生上の緊急事態なのだな。なので、悠長に普段のとおりの事前審査や治験申請をある程度割愛し、「緊急使用許可」といった方法をとらないとコロナの治療薬やワクチン等の開発には5年10年かかる。実は今ブラジルやヨーロッパで使用されているワクチンはファイザー製を除き、どれも緊急使用許可薬なのだな。つまり、「緊急事態だから使えますが、恒久的承認ではないですよ」といったものなのだ。日本は折角アビガンや大阪大のDNAワクチンなどがあるのに普段のとおりの審査をやっているからそれらは世に出ないのだ。』

“折角日本の”といえば、コロナ治療薬として非常に高い可能性をもっている薬物がイベルメクチンです。寄生虫の駆虫剤であり、この薬品の開発で日本の研究者大村智先生がノーベル賞を受賞されてますね。イベルメクチンはウイルスの増殖を阻害する効果があるのが知られており、ブラジルを含め、去年より世界各地で試験されて(27カ国で44研究)有効性がある事が示されている。予防、早期治療、死亡率の低下に効果が認められてます。しかし、疑問が多い研究結果が有力医学誌に発表され、それを元に否定的な意見をする医師や団体が多く、何よりも開発した製薬会社が否定的であるのが目を引きます。製造元のメルクによると新型コロナに対してイベルメクチンは安全性と有効性がないと言っているのです。この薬は主に中南米やアフリカで河川盲目症と呼ばれる寄生虫症やシラミの治療に億単位の数の錠剤が使用された実績があり、さほど副作用が出ない安全な薬と位置つけられていたのが、コロナには安全ではない事になったのですかね?

大村先生の話によると、コロナ禍が始まり、製造元のメルクにイベルメクチンをコロナ治療薬に承認させようと持ちかけたところ断られたそうだ。メルクを含め、各製薬会社は治療薬の開発に躍起になっているが、どれも抗ウイルス剤や抗体医薬などの方向だ(註1)。イベルメクチンは安い薬だな。1回の治療が20〜30万円する抗ウイルス剤や抗体医薬を開発している製薬会社はイベルメクチンでコロナが治ってしまったら困る訳だ。どうやらその辺りの経済的理由でイベルメクチンやコルヒチン、ヒドロキシクロロキンなど安価な薬品をつぶしにかかっている、そのように思う。』

  • 註1:2021年4月時点で新型コロナウイルス感染症治療薬として承認されている薬物:デキサメタゾン(ステロイド系消炎剤、免疫抑制剤)、レムデジビル(抗ウイルス剤)、バリシチニブ(抗体医薬)、Regn-Cov2(カシリビマブ+イムデビマブ)(抗体医薬)、ケブラザ(抗体医薬)。

ブラジルでは医師の自主性を医業の基本と位置つけるので、患者の利益になるのであれば、医師が責任をとり患者の同意があれば非承認の薬でも使用できます(自費診療の場合)。そういった意味では、日本でコロナに罹患するより、当地でしたほうが治療の範囲が大きいと言えます。但し、当地の巷で流通しているkit covidキッチ・コビージなるものは絶対に勝手に服用しないでください。コロナに効くだろうとイベルメクチンを含め色んな薬で構成されたキットで、それぞれは危険な薬ではないのですが、大量かつ併用するため下手すると重篤な肝障害を起こします。素人がコロナパニックで手当たり次第服用し、良からぬ副反応が現出し折角の有用な薬物を否定的な効果にもっていて大変残念です。そして実は既に承認されているが、あまり話題にあがらない物、日本では正規の医療に使用される漢方製剤は来月のひとりごとで展開しますのでまたお付き合いいただけたら幸いです。


童話:癌が良い?抗癌剤が良い? 

By: Kazusei Akiyama, M.D.

Other World. São Paulo. Caju©2017


2021年4月

童話:癌が良い?抗癌剤が良い?

 

むかしむかし、ある所にヒトがいました。

普通の所で、普通の生活をする、普通の人でした。

普通の所とは、他の人もいっぱいいる街でした。

普通の生活とは、皆と同じように朝起きて、朝ご飯ぬいて、仕事行って、お昼ご飯は外食して、夜はお酒飲んで帰る毎日でした。

普通の人とは、平均的な身長、平均的な体重、平均的な嗜好、平均的な思考、平均的な志向、平均的な学歴をもつヒューマンでした。

黒い板が言いました。「これ食べたら甘くて美味しいよ。」ヒトは食べてみたら美味しくて、とても好きになりました。

違う黒い板が言いました。「これ甘くて、油っぽくてもっと美味しいよ。」ヒトはそちらも食べてみたら、もっと美味しくて虜になりました。

また違う黒い板が言いました。「こちらは、肉汁と脂がいっぱい出て、信じられない美味しさよ。」一回目に食べた時は胃にもたれたのだけど、ヒトは口を通過していく時の美味しさが忘れられなくなりました。

さらに違う黒い板が言いました。「美味しいだけではなく、直ぐに食べられますよ。あっという間!」ヒトはなんと便利だと喜んで生活に取り入れました。

街を歩いていると、大きな絵画に出会いました。絵は綺麗な人が口から煙り吐いてます。ヒトは思いました。「自分も煙吐いたら、綺麗になるんだ。」煙吐く習慣も採用する事にしました。でも、そのうち、大きな絵画の綺麗な人がなにやら見たことのない装置を手に持つようになりました。よく観察すると、絵画に字が書いてあります。「煙吐くの身体に悪いよ。こちらの装置は同じ効果で健康的です!」ヒトは身体に悪いモノは嫌なので、早速いわれた装置に変えました。

白い箱が言いました。「歩いたり、動いたりするの、面倒でしょ?この中で分身を作ってあげるから、分身が歩いたり動いたりしてあげます。」ヒトは考えました。「分身が動いてくれて同じ生活ができるのであれば、絶対便利だぞ。」それで、歩いたり動いたりは白い箱の中の分身にまかせる事にしました。

別の白い箱が言いました。「あなたの個人情報や生活風景を言ってもらえたら、世界中の人に発信してあげます。世界中の人とつながれますよ!」ヒトは考えました。「自分の事を教えたら、世界中の人とつながるんだ。これは便利、自分の情報なんてお安いもんだ。」それで色色白い箱に教えてあげました。

黒い板が言いました。「これ飲んだら、気持ちよくなりますよ。カッコ良いし。」ヒトは気持ち良いのは好きなので、飲んでみました。なんととても気持ちよくなれるじゃないですか!ヒトは毎日飲むようになりました。夜もよく寝られるし。それにカッコ良いし、言う事なし。

そんなこんなで、美味しく、便利で、世界中の人とつながり、ヒトは楽しく生活をしていました。まあ、体重が増えて身体が丸くなってきていたのですが、周りをみると、皆同じような感じだし、体調も春に鼻がグズグズするくらいで、別に問題はありません。幸せです。チョー幸せです。

仕事で予防が大事と言われたので、色色検査をする事になりました。ヒトは自分は幸せな生活をしているので、全部大丈夫と安心して検査しました。何日か経って、検査をした病院へ出向くと、結果が発表されました。なんと。癌の診断です!ヒトはびっくりしました。「えー?良いと言われた事を全部した生活してるし、体調も悪くないのに。ウソでしょ?」初めは誰でも、嫌な事実には疑いにかかります。でも、診断は正しく、ジタバタしても、結果は変わりません。そこで、癌の治療をする事になりました。抗癌剤を使った治療です。

ヒトは抗癌剤治療を始めました。病院へ行って、体内に薬を注射する治療です。一回目が終わった時にヒトは思いました。「なんだ、しんどいとか聞いていたけど、全然大丈夫じゃない。これだったら楽勝楽勝。」

二回目、三回目と回数を重ねていきます。

始めは大した事ないと思っていたヒト。段々しんどくなってきます。吐き気はするし、眩暈はするし、不整脈がでるし… 皮膚は痒いし、頭髪はぬけるし… 食欲はでないし、倦怠感もひどいです。とうとう仕事に行くことが困難になりました。ヒトは嘆きます。「抗癌剤だけじゃないじゃない!はき止めはいるし、降圧剤もいるし、不整脈治療薬もいるし、かゆみ止めもいる。」薬だらけ。それで、今度は抗癌剤の副作用を抑える薬の副作用もでてきました。

ヒトはいつものとおり、白い箱の中の世界中につながっている人達の情報をみてみました。みんな元気で、綺麗で、格好良くって、抗癌剤でヒーヒー言って、禿げている自分が惨めになりました。ヒトは嘆きます。「えー。元気だったのに。幸せに生活してたのに。なんでこんな目に遭わないといけないんだあ。」

でも、癌は治療の効果もあり、小さくなり、その内見えなくなりました。喜んだヒト、幸せな生活に戻ります。「いつもやってきた事をするのが大事だと言われてるし。」抗癌剤は止めです。

『で、ここで、普通の童話であれば、「治ったヒトはいつまでも幸せに暮らしました。チャンチャン。」なのだが、相手は癌なのでそうは問屋がおろさない。』

幸せな生活をしてたら、また癌が再発しました。再発なので、初回より悪質の癌だと言う事です。ここでヒトは選択を迫られます。

-もっと苦しいキツい抗癌剤を使った治療をするか。キツいので死ぬかもしれません。

-治療せず癌を進行させて、その内多分苦しんで死んでいく。

どっちも苦しい。どっちも死ぬかも。

さあ、ヒトはどちらを選択したのでしょう?

『どちらもいやですねえ。このコラムの24人の読者様はどうされます?キツい選択ですね。どちらも嫌です。一番良い答えは、ここまで行かない、つまり、癌にならない、でしょう。癌の発生要因は生活だけではないのですが、癌になりやすい生活というものは判明してきてます(註1)。コロナ禍で癌の話をするのもなんですが、今医療が逼迫してますから、癌だけではなく、入院のお世話になるような疾病は現在診てもらえない可能性が高いので、できる限りさけるにこしたことはないと思います。』

  • 註1:日本の国立ガン研究所に色色記載があります:https://ganjoho.jp/public/pre_scr/cause_prevention/evidence_based.html

 

新型コロナウィルス感染:ブラジル・サンパウロの現状と対策

By: Kazusei Akiyama, M.D., Ph.D.

新型コロナウィルス感染:ブラジル・サンパウロの現状と対策

文責 医学博士(疫学)秋山一誠

2021年4月01日更新

サンパウロだけではなくブラジルでは、今、「どうしたらコロナに感染しないか」から「コロナに感染したらどうのように対処するか」「コロナ感染を最小限にやり過ごす方法」を考えないといけなくなったと思います。

Waterfowl and man. Osaka. Caju©2021

2021年3月26日更新

今日発表された新型コロナウィルス感染に関する数字(ブラジル):

    感染者:12.407.323人(その内サンパウロ州、19.1%)

    死亡者:307.326人(世界の11%;その内サンパウロ州、22.6%)

    ワクチン接種数:1.656万人が1回以上接種

ブラジルは現在去年より激しい新型コロナウイルス感染第二波の真っ只中です。次のグラフはコロナ禍開始からの死亡者数を表し、明らかに2波が認められます。

Sars-cov2 Death in Brazil.

死者数は10日前より週平均一日2000人以上を記録しており、本日は3600人に達したと報道されてます。

サンパウロ州は3月15日より次の図が示すように規制緩和全部後戻り状態で現在「緊急フェーズ」と呼ばれてます。また、サンパウロ州の緊急事態宣言は4月18日まで延期すると本日発表されました。

Fase Emergencial. Data as of March 11, 2021.

サンパウロ州全域でコロナ病床使用率が10割近くになっており、コロナ関連以外でも緊急入院が困難になってきている状態です。選択的手術や入院は中止になってます。都市封鎖を実施する行政府も複数あります。サンパウロ市では人出を規制する措置として、今年と来年の祝日をかき集め、今日26日より10連休になります。また、3/15日より、夜間(8時〜5時)外出禁止令が発令されてます。

この状況は、去年の年末年始の外出・夏季休暇の移動がアマゾンから始まった変異株の全国拡散が重なった結果と考えられます。

サンパウロで1月17日に始まった予防接種は90歳以上の高齢者から順次接種が進み、今日現在69歳以上が対象になってます。サンパウロ州の接種数は547,4万回、中国シノバック系のコロナバックと英国アストラゼネカ系のオックスフォードが使用されてます。サンパウロのブタンタン研究所が中国産原料を用いたコロナバックを製造してますが、来月より完全国産のワクチン(名称ブタンバック)の臨床試験に入ります。

ワクチン接種をしてもまだ安心できる状況ではありませんが、接種していない所よりは良いと考えます。

サンパウロでは引き続き「更なる自衛する」しかないと考えます。

新型コロナウイルス感染症は発症した場合、初動が重要です。当院は連休中でもコロナ対応してますので、少しでも症状や疑いがある場合、至急受診してください。

秋山一誠診療所では外出をできるだけ減らす目的でオンライン診療を積極的に実施しております。感染の可能性のある患者様は初診でご来院いただいた後はスマホのビデオ通話機能を用いてフォローしております。

また、疫学の知識を駆使した、新型コロナウイルス感染症が心配なブラジルの毎日に対応する医療アシスト「コロナ禍対応ホッとライン」を開発しましたのでご利用ください。

  • 秋山一誠診療所  ご予約・ご相談 受診予約の際には「発熱」の有無をお知らせください。
  • SMS +55-11-98135-8205
  • 電話 11-3885-0788
  • 電子メール consult@akiyama.med.br
Tamae Bridge. Osaka. Caju©2021

新型コロナウィルス感染:ブラジル・サンパウロの現状と対策

文責 医学博士(予防医学)秋山一誠

2021年1月24日更新

サンパウロ州では再度コロナ感染拡大が増加しています。22日に発表された緩和地図は次のように黄色フェーズの地域がなくなりました。

サンパウロ州の規制緩和マップ:2021年1月22日の状況。出典:サンパウロ州政府。

入院状況も逼迫してきているため、次の措置が少なくとも2月8日までとられる事になりました。規制強化の発出は25日からです。

  • 緊急でない手術の中止。
  • サンパウロ州でコロナ専用病床を750庄設置。
  • 夜間(8時〜6時)の外出規制。
  • 週末の外出規制、公園の閉鎖、イベントの禁止。
  • 2月より予定されていた登校の中止。

以上のように、サンパウロは全体的に規制が強化されましたので、特に外出に関しては注意が必要です。

2021年1月20日更新

今日発表された新型コロナウィルス感染に関する数字(ブラジル):

    感染者:8.511.770人(その内サンパウロ州、19.8%)

    死亡者:210.299人(世界の10.2%;その内サンパウロ州、23.8%)

前回の”現状”より9週間の間にブラジル全体では感染者が1.45倍、死亡者が1.27倍になっており、感染が再度拡大している状況です。サンパウロ州政府は、これを「第2波」と呼んでます。世界の死亡者の1/7から1/10くらいになったのは、ブラジルが減っているというわけではなく、他の地域で増えているからという事になり、世界的にもコロナウイルス感染症が収束に向かう方向に無い事が示されております。

サンパウロはほとんど全域で感染拡大状況が悪化しています。図はサンパウロ州政府が去る15日に発表した緩和状況です。12月には一地方を除き、フェーズ3の黄色であったのが年があけてからは大半がフェーズが後退してます。サンパウロ市はまだ黄色ですが、屋内で25人以上の会合は禁止になりました。サンパウロ州で覧られるのは、地方(田舎)では大規模や小規模の会合、特にパーティーの開催が恒常的になってきており、そこで感染した青年・中年が自宅に持ち帰り、高齢者に伝染しているパターンのようです。

サンパウロ州のコロナウイルス規制緩和の推移:2020年12月〜2021年1月15日。出典:サンパウロ州政府発表資料。

ブラジル全体も拡大していますが、同じようなパターンとは言えません。特にアマゾン地方のマナウス市が再度医療崩壊するレベルの感染拡大がおこっており、これは年末年始に発見された感染力が従来より強い新型コロナウイルスの変異種のためであろうと考えられます。マナウスの医療状態は最悪になっており、人工呼吸器につなぐ酸素の供給が不足し、そのため入院しても死亡するケースが多数でてます。変異種は現時点ではアマゾン州のみで確認されてますが、医療崩壊の緊急措置として、マナウスで治療できない患者を州外に”輸出”してますので、他の地域にアマゾン型のコロナウイルスの変異種が伝染するのは時間の問題と考えられます。

ヨーロッパでも11月〜12月にイギリス型のコロナウイルスの変異種のため感染拡大しており、そのためブラジル政府は12月末より、ブラジルに外国人の入国を禁止しました。入国可能な本国人や入国できる外国人(永住権を持っているなど、条件あり)全員にブラジル到着航空便に搭乗の際、搭乗72時間以内に実施されたPCR検査陰性を要求するようになりました。ブラジルでは帰国後の隔離はなかったのですが、イギリスより帰国した人は2週間の隔離が要請されるようになりました。

ブラジル全体のコロナ関連患者・死者の1/4〜1/5を出しているサンパウロ州はかなり早い段階でワクチン接種の政策を決めており、不活性ウイルスワクチンである中国製のコロナバックの手配を進めてきました。政争の道具にされるなどの紆余曲折がありましたが、このワクチンが認可された1月17日より接種を始めました。現時点では、医療従事者と原住民族に接種し、次に高齢者が対象となり、その次に既往歴がある市民が対象と発表されてます。しかし、インドでオックスフォード大学・アストラゼネカ系のワクチンを購入を予定していたブラジル連邦政府が購入の遅延のため、サンパウロのコロナバックを一部差し押さえたので、ワクチンが足りない可能性が出てきてます。いずれにしてもワクチンが一般市民に行き渡るには時間がかかると考えるのが妥当です。

サンパウロでは引き続き「更なる自衛する」しかないと考えます。

Super Moon. São Paulo. Caju©2020

2020年11月15日更新

今日発表された新型コロナウィルス感染に関する数字(ブラジル):

  • 感染者:5.851.239人(その内サンパウロ州、19.9%)
  • 死亡者:165.696人(世界の12.6%;その内サンパウロ州、24.5%)

前回の”現状”から1ヶ月半経ちました。その間に、世界ではコロナ禍が収まる兆しは全然無く、ヨーロッパや北米では再度感染拡大のため、ロックダウンする所もあり、日本でも第3波到来とか言われてます。ブラジルでは死者がこの間に2万人増え、16.5万人、サンパウロ州では2日前に4万人を超しました。8月頃にはブラジルでは1日平均(週の1日平均=1週間の死亡数を7で割った数字)のコロナ死亡が1200人程度でしたが、最近は300人強まで減ってきています。減ったとは言え、大変大きな数字です。日本が10ヶ月に積み上げた死亡者数はブラジルの1週間より少ないです。

しかし、11月に入り、サンパウロ市では富裕層に感染拡大が認められます。下記前回の図にあるように、9月下旬から富裕層の多い地区で死亡増加の傾向でしたが、次のような具体的な事実が最近認められます。まず、自費や高級医療保険を扱う検査機関でPCR検査の実施が増えてます。直近2週間で実施検査数が3割ほど増え、検査機関によりますが、結果の陽性率も20%から29%や8%から15%など、陽性率が一番低かった10月下旬に比べ、確実に陽性の検査が増えてます。さらに、富裕層が利用する病院でコロナ入院が増えており、需要の減少で閉鎖していたコロナ病棟やコロナICUを再開するか複数の病院で検討に入ったようです。

先月はサンパウロ州政府が導入を進めている中国製のコロナウィルスワクチン(コロナバック)を巡って連邦政府と州政府が対立し、政争がひどくなった月でもありますした。サンパウロ州政府は州の市民全員に接種を義務つけるといったような発表もしており、安全性が疑問になったり、中国製であることが嫌われたり、強制接種反対論がでたりと、ワクチン導入にまだまだ課題がある事が明らかになってます。そして、先週、コロナバックの臨床試験に参加している被験者が死亡したとの事で、連邦政府の当局が治験の中断を命じ、混乱に輪がかかった状態です(治験中断は数日後解除されてます)。連邦政府もイギリスのオックスフォード大系のワクチンの購入を発表しており、ワクチン政策がどの様になるのか現時点で不明な点が多々あります。

 サンパウロでは引き続き「更なる自衛する」しかありません

Rain drops. Hyogo. Caju©2020

2020年10月02日更新

今日発表された新型コロナウィルス感染に関する数字(ブラジル):

  • 感染者:4.882.231人(その内サンパウロ州、20.5%)
  • 死亡者:145.431人(世界の14%強;その内サンパウロ州、24.6%)

現時点で新型コロナ禍が9ヶ月を過ぎました。死者は世界で100万人を超し、ラテンアメリカでは35万人、ブラジルでは14.5万人、サンパウロ州では3.6万人に迫ってます。インドが感染者数で世界2位で移行してますが、ブラジルは依然として死者数で2位です。8月上旬までの1日平均死者数1000〜1200人から600〜700人へ減ったとは言え、高い数字をキープしてます。まだまだブラジルの内陸部の地方へ感染が拡大している状況です。サンパウロ州では州全域の645の市町村で感染者が認められますが、6月1日から始まった規制緩和は5段階の3段階まで進み、学校を除き、ほとんどの業種が制限があるも、稼働しています。

サンパウロ州政府は州の住民全員にワクチン接種をすると発表してます。また、接種が始まるまでは緊急事態宣言を解除しない方針です。本日、国の認可当局(ANVISA、国家衛生監督局)にサンパウロで共同開発が進められている中国産ワクチンの認可申請が手続きされました。州知事によると、12月中旬に接種を開始するとの事です。ブラジルでも臨床試験が実施されているオックスフォード大系のワクチンは9月上旬に副作用疑いが出たため、治験が一時停止され、開発が遅れたのでこのサンパウロのワクチンが世界で一番始めに一般の人口にワクチンを大量接種する事になる可能性が高いです。

8月末と9月上旬に大挙して人の外出があり、9月下旬で感染状況が増えなければ集団免疫の獲得が認められるのではないかと先月ここで書きました。残念な事に、拡大の抑制はなかったのでサンパウロでは集団免疫の獲得があったとは言えません。サンパウロ市の統計では、9月下旬には市の96区の内、79区で新型コロナの死亡が減少している事がわかり、感染が減少方向に向かっている模様ですが、富裕層の多い区で増加傾向となってます(図)。この現象は①8月下旬から海や山などへの外出が増えたため、②営業規制緩和で飲食関連が店内で営業できるようになり外食するようになったため、③感染者が減ってきたので自宅で会食やパーティーをするようになったため、④元々富裕層が多い地区では高齢者が多いため、と説明されてます。

図。茶色へ色が濃くなるほど死亡率の増加が認められる。

サンパウロ市の直近25日間の新型コロナ死亡率の推移。サンパウロ市保健局統計。2020年9月24日現在。

サンパウロ在住の邦人は統計的に富裕層に入りますので、現時点では周りで感染が拡大している事になります。引き続き自衛するしかありません

 
Feira livre. São Paulo. Caju©2019

2020年9月07日更新

今日発表された新型コロナウィルス感染に関する数字(ブラジル):

  • 感染者:4.137.722人(その内サンパウロ州、20.7%)
  • 死亡者:126.686人(世界の14%強;その内サンパウロ州、24.7%)

筆者がコロナ疲れでこのページを更新せず2ヶ月経ってしまっている間に、数字が3倍くらいになってます。メキシコやペルー、チリやコロンビアなども感染者が多く、米国も依然1位なので現時点では米州全体が新型コロナウイルスの流行地と言えます。ブラジルの死亡者数は以前と同じ2位で、まだまだ内陸部の地方に伝播している状況なので、死者が多いです。最近インドに急速に感染が拡大、感染者数2位に上がってきました。

ブラジル全体の数字では8月中旬頃まで、新型コロナウイルス死者が9週間連続で1日平均1000人を超えていましたが、このところ800人台に減少してます。サンパウロ州においては4週間前より新規感染者の拡大が止まり、州の645自治体の95%でコロナ規制緩和策5段階の内、3段階になってます。この段階になると、立席以外のイベントも開催できるようになり、商業は例外なく営業できます(入店などの規制あり)。今週より、一部登校が可能になります。

サンパウロ市では感染が減少に転じてます。今週中にアニェンビー国際展示場に設置されている野戦病院が閉鎖される予定で、市内に4ヶ所あった内、一番大きな野戦病院が役割を終える事になります。また、市内で実施された疫学調査では、市内人口の19.7%が既に新型コロナウイルスに対する抗体を保有しているとの研究結果が発表されてます。

ブラジルは感染者の数が多いので、米国とともに格好のワクチン治験をする環境にあります。現在4種類のワクチンの最終段階の治験が行われており、ブラジル連邦政府はすべての国民がワクチン接種できるよう法整備を終えました。国自体はイギリスオックスフォード大学系のワクチンを1億回分確保したと発表してます。サンパウロ州は中国シノヴァック製のワクチンを1.2億回分確保して、12月には接種開始の予定と発表してます。

この様に、サンパウロではコロナ感染の拡大が止まったデータが多方面から認められますが、感染がなくなった訳ではありません。現在ブラジル独立記念の三連休中で、お天気が良いので海や田舎の行楽地へ大挙して押しかけており、規制どこ吹く風の状況で「市民がコロナ隔離の終わりを布告した」と言った見だしが付くニュースになってます。9月下旬の感染状況で、拡大が見られなければ、集団免疫が獲得されたと考えてもよい可能性があります。それまでは反対に油断できないと考えます。

Matsubagani. Kinosaki. Caju©2018

2020年6月27日更新

今日発表された新型コロナウィルス感染に関する数字(ブラジル):

  • 感染者:1.314.000人(その内サンパウロ州、約20%)
  • 死亡者:57.070人(その内サンパウロ州、約25%)

新型コロナウイルス感染拡大は現在北南米、中東、インドで拡大してます。ブラジルもその一員で拡大中です。現在感染者数、死亡者数ともに世界2位です。感染者数の2位は5月22日に、死亡者数の2位は6月12日に達してます。1ヶ月で死者数が2.2倍になってます。大都市部では安定、一部減少に入ってますが、内陸部へ感染拡大してます。人口あたりの死亡者数でみると、ブラジルは世界12位あたりで、米国より少なく、カナダ程度の成績なのである程度医療が持ちこたえているのではないかと考えられます。

しかし、感染拡大中にサンパウロ州とサンパウロ市どちらも外出規制緩和を始めたので、人出が増えてます。6月初めには小売り業などが時間制限四時間で営業可能になりました。さらに7月6日より次の緩和段階(3段階目)に入り、飲食と美容・理容が解禁されます。サンパウロ市のパカエンブ球場に設置された野戦病院は撤去されるくらい当市は安定期に入ってますが、高止まりなので、感染者数は少なくありません。サンパウロ市では近く第二波の可能性があり、その確立が高まっていると言えるでしょう。

連邦と州と市の行政の足並みが、死者5万人越しても、揃わないので、社会全体参加型の予防は期待できないと思います。感染者が多い状態で人出が増えるので、「今までになく注意し、自衛していくしかない」としか言えません。

引き続き不要不急の外出は避け、特に会食;外出する場合はマスクを着用し、マスクしない人とは接触しない;人と会話する場合はマスク着用する生活を心がけるのが重要です。

秋山一誠診療所では外出をできるだけ減らす目的でオンライン診療を積極的に実施しております。感染の可能性のある患者様は初診でご来院いただいた後はスマホのビデオ通話機能を用いてフォローしております。

  • 秋山一誠診療所  ご予約・ご相談 受診予約の際には「発熱」の有無をお知らせください。
  • SMS +55-11-98135-8205
  • 電話 11-3885-0788
  • 電子メール consult@akiyama.med.br
Maria-farinha (Ocypode quadrata). Una. Caju©2003

2020年5月28日更新

今日発表された新型コロナウィルス感染に関する数字:

  • 感染者:418.608人(その内サンパウロ州、約22%)
  • 死亡者:25.935人(その内サンパウロ州、約26%)
  • ブラジルで医療崩壊状態(ICU病床使用率90%以上)の州:AP、MA、AC、PE。

死亡者は前回の更新(5/02)より3.78倍増加してます。ブラジルでは現在感染者数が世界2位で、拡大スピードが一番速い状況です。始めに一番死者が多く出たイタリアでも死者数が倍増するには2ヶ月かかりましたが、当地では2週間で倍増してます。反面、感染者数や死亡者数のサンパウロ州の割合を見ると、毎回下がって来ているのがわかり、ブラジルの内陸や地方で感染拡大している事を反映してます。現時点でブラジルは”感染率”(正確にいうと「実効再生算数」または Rt(アールティー)。感染者が平均して何人に感染させるかという人数。1以下でないと感染拡大が終息しない)が世界一高く、Rt=2.81まで観察されてます。この現象の主な理由は外出規制を守らない人が多く、人出減が5割程度の所が多いからです(7割以上ないと効果がでない)。

昨日サンパウロ州政府は外出規制を6月15日まで2週間延期すると発表しました。一方、段階的に規制緩和する事も発表され、フェーズ1(現在の完全規制)からフェーズ5(完全緩和)の5段階です。来週の6/01日より次の業種業態が緩和されます:

  • 不動産販売
  • 自動車販売
  • オフィス一般
  • 商業用店舗(小売り業)
  • ショッピングセンター

サンパウロ市はRtがほぼ1です(Rt=1とは、増えもしないが減りもしない状態)。また当市では、ある一定の人口の抗体検査をし、市内感染の動向の疫学調査を実施する計画も発表されてます。外出規制緩和は感染拡大が止まってからでないと危険である意見も多々あり、緩和されても引き続き現在と同じ生活仕様を推奨します

ブラジルでは結果的に「わざとで無い、間違った方法で」集団免疫獲得にむかっている感があります。どんな感染症でもある一定の人口が感染し、免疫ができるとその感染症の流行が終息にむかうので、新型コロナも例外ではありません。従って、ジッとしていられない人達にどんどん感染してもらい、人口の2/3程度が感染するのを大人しく待機するしかないのかと考えます。感染率がまだ高値のまま規制緩和をするので、感染者はさらに加速度的に増え、以外とあっという間に2/3になると思います。

Sunset at Noronha. FEN. Caju©2009

2020年5月2日更新

今日発表された新型コロナウィルス感染に関する数字:

  • 感染者:96.559人(その内サンパウロ州、約32%)
  • 死亡者:6.759人(その内サンパウロ州、約38%)
  • ブラジルで感染が多い州:SP、RJ、CE、PE、AM。

現時点で国全体で一日400人以上の死亡で推移してます。但し、PCR検査されずに死亡した方が1000〜2000人いるのではないかとされてますので、実際の死亡者数は発表より多いのは間違いないでしょう。医療崩壊状態と認定されているのがアマゾン州です。

サンパウロ州及びサンパウロ市の人口移動は約55%に留まり、感染拡大が止まらないので外出禁止は5月10日まで延長されてます。5/11よりショッピングセンターなど商業施設の営業を認める方向のようです。反面、サンパウロ市では来週より人の移動を減らすため、道路封鎖を実施すると発表されてます。市内では感染拡大が減少しないので、10日以降も外出禁止が示唆されてます。更に、サンパウロ市では5月4日より、公共交通機関を利用する場合、マスク使用が義務づけられましたので、ご注意ください。

4月にはブラジル保健当局(ANVISA)が一般薬局で新型コロナウイルスの抗体検査実施を許可しました。抗体検査は抗原(ウイルス)を検出する有名なPCR検査ではなく、感染した人が抗体を持っているか検査するものです。今回のような大規模感染症の場合、一定人口の抗体を調査し、その人口全員の免疫率(集団免疫)を計算するには有用ですが、個人や少人数(例、会社単位)で実施しても全く意味がありません。問題点として、まず流通する検査キットの精度の問題があり、30%から60%偽陰性(本当は陽性だが陰性と結果がでる)があるようです。また、抗体は感染開始より一定期間以上経たないと産生されないので、採血した時期により本当は陽性だが陰性となります。さらに、疑陽性(本当は陰性だが陽性と結果がでる)も一定程度あり、抗体があるから大丈夫と勘違いする事になりかねません。薬局の検査は有料なので、支払いができる人達が対象になり、人口全体の集団免疫率を算出する事はできません。この様な事情から、国がこの検査方法を許可したのは単なる責任逃れとしか思えません。仮にこの抗体検査を受けて陽性が出ても、外出禁止を免除するものではありません。抗原検査と抗体検査はどちらも医師の判断に有用です。医師の指示で受けるようにお願いいたします。

Sequoia tree. California. Caju©2008

2020年4月06日更新

今日発表された新型コロナウィルス感染に関する数字:

  • 感染者:12.056人(その内サンパウロ州、約41%)
  • 死亡者:553人
  • 感染拡大が特に顕著で、拡大が増している州:SP、RJ、CE、DF、AM。

サンパウロ州で実施されている都市封鎖は州全体では人口の移動が封鎖される前に比べ、56%減少したデータが発表されてます。サンパウロ市においては更に多く、約80%の減少であろうと推測されてます。七割以上減少しないと封鎖の効果が発生しないとされます。感染者は増え続けているので、本日サンパウロ州の封鎖は4月22日(水)まで延長される事になりました。

ブラジルに対し日本の外務省が出す感染症危険レベルが3/25にはレベル2(不要不急の渡航は中止)、3/31にはレベル3(渡航中止勧告)になり、当地の”危険度’が増すばかりなので、3月下旬より希望退避または強制退避される駐在員・帯同家族が目立ってます。日本へ帰れるルートがどんどん減っているなか、ブラジルより更に危険な地域を経由するルートも利用せざるを得ない状況です。いずれにせよ、日本へ帰国したら2週間の隔離要請があります。しかし日本の検疫の隔離要請は法的拘束力がないので隔離をしないでそのまま実家へ帰ったなどの報告も聞きますので、退避が日本国内の感染拡大に一助しているのは間違いないでしょう。

他の欧米諸国と同じく、当地でも「マスク着用の重要性」が認められる流れです。医療用のマスクでは無く、布で作ったいわゆる日本のガーゼマスクを自作するのが流行り出しました。欧米はマスクを着用する習慣はありませんし、する場合も「うつさない」のではなく「うつされない」ために使われます。その概念が「マスクを着用する事により、飛沫感染を減らす」のに変わってきたようです。

Teremos de volta? SFO. Caju©2011

2020年3月27日更新

今日発表された新型コロナウィルス感染に関する数字:

  • 感染者:3.417人(その内1223人がサンパウロ州)
  • 死亡者:92人(サンパウロ州68人、新しく次の州で死者がでてます:アマゾン、セアラ、ゴイアス、ペルナンブッコ、リオグランデドスル、サンタカタリーナ)

死者や感染者の増大が認められますが、数字的にはあまり現状を表してないと考えます。PCR検査の結果はサンパウロで現時点で10日待ちになってますので、確認されずに死亡した方がたくさんおられる報告があります。確実に感染拡大しているのは間違いないでしょう。ブラジルでは完全に市井感染が主な感染源となってますので、保健所の感染者追跡は行われてません。

サンパウロ市では今週24日より商業活動の停止と学校閉鎖が始まり、街から人が消えてます。食料関連は開店しても良いのですが、人通りが途絶え来客が見込めないので閉店しているお店が目立ちます。バルやレストランはデリバリーまたは持ち帰りのみになりました。サンパウロでは野戦病院の設置やサンパウロ大学医学部附属病院の中央棟をコロナ感染関連の病棟に改装されてます。

反面、大統領はこういった地方行政の措置に不満を示し、都市封鎖の解除を求めてます。経済活動を止めない為だそうです。これに応じ、今日マットグロッソ州、ホンドニア州、サンタカタリーナ州で封鎖が解除されました。今回のような危機をマネージすべく行政トップの足並みが揃わないので、感染拡大が長引く可能性が大です。

今週新型コロナウイルスの予防や治療薬であるとして米国大統領やブラジル大統領がマラリアや自己免疫疾患に使用されるクロロキンを称賛し、ブラジルでは買い占めがおこり、当局が規制に乗り出しました(が、時既に遅しで元から必要な患者さんが入手できない状況のようです)。この薬物はウイルス性肺炎に対する効果は検証中で、効果は不明です。大変毒性が強いので、絶対に勝手に服用しないように!米国で死亡例が出てます。

COVID-19の新症状として、「味覚・嗅覚障害」が報告されました。検証が必要ですが、多数多所で報告があり、新型コロナウイルスは鼻腔と咽頭で好んで増殖する事がわかってきてますので、本感染の症状の一つと考えても良いのではないかと思います。

秋山一誠診療所では引き続き診療を継続してまいります。

No People. ORD. Caju©2011

2020年3月20日更新

今日発表された新型コロナウィルス感染に関する数字:

  • 感染者:904人(その内396人がサンパウロ州)
  • 死亡者:11人(サンパウロ州9人、リオデジャネイロ州2人)
  • 感染が確認されている州:全ての州。また、全ての州で国内感染が認められる。

今週は爆発的に感染者が増えました。来週は更に拡大する予想です。また、初めて死者がでましたが、発表されている人数以上である可能性が大です。理由は検査に押しかけ需要があったため、パンク状態になり、検査結果は1週間待ちになっており、結果が出る前に死亡するケースが出てきているからです。現在、重症例にしか検査をしない方針です。来週にはサンパウロ大学の実験用研究室17室をPCR検査に転用する計画が発表されてます。

ブラジル医師会(Associação Médica Brasileira)が国内の全ての一般外来の閉鎖、緊急を要しない手術や処置の延期を勧告しました(3/19(木))。前者は混み合う待合室が感染クラスターになるのを防ぐため、後者は病院資源を緊急外来に集中するためです。さらに、サンパウロ医師評議会(医業を監督する役所, CRM Conselho Regional de Medicina)が今日、感染の危険度により、各自医師の判断で医院など医療機関を閉鎖しても罰則に触れないといった通達を発しました。この流れで、閉鎖する医療機関が増えています。

3/20(金)に連邦政府が「非常事態宣言」を発し、上院議会が承認しました。同時にサンパウロ州およびサンパウロ市も非常事態を宣言を発し、これにより、社会活動の制限が行われる事になりました。サンパウロ市では21日以降次の業態が開店でき、それら以外は15日間閉鎖命令が出てます:

  • 病院、医院
  • 薬局、医療品店
  • 市場、フェイラ(青空市場)含む
  • コンビニ
  • パン屋
  • バルやレストランなど飲食店(テーブルの間隔を1メートル以上空けるなど制限あり)
  • ペットショップ
  • ガソリンスタンド

秋山一誠診療所では完全予約制のため、待合室が混み合わない工夫ができます。引き続き診療は続けていきます。但し従業員の安全のため、時差出勤を実施してますので通常の診療時間が変更する事があります。必ず事前にご連絡ください。

Kamesuehiro. Kyoto. Caju©2020

2020年3月14日更新

今日発表された新型コロナウィルス感染に関する数字:

  • 感染者:121人(その内約半数65人がサンパウロ州)
  • 感染疑い:1.496人
  • 死亡者:ゼロ
  • 感染が確認されている州:SP、RJ、PR、RS、DF、SC、GO、PE、BA、MG、RN、ES、AL。
  • その内、サンパウロ、バイア、リオデジャネイロで国内感染が認められる。

3月12日にサンパウロ州政府は新感染症用のICU集中治療室を1000床増やすと発表しました(が、連邦政府の補助金などが必要なので、「作る」と言っているのであり、「出来た」訳ではありません。)。

3月13日にようやく連邦政府が新型コロナウィルス感染拡大抑制に関する「勧告」(recomendação = recomendation、日本の「要請」に準じる;法的効力はない。)を出し、それに基づきサンパウロ州が次に挙げる行為を勧告してます:

  • イベントの中止:行政主催または民間主催のスポーツ、文化、芸術、政治、学術、商業、宗教、その他、500人以上が密集するイベントの中止、延期、無観客で開催。
  • 500人以下のイベントは締め切った場所で開催しない。
  • バイキングスタイルやポルキロの様な各自が食べ物を取る方法の食事の中止。
  • クルーザー船を利用した観光の中止。
  • 新型コロナウィルス感染症の為死亡した方のお通夜の中止、速やかに埋葬。
  • 学校休校:期間は未定
    • 大学は16日(月曜日)より
    • 幼稚園と小中高は23日(月曜日)より:私学では25日頃から休校する所も多々有るようです。公立の学校の場合、16日以降休学しても欠席扱いにならない。休校期間は未定なので、年間200日の学校日に満たない場合、来年に持ち越し可。
  • 休校中の児童を55歳以上の親族または祖父母に預ける事を禁止
  • 可能な場合、在宅勤務、時差出勤。
  • 不要不急の旅行や出張の中止や延期。

高齢者や基礎疾患のある方は特に「社会的接触」を避ける:国内感染が認められる行政所在地在住の方は(この場合、サンパウロ市、リオデジャネイロ市など)旅行の中止、映画館、教会、ショッピングモール、ライブハウスなど人が密集する場所に行かない。また、早急にインフルエンザ予防接種を受ける事が推奨されてます。

その他、法的効力がある措置としては「一定の場所で新型コロナウィルス感染症の為に用意されたICU集中治療室の占有率が80%に達した場合、その場所は「検疫地域」に宣言され、都市封鎖などが実施可能になるといった条例が発効しました。また、法務省が疑い例を裁判所命令無しで強制入院や強制隔離できる省令を用意しているようです。

いずれにせよ、秋山一誠診療所が提案する対策=自衛は下記のとおり、変わりありません

2020年3月11日現在

去年の年末に中国武漢で発生した新型コロナウィルス感染は今日WHOがパンデミック宣言しました。現時点で110以上の国や地域に広がり、約12万人の感染者、4千人以上の死者をだしている感染症です。

ブラジルでは2月23日より保健省(厚生省)の監視が始まり、当初は感染の可能性のある国からの旅行者・帰国者が対象でした。これらの国(日本を含む)は27カ国にまで増え、3月6日にはもう国単位では無く、北米、ヨーロッパ全域、アジア全域へ監視対象が拡大されました。監視内容は対象地域から入国した方で発熱や咳などの症状がある場合、監視下におかれるとありますが、隔離施設や隔離方法などは用意されてないようです。

ブラジルの保健省の出した指示は具体的には空港や港、国境の監視をANVISA(国家衛生監督局)が施行すべきとの指示や連邦の各州が各自の事情にあった予防政策を実施しろという事で、高齢者や有病者を守らなければならないなどは言っているものの、国全体の行動基準や措置は明確化されてません。

ブラジルでは3月11日現在8州で感染者が認められ、感染確認68名、疑いで経過観察中が907名、死者ゼロです。感染確認の内、半数強がサンパウロ州にあります。また、国内感染もサンパウロ州とバイア州で認められてます。2月25日にはイタリアで感染したサンパウロ在住の男性がブラジルの感染者第一号と確認され、3月03日まで2件確認されていましたが、ここに来て爆発的に増える傾向にあると思われます。昨日の時点で確認34人が今朝52人、夕方には68人に増加してます。

サンパウロ国際空港で検疫が実施されてない、学校閉鎖は各自の都合により自主的に行われている、イベント抑制の要請がないなど、実際具体的な対策をしていないブラジルの現状や、一般的に意識低めの国民性などを勘案すると、この感染力の強いウイルス感染が更に拡大する事になりかねないと思われます。

秋山一誠診療所が発信する対策の提案としては「自衛しかない」と考えます。感染の可能性の高まる室内イベントは軒並み中止されている訳でも有りませんし、学内で感染者が出ても、政治的な問題で学級閉鎖しない大学も有りますので、各自が置かれている状況が「ヤバい」と思ったら自分でその状況・状態を避けるしかないでしょう

新型コロナウィルス感染症はほとんどが「風邪」の症状になり、8割方が軽症で完治しますので、必要以上に恐れる事はありません。しかし、70歳以上の高齢者にはかなりの確率で肺炎などに重症化・重篤化しますので、高齢者が居られる環境には注意が必要です。意識が低い方も多い反面パニクっているブラジル人も多いので、現在ウイルス検査を実施できる病院の救急外来はとても混雑してます。新型インフルエンザの流行時のように、発熱救急外来を受診し、そこで感染するような事態は避けたいです。また、無用に検査など医療資源を消費する事を避けるのも現時点で重要です。当診療所でも感染が心配であるので検査を希望する方の相談がありますが、仮に陰性であったとしても、潜伏期間等の関係でウイルス保有者でない事を証明できる訳ではありません。このような状況を医学では「虚偽の安心感の要望」といいます。


秋山一誠診療所の新型コロナウィルス感染に対する自衛の提案

軽い症状(37.5℃以上の発熱、咳、頭痛など風邪の症状)のある方(子供を含む)

  • 市販の総合感冒薬を服用し、自宅で療養。
  • 4日以上症状が続く場合、かかりつけ医を受診、医師の指示を仰ぐ(*)。
    • (*)そこで必要であれば、ウイルス検査の実施の指示がでます。サンパウロではウイルスを検出するPCR検査が既に民間の検査機関で行われてますが、医師の指示が必須です。
    • 陽性の場合は自宅療養です。陰性であっても潜伏期間等のため自宅待機が必要な場合もありますので総合的な医師の判断に従ってください。

重い症状(強いだるさ、息苦しさ)のある方

  • 直ちに救急外来を受診。
  • 場合により入院。

無症状、有症状に関わらず、妊婦、高齢者、基礎疾患(糖尿病、心不全、呼吸器疾患)のある方、透析を受けている、抗癌剤や免疫抑制剤を服用している方

  • かかりつけ医に相談。

無症状であるが、濃厚接触(感染者と近距離で一定時間以上会話をする)や感染の疑いのある場所(日本のみではなく、ヨーロッパと北米も該当)にいた方

  • 可能であれば接触から2週間自宅待機が望ましい。
  • どうしても仕事や人と会う必要がある場合は接触時から2週間はマスクを着用。

無症状で接触や感染の疑いのない方

  • 手洗い、うがいの徹底。
  • マスクの使用
  • 発生リスクが高い3っの条件「換気の悪い密閉空間」「手の届く距離に人が密集」「近距離での会話や発声がある」が同時に揃う場所・状況を避ける。

秋山一誠診療所では外出をできるだけ減らす目的で遠隔診察(オンライン診療)を積極的に実施しております。感染の可能性のある患者様は初診でご来院いただいた後はスマホのビデオ通話機能を用いてフォローしております。

  • 秋山一誠診療所  ご予約・ご相談 受診予約の際には「発熱」の有無をお知らせください。
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ブラジルでカーニバルが無くなった日

By: Kazusei Akiyama, M.D.

Brown. São Paulo. Caju©2017.


2021年3月

ブラジルでカーニバルが無くなった日

とうとうやって来ました。この日が来るとは!このコラムの24人の読者様、夢にも思っていなかったのではないでしょうか?というか、地球上、誰も思った事無かったでしょ。世界中でブラジルと言えば、サッカーとカーニバルが連想されるくらい、当地の生活に組み込まれています。それが今年はコロナ禍のせいで、なんとブラジル各地でカーニバルが中止になってしまいました。まあ、どちらもブラジル人全員が好きで熱狂する訳ではありませんが… サッカーに関しては、ワールドカップ時にセレソンを応援しないと国賊みたいな雰囲気がありましたが、ドイツに71で史上最悪の負け方をした、皮肉にもブラジルで開催された2014年大会以降「別に何もサッカー見なくていいやん」という国民感情になったと思います(註1)。

当地の通念ではカーニバルは次のように良い解釈されます:「カーニバルほど、ブラジル国民の心を表現するものはない。皆を巻き込む至福、文化の多様性、非宗教と宗教の混合、無限の創造性、多様な人種や世代や社会階級の同居性、それらが街のいたる所で爆発する!」

『しかし、世論調査によると、実際にカーニバル大好きなブラジル人は全体の1/3くらいだそうだ。大半は「どうせ休みになるからじゃあ休もうか」程度の関心ですな。』

国民一致のカーニバルではないのですが、経済効果は確かにあるので、官民ともに重要視する大イベントである事には間違いありません。カーニバル目当ての海外からも含む観光客はいうまでもなく、それ以上に前述のじゃあ休もうかの大半もどこかへ旅行へ出かけたりしますので、カーニバル期間はブラジル経済の原動力の一つと言われます。2019年度の試算では80億レアル(当時のレートで約21.3億米ドル)の経済効果があったのが、今年は全て夢から覚めてしまった様に消えてしまいました。観光以外に特筆する産業がないサルバドールのような都市ではダメージが大きいのは簡単に想像できます。カーニバルが重要な場所ではコロナ禍は公衆衛生上の緊急状態であることを解っているのか解っていないのか、中止を決定した行政府の長に批判が向けられてます。

ブラジルの社会にとって重要とされるイベントですが、それが中止になり、それでも暴動が起こったりしなかったです。「大変静かな行われなかったカーニバル」は一種の驚きでもあったのですが、背景に国民の大半が支持しない事情があったのではないかと思われます。実はこのリンクの論説のように当地でも「カーニバル不要論」があるのです。元々カトリック教会が敵視していた行事であるので、純粋なカトリック教徒はカーニバルの酒池肉林を悪魔の仕業と捉える様で、彼らに嫌われます。宗教的な理由以外での不要論は経済的理由によるものです。先ず、休日が毎年変動するため、産業的な計画を立てにくいのが一つ、次に少数が楽しむイベントの為に国全体が休止してしまう経済的損失が無視できないからですね。カーニバルはキリストの復活を祝うイースターから40日前である「四句節」が始まる直前と定義されてますが、このイースター自体が移動祝日であるため、カーニバルも毎年移動になります。ブラジルでは、伝統的に1月は夏期休暇の時期で、それが終わったら「さあ仕事だあ」になるべきなのですが(ブラジル人は疲れるのが嫌いなので、仕事にかかる前に先ず休息するのですな)、実際はカーニバルが終わるまで、なんか社会全体が「どうせまた長い休暇がある」ため足踏み状態になりますね。それで、カーニバル休暇が2月の上旬に来るのであればまだ良いのですが、3月下旬などになった年などは最悪です。また、期間中、ブラジルでは野放し感がある飲酒運転による交通死亡事故が多発するのも不要論を加担します。

『廃止しなくても良いけど、せめて1月の下旬に固定休日にして、2月からすっきり年始にしてほしい!という意見もよく聞きますな。』

こんなカーニバルですが、起源は諸説あり、ものすごく遡ると、文明が始まったとされるメソポタミア時代の習慣であったといった説もあります。ブラジルでは、植民地時代にポルトガル人が17世紀に持ち込んだ「entrudo」という行事が始まりとされます。エンツルードは元々大きな人形を練り歩かせたり、道行く人に水をかけたりする様なお祭りだったのが、徐々に凶暴化していき、水のかけあいでは済まず、卵や小麦粉、砂や小便の投下に発展しました。そのため、1854年に行政府により禁止された歴史があります。名称の由来はラテン語で「肉を取り除く」という意味のcarnem levareと言う説が有力です。元々春を祝うお祭りと関係があった非宗教的な行事だったのですが、男性が女装したり労働者が貴族を装ったり、暴飲暴食や乱交があり、社会的役割や秩序の破壊ではないかと中世時代にカトリック教会が警戒した結果という説もあります。これをコントロールするため(註2)先ず四句節を創設し、この期間は断食を行い(肉を取り除き)、粛々とおとなしく過ごすべしとしました。40日もおとなしくしないといけないので、その代わり、直前は羽目を外しても黙認する。この黙認が現在のようなカーニバルになったという事です。

  • 註219世紀頃まで、カトリック教会はヨーロッパ文明に絶大な権力を維持していた。

19世紀にブラジルで禁止されたエンツルードは20世紀に入り、corsoと呼ばれるパレードにとって代わりました。コルソは上層階級が自動車を飾り立てて街を行列する大変お上品なモノになり、卵や小便を投下する代わりに紙吹雪や紙テープを使用するようになりました。このパレードが現在リオやサンパウロで見られるサンバ学校のパレードの山車の起源ですね。上流階級が始めたコルソはフランスの仮装パーティーが原型と言われます。ブラジルは全体的にカトリックですが、各地方・地域により、カーニバルの仕方が異なります。代表的なモノを列挙すると次になります:

 

Desfile de escola de samba。エスコーラ・デ・サンバは直訳するとサンバ学校、そのパレード、日本ではサンバチームと呼ばれるようです。世界中にテレビ放映されるので有名なリオデジャネイロ市やその派生であるサンパウロ市行われる、観客席付きの特設会場で行進する賞金付きコンテスト式のパレード。各エスコーラはその年のテーマにのっとり、山車、衣装、歌詞を用意し、リオの大きなエスコーラのパレードは5千人ほどで構成される。音楽はサンバの一種のbatucadaバトゥカーダと呼称され、打楽器が中心。

 

Carnaval de Salvador。バイア州サルバドール市のカーニバル。彼の地はTrio Elétricoトリオ・エレットリコと呼ばれる、音響装置とステージを設置した大型トラックがパレードするのが特徴。トラックの周辺はロープで仕切られ、有料でこの仕切り内で踊る事が出来る(註3)。音楽は電化されている大音量で、いわゆるバンド形式、バイア特有のaxéアッシェーを始め、ロックやポップ、レゲエなど色んなジャンルが演奏されるが、サンバはあまり人気の無い感じ。

  • 3:大変な数の群衆から隔てた空間で踊るだけでなく、トラックの飲み物サービスやトイレが使用できる。著名なバンドのトリオは高額。サルバドールのカーニバルに行くなら有料トラックは絶対お薦め。

 

Carnaval de Recife e Olinda。ペルナンブッコ州のへシッフェ市とオリンダ市のカーニバル。地域でお金を出し合い、音楽隊を雇い、街を練り歩く、carnaval de ruaと呼ばれる、街頭カーニバルの原型が残っている。この地域別の集まりはbloco carnavalescoと呼ばれ(単にブロッコ)、誰でも自由に参加できるのが特徴である。オリンダではBonecos de Olindaと呼ばれる、巨大な人形のパレードが有名で、前出のentrudoが起源?音楽は他地域では見られない、frevoフレーボをブラスバンドで演奏される。

 

Carnaval de ruablocoと呼ばれる、集団が街頭で行うカーニバル。この方式が全国で一番多くみられる。リオはパレードで有名だが、10万人単位の参加者をもつブロッコもある。近年サンパウロで色んな集団が発生し、サンパウロ市はCarnaval de Ruaとの名称で観光名物として認定した。音楽はリオはbatucadaが優勢だがサンパウロの場合、多様性と専門性が見られ、好きなジャンルを楽しめる。例えば、子供向けのブロッコ、インド音楽専門、女性のみの音楽隊、等。

 

Baile de máscara。仮面舞踏会。Baile a fantasia(仮装舞踏会)やcarnaval de salão(サロンのカーニバル)とも呼ばれ、現代のカーニバルの原型とされる。イタリアのヴェネツィアのカーニバルがその一例。ブラジルでは社交サロンや社交クラブなど、閉鎖された場所で行われるが、最近は消滅傾向にあるもよう。音楽はmarchinha de carvanalマルシーニャ・デ・カルナバールが良く演奏されるが1960年代から衰退してきている。その理由の一つが、歌詞が女性蔑視や黒人蔑視やLGBTQIAに差し障ったりなど「政治的適正」に反するモノが多々あるためとされる。

 

『結局、コロナのせいで、ブラジル国民全員「仮面(マスク)あり、舞踏会なし」になってしまったのね。来年はするんですかね。(註4)』


おまけ

Maracatu 。マラカツ(マラカトぅ)はペルナンブッコ州の特有の民踊。他地では見られない、アフリカの文化の影響と宗教色の強いお祭り。カーニバル時期に、色んな在所からマラカツ集団がヘシッフェ市やナザレ・ダ・マッタ市に集まり、踊りを競い合う行事がある。ここはどちらかと言うと見物型のイベント。


 

新型コロナウイルスワクチンとは? 

By: Kazusei Akiyama, M.D.

Hatsuhinode. Osaka. Caju©2021


20212

新型コロナウイルスワクチンとは?

今月もコロナの話です。もうこのコラム、ひとりごとではなく、コロナ解説に変えようかなと思うくらい、毎月コロナコロナですね。何回も言ってますが、100年に一度の人類の危機なので、ずっと話題の中心になる事は仕方がないです。

我々の生活をこれだけ脅かすようになった、疾病を通り越して社会現象といえる、コロナ禍も1年が過ぎたところです。たった1年前は人類は普通に喜怒哀楽に満ちた生活をしており、今は怒哀だけのこんな色んな制限のある生活を強いられるとは誰も思ってなかったですよね。この不自由な生活を終焉させるとされる一縷の望みがワクチンとされ、最近の一番の話題です。コロナワクチンについては四ヶ月前に免疫の話の中で少しひとりごとしました。今回は詳しく解説を試みます。

世界中の生活を止めてしまったコロナ禍なので、とにかく早くワクチンを実用化せよと大号令がかかり、人類史上かってないスピードでコロナウイルスワクチンの開発が進めてこられました。去年の前半では100社以上が開発をスタートし、現時点では臨床試験段階にあるのが25種類、前臨床試験段階にあるのが139種類で、実用化にこぎ着けたのは今のところ一桁台の製品です。ワクチン開発には通常5年や10年といった時間がかかります。それを1年もかけず実用化されたのは従来の有効性や安全性の検証が省略されたからに過ぎません。

『はっきり言って「まあこんなもんで大丈夫だろう。大丈夫だったらいいな。大丈夫でありますように。」程度の検証で認可された製品だな。』

ワクチンを接種する事による問題の一つが、副反応です。つまり、該当する感染を防御するか重症化を防ぐといった効果である主反応以外の作用の事です。副反応は超短期的・短期的にはアレルギー反応や脳神経炎などがあり、長期的にも後期副反応と呼ばれるものもあります。10月にひとりごとした「抗体依存性免疫増強」などは長期的な安全性を検証しないと判明できない重篤な副反応です。危険は想定内だとは認知され、とにかく今回は公衆衛生上緊急性が高いということで、どんどんワクチンが認可されてます。これは純粋に医学的に言うと、大々的な人体実験が行われている事実に該当します。

『一番懸念するのは今まで認可された事がない手法で製造されたワクチンの使用だな。手放しで喜べない。そして、理性的に容認するのと感情的に否定するのとの狭間で揺れる。』

ワクチンを生産するのに一番古い手法は感染症をおこす病原菌を不活性化または弱毒化させ、それを体内に入れ、その抗原に対して免疫反応をおこし、中和抗体ができ、次にその病原菌と接触があっても抗体が無力化して発症しないといった方法です。この方法は二つ問題があります。まず不活性化させる前に病原体を培養しないといけない、つまり生物学的な危険を伴う作業であり、安全に病原体を扱える施設が必要という事。次に、下手をすると、予防すべき感染症になってしまう事です。不活性化を強め過ぎると、病気にはなりませんが、免疫反応があまりおこらない。ので予防効果を強めようと不活性化を弱めると今度は本当に元の感染症になってしまう。不活性化ワクチン・弱毒性ワクチンの一番難しいところはこの兼ね合いですが、古くから使われてきた生産方法なので、これまで数多のヒトに接種した実績があり、安全性に関しては一番知見が多いワクチンです。サンパウロで導入されている「コロナバック」がこのタイプのワクチンです。従来のワクチン政策に沢山使われ、普通の冷蔵で流通が可能な点も利点です。

感染をおこしてしまう問題を回避するのに開発された手法が元の病原体でない生物(大腸菌、酵母など)の遺伝子を組み換え、該当する病原体の特徴であるタンパク質を作らせる方法です。そして作られたタンパク質を接種する、一般的に「組み換えタンパクワクチン」とよばれる製品になります。これだと、病原体の一部の部品(タンパク質)しか接種しないので絶対に元の感染症にはならないのです。アレルギー反応などはおこす可能性はありますが。コロナ用はまだ製品化されて無く、オーストラリアで臨床試験されてます。ブラジルにも日本にもありません。

組み換えタンパクワクチンの発展型というのが「ウイルスベクターワクチン」です。ベクターとは「運び屋」という意味です。これも同じように元の病原体の遺伝子を利用するのですが、病原性のないウイルスにその遺伝子を置き換え、今回の場合はコロナウイルスのタンパク質の合成を誘導します。この病原性は無いが病原体のタンパク質を作るウイルスをヒトに接種すると、それに対する免疫ができる仕組みです。コロナワクチンの場合はアデノウイルスを運び屋に利用します。ブラジル連邦政府が導入を進めているオックスフォード大学・アストラゼネカ系のワクチンやロシアのスプートニクVがこれに該当します。日本でも供給が予定されているようです。

これらのワクチンは既に実績があったり、認可されいるのですが、全く新しい手法のため、喧々諤々と是非が激しいのが「いわゆる遺伝子ワクチン」です。mRNAワクチンとDNAワクチンがありますが、後者はまだ製品化されてません。前者がヨーロッパや北米で大々的に接種が開始されたファイザー社とモデルナ社の製品です。コロナウイルスの抗原タンパク質をつくる遺伝子情報(塩基配列)をヒトに接種し、それがヒトの細胞に取り込まれ、細胞内で抗原タンパクが作られ、それに対し免疫が誘導されるという手法です。ウイルスに感染するとウイルスの遺伝子情報がヒトの細胞の機能を使い、ウイルスタンパクが産生されるのと同等の現象であるとされてます。今までにこのタイプのワクチンが認可そして使用された事がないので、理論的には安全ではあるとされますが、長期的な安全性や効果については未知の製品です。現在の技術では遺伝子情報を作成するのは簡単かつ大量にできるので、開発と生産が容易なのが利点とされてますが、流通にはマイナス75℃やマイナス20℃などの普通のインフラでは不可能な超低温が必要とされ、一端使用温度へ出すと数時間の有効期限しか持たないのも非常に大きな弱点といえるでしょう。日本はこの種類のワクチンを中心に接種政策を行うと発表してますが、ブラジルを含め後進国では一般的な使用はあり得ないと思います。

『ブラジルでは富裕層向けにこのタイプのワクチンを提供するサービスが準備されていると噂があるぞ。』

旧型コロナ感染を含む、呼吸器系の疾患は元々生涯免疫ができるワクチンは今まで製造された事はなく、いずれの新型コロナワクチンを接種して中和免疫ができる効果があっても、あまり長くは持続しないであろと思われます。なので、当分はインフルエンザワクチンのように毎年定期的に接種する必要があるのではないかと考えます。

『半年ごとの接種もありえるのでは?コロナウイルスは変異しやすい。去年は再感染の問題が指摘されていたが、どうやらウイルスが変異してそれに感染するようなのだな。その証拠ともいえるのがブラジルで4月頃一番始めに感染爆発し、一番始めに集団免疫を獲得したとされるアマゾンのマナウス市の先月からの再度感染拡大ではないか?ブラジルで確認されているコロナウイルス変異種はこのアマゾン型である。』

コロナウイルスも変異種がインフルエンザウイルスの様に持続的に出現するのであれば、ワクチンは感染防御にはそれほど役立つ訳ではありませんが、インフルエンザワクチンのように「重篤化」を防ぐ効果は期待できると考えます。筆者はコロナワクチンを接種するべきではないとは思いません。現時点ではB国のように政争のタネにされていたり、C国のように国益のために供給したりしなかったり、J国のように官僚主義のスピード感などで24人の読者様がワクチンにたどり着けるかわかりません。しかし、接種機会があればどうしたいか今から熟考しておくに値すると思います。


テレビ出演 (2021):2021/01/24のビートたけしのTVタックル出演

By: Newsroom CKA


院長秋山は2021年1月24日、テレビ朝日の番組、「ビートたけしのTVタックル」の「感染拡大3カ国ワクチン接種事情」の取材出演しました。ブラジルで開始された新型コロナウィルスのワクチン接種とブラジル由来の変異種がテーマの取材でした。

この動画のURL:https://youtu.be/o9FQSYU2QVc

汚染、感染、伝染のちがいは?

By: Kazusei Akiyama, M.D.

Coffee Cup. São Paulo. Caju©2020


2021年1月

汚染、感染、伝染のちがいは?

謹賀新年。このコラムの24人の読者様には是非今年はよい年でありますように!新語・流行語が「3密」であったように、去年はコロナで振り回された1年でした。この年末年始も感染拡大感染拡大と世間は騒いでいます。そこで気付いたのが、こんなに言われている言葉「感染」ってどういうことか皆解っているのか?です。コロナ対策でああしろこうしろと呼びかけがありますが、以外となんでやっているのか解らない人が多いようなのです。理由がわかれば行動もしやすくなると思いますので、今回は感染について考えてみましょう。

元々、「感染」とは微生物が生体内に侵入し、生体内で定着し、増殖し、寄生になった状態を指します。感染イコール疾病ではありません。つまり、生体にとって利点のある感染もあるわけです。

『最近注目されている腸活、つまり、善玉の腸内菌を育てるのなんかはおこってうれしい感染だな。』

感染が拡大しているということは、市中に感染の元が沢山出回っているということで、その一部が疾病になるので「大変!」になるわけです。つまり、疾病になるリスクが増えると言うことで、厳密には、疾病が増えている状況を表す言葉ではないのです。しかし、一定度増えるので、大変になります。

感染が成立するには「感染源」、「感受性体」、「感染経路」の三要素が必要です。

  • 感染源:感染の原因となる微生物を含むモノ(微生物そのものではありません)
  • 感受性体:感染の原因となる微生物が進入し、増殖する生体
  • 感染経路:微生物が感染源より感受性体に進入する経路

これら三要素は「感染の連鎖」と呼ばれ、この連鎖を断ち切る事が感染管理の原則となります。

『コロナ対策の三密をさける、マスク使用、手洗いは結局感染経路をなくす処置であることがわかる。経路が無くなれば、感染が成立しない。』

感染源は大きく分けて2つに考えます。まず感染者や昆虫などを含む感染動物が生産するモノ:排泄物、嘔吐物、血液、唾液、粘液、精液など。次にその感染者や動物が触れた物体や食品、これを汚染物質や汚染物体と呼びます。感染源の中には病原性微生物と呼ばれる病原体が入っています。これらは次の5種類に大きく分類(これら以外にもありますが、狭義なので、実際はこれら5分類で考えていただいて問題ないです)されます:

  • ウイルス:生物学的存在と呼ばれる。ウイルスは細胞を構成単位とせず、自己増殖はできないが、遺伝子を有するという、非生物・生物両方の特性を持っている。例:麻疹ウイルス。
  • 細菌(バクテリア):細胞膜を持つ原核生物。例:溶連菌。
  • カビ(菌類):菌糸と呼ばれる糸状の細胞からなり、胞子によって増殖する菌類のこと。例:真菌(カンジダ菌)。
  • 原虫:単細胞生物的で、真核細胞であり、細菌類ではなく、菌糸のような構造を持たず、つまり菌類とは思われない微生物。例:マラリア原虫。
  • プリオン:タンパク質から成る感染性因子。厳密に言えば生物では無く、生物の産生物質。

病原体は次の特徴があります:

  • 肉眼や外観から見えない。
  • 発病の責任因子である、つまり病原体が作用していると発症し、作用していないと発症しない。
  • 伝染性がある、つまり病気になったヒトから接触や空気などを介して他のヒトに伝達する。
  • 増殖性がある、つまり伝染によって患者が増え、病原体自体も増える。
  • 可搬性がある、つまり発症しているヒトが移動して、新たな場所で伝染病が発生する。

『これらの特徴にも、コロナに対する対策のヒントがいっぱい詰まってますね。』

感染経路は大きく分けて2つあります。まず「垂直感染」。これは母子感染とも呼ばれ、名称のとおり、親が持っている感染症が直接子孫に伝染する状況を指します。例:胎内感染すると先天性疾患を持つ赤ちゃんが生まれる(可能性がある)風疹ウイルス。垂直感染以外のものを「水平感染」と呼びます。非接触型と接触型があり、前者が「飛沫感染」と「空気感染」、後者が「接触感染」と「媒介物感染」になります。

  • 空気感染:病原体を含む直径0.005mm以下の粒子を吸い込み、感染。例:結核、麻疹。
  • 飛沫感染:病原体を含む直径0.005mm以上の粒子を吸い込み、感染。例:インフルエンザ、新型コロナ
  • 接触感染:感染源に直接接触して感染。例:破傷風、梅毒。
  • 媒介物感染:汚染された水、食品、血液、昆虫などを介して感染。例:黄熱、コレラ。

『ここにきて「汚染」と言う言葉がでてきた。つまり、病原体を含有するモノ(や環境)であって、危険な状態ではあるが、汚染自体そのものだけでは感染が成立しないことがわかる。』

感染が成立するとどうなるかというと、必ずしも病気になるわけではありません。しかし宿主に病気が生じればr「感染症」と呼ばれるようになります。さらに、宿主に症状が出る場合、「顕性感染」と分類されます。問題は「不顕性感染」です。これは細菌やウイルスなど病原体の感染を受けたにもかかわらず,感染症状を発症していない状態を指します。感染症状は抗体陽性や遅延型過敏反応などで確認できます。一般的には感染が成立しても必ず発症しなく,大部分がこの不顕性感染となるのですが、不顕性感染の人はしばしば保菌者(キャリア)となり,病原体を排泄し感染源となる可能性が高いので疫学上問題となります。

『キャリアはコロナ禍の「無症状感染者」と呼ばれる人達の事だな。』

感受性体は我々ヒトの場合は「免疫機能」を持っているので、病原体が進入しても、必然的に増殖できません。また、ヒトは学習能力があるので、感染の連鎖を断ち切る方法を訓練出来るはずです。しかし体力がない高齢者や既往歴のある方が今回のコロナも含め、感染症の犠牲(重症化・重篤化)になりやすいのは、免疫機能が低下しているからです。また、自身で免疫機能を低下する事もあります。一番の例が減量ダイエットで、生命を維持するために適切な食事をしない事ですね。感染の種類に「日和見感染」がありますが、これは従来病原性が低い病原体が宿主の抵抗力低下に伴い感染症に展開する状況です。感受性体側の我々ヒトは免疫不全にならないように生活する必要があるわけです。

『ワクチンは感受性体側の防御力を増す方法だな。』


おまけ

感染と関係する用語

  • 汚染:病原体を含有するモノや環境、病原体が侵入する前の状況
  • 感染:一人の宿主が対象、病原体と宿主の関係
  • 伝染:二人の宿主が対象、片方からもう片方に感染。
  • 流行:複数の宿主の間でおける伝染

 

暑かったらクーラーつけたいですよね。

By: Kazusei Akiyama, M.D.

CB1300SF Red&Black. SP-063 Road. Caju©2014


2020年11月

暑かったらクーラーつけたいですよね。

今月のひとりごとはどちらかと言うと24人の読者様のうち、ブラジルまたは南半球におられる方むけです。題名からも判明する様に、これから暑くなる季節と関係する話です。日本など、北半球で過ごされた方は、もう既に夏が過ぎた場合はどうだったか体験を共有していただけたら嬉しいです。リオはともかく、サンパウロは元々夏期は乾燥していて暑くても気温が32度くらいまでで、日陰に入れば過ごしやすい所でした(註1)。しかし、近年の地球規模の気象変動のためか、当地でも気候が変わってしまい、夏は高温多湿になってしまいました。そのため、数十年前までは皆無であったエアコンの普及が目につきます。ブラジルでエアコンと言えば、リオを連想したものです。熱帯地方の海辺の街のため、高温多湿で当たり前です。市内に走っているバスはキンキンに冷房が効いてます。それが今年の夏は過去形になると発表されてます。理由はコロナ対策でバスなどの公共交通機関は窓を開けて走り、エアコンの使用は禁止になったようです(註2)。この措置は閉めきった場所で密にならないようにするのもありますが、実はコロナ禍においてはエアコンは問題ありなのです。

  • 註1:その気候が筆者がサンパウロに住んでいる大きな理由でした。
  • 註2:窓が開かないバスなどもあったはずですが、その場合どうするんですかね?

コロナ対策をおさらいしてみると、頻繁に手洗い、マスク使用、3密を避ける、そして感染リスクを高めやすい行動を避ける(一覧)があります。この内の「3密を避ける」に、「換気する」があります。コロナウィルスは飛沫感染するので、ウイルスを含んだ飛沫が浮遊している空気を除いてしまいたいので換気する訳です。厳密に言えば、外部と遮断されてまったく一人でいるのであれば、換気なしの密室でも問題ないのですが、実際はそうはいかないので新しい空気の入れ換えは必要です。入れ替えというより、排気が重要です。皆以外と錯覚しているのが、エアコンで換気できているという事です。できるモデルもありますが、殆どは換気しません。一般的に家庭で使われるエアコンは室外機と室内機があり、冷房の場合、前者で熱を放出し、冷たくなった冷媒ガスを後者に送り(註3)、室内機を冷やし、後者はその冷えた空気を室内に循環させています。したがって、エアコンを使うと、実際は室内の空気をかき混ぜているだけで、換気は行われません。

  • 註3:厳密にいえば、冷媒ガスを気体にして送る。

『この様な環境で、飛沫が浮遊すると、エアコンに吸い込まれ、部屋中に広がっていく。中国ではレストランでエアコンが飛沫を拡散して集団感染がおこった報告が今回取り上げている問題の良い例だな(註4)。2月に日本で大騒ぎになった豪華客船の集団感染も空調システムを介した可能性が大きい。ウイルスは飛ぶだけではなく、室内機に付着し、一定時間活性を保つので貯留されてしまい、感染機会が増えるのだな。新型コロナウイルスは低温に強いし。なので、室内の空気を排出せよと言われるのです。』

エアコンつけないと熱中症で死ぬような環境になってきましたので、では暑い中、どの様に換気するのか?窓やドアを開けて、空気の通り道を作らないと換気になりません。窓が1ヶ所しかないなど通り道が作れない場合は、扇風機やサーキュレータで強制排気します。部屋の中の空気をかき混ぜるのではなく、窓に向かって風を送るようにします。首振りはしません。そしてエアコンは止めません。エアコンは電源を入れて立ち上がる時に一番電力が必要なので、換気の度に止めたりするとかえって電気を使います。換気のタイミングはこまめにするほうが効果的です。つまり、1時間に1回15分の換気より、5分3回のほうがいいです。台所やトイレの換気扇をつけっぱなしにしておくのはどうか?トイレのは容量不足だと思われます。台所の換気扇はそれなりに排気能力がありますが、新しい空気が入るようにしないと効果ありません。可能であれば、空気の通り道を作る方法が一番効果的と考えます。

エアコンはコロナ禍でこの様な問題がありますが、コロナ以前に病気と関係がある、注意が必要な装置です。空調システムは機能上、ホコリやカビが溜まりやすいものです。一番関連がある病気は「換気装置肺炎」と呼ばれるもので、空調器にカビが増殖し、それを吸入する事で過敏性肺炎が発症します。カビだけではなく、細菌感染症であるレジオネラ菌(註5)による肺炎もあります(註6)。ビルなどの中央式空調は個別式よりメンテナンスが大がかりなので、きちんとしてないため病気と関連しているケースを医療現場でみます。

  • 註5:Legionella pneumophilaなど、レジオネラ属菌。
  • 註6:レジオネラ感染は個別式である家庭内のエアコンでは起こりにくい。ビルなどに使われる熱源機器を一カ所に集中設置したセントラル空調方式で報告されている。

『また、俗に「クーラー病」というのもあるぞ。これは、冷房のため、室外との大きな寒暖差が生まれ、体温をコントロールする自律神経が乱れてしまうためにおきる症状(註7)だな。元々自律神経が失調気味だとなりやすい。筋肉が少ないし、冷え症になりやすい女性の方がかかりやすい。クーラーをいれた部屋で冷たい飲み物もNGだな。』

  • 註7:クーラー病の症状:発熱、吐き気、頭痛、下痢、悪寒、肩こり、鼻炎、喉の痛み、発汗、腹痛、眠気、めまい、足のだるさ、筋肉痛など。

エアコンって何気なく使っているけど、注意と定期的な掃除が必要な装置なのです。換気装置肺炎や換気装置感染症はエアコン以外に加湿器でもおこりますので、2012年9月にひとりごとした「加湿器はこわいぞ!」もあわせてご覧ください。


一覧:コロナ感染リスクを高めやすい行動7類

  • 飲酒を伴う懇親会
  • 大人数や深夜に及ぶ飲食
  • 大人数やマスクなしでの会話
  • 仕事後や休憩時間
  • 集団生活
  • 激しい呼吸を伴う運動
  • 屋外での活動の前後

 

救世物になればよろしいのですが…

By: Kazusei Akiyama, M.D.

Still standing. Osaka. Caju©2019


2020年10月

救世物になればよろしいのですが…

このところ毎月「今月はコロナ関連のひとりごとはしないぞ」と息巻いてるのですが、世の中をすっかり変えてしまった100年に一度といわれる災難なのでどうしても話題の中心になってしまいます。しかたないです。ウィズコロナの今日この頃です。と言うことで、今月は最近問い合わせが多い、「ワクチン」や「免疫」について展開します。

新型コロナウイルスを含め、一般的に感染症というものは、その元になる「病原体」(註1:ウイルス、細菌、カビ、寄生虫、など。)に接触(伝染)する事から始まります。病原体には特徴があり、まずそれから理解する事が大事です。ヒトの例ですと:

  • 肉眼や外観から見えない。
  • 発病の責任因子である、つまり病原体が作用していると発症し、作用していないと発症しない。
  • 伝染性がある、つまり病気になったヒトから接触や空気などを介して他のヒトに伝達する。
  • 増殖性がある、つまり伝染によって患者が増え、病原体自体も増える。
  • 可搬性がある、つまり発症しているヒトが移動して、新たな場所で伝染病が発生する。

『こうやって病原体の定義を改めて見ると、まさにコロナの世の中そのものだな。新型コロナウイルスは新しく現れた病原体なので、誰も免疫を持っていないし、治療も確立していない。したがって、この「病原体の特徴」をブロックする事を(する事しか)一番始めにされた訳だな。都市封鎖やマスク使用などでヒトからヒトの伝播をなくすしか手が無かった訳だ。』

病原体が現れたら生物が死滅するシナリオでは、現存する生物などいないはずなのですが、いるのはそれらに対する防御があるからです。これがいわゆる広義の「免疫」というものです。生物の長い進化の中で、免疫がすぐれた個体が多く子孫を残した訳です。我々はその子孫なのでしっかりした免疫をもっている事になります(註2)。免疫はそれだけで学問になるほど複雑かつ難解ですが、簡単な説明を試みます(註3)。まず大きく分けて、自然免疫と獲得免疫があります。自然免疫は自分自身ではない細胞の構成物、つまり、異物・病原体に対する防御です。特定の病原体に対してではありません。血液中にある白血球がこの役割をします。簡単にいうと、外部から入ってきた異物を食べて体内から除く方法で、「食細胞」と呼ばれます。感染症になると痰や膿が出ますが、これは病原体を食べた白血球の死骸ですね。異物は「抗原」と呼ばれます。

しかし、自然免疫は感染した細胞内に入ってしまっている抗原や毒性分子には対処できないのです。ここで更に高度な作用機序をもつ「獲得免疫」が出動します。これは特定の抗原に対する作用があり、大きく分けて、「特定の抗体を作る作用」と「感染した細胞を破壊する作用」があります。抗体は産生されると、血流に乗って身体中を巡るので「液性免疫」とも呼ばれます。感染細胞破壊は感染症が終われば必要なくなり、従事するエフェクターT細胞と呼ばれる細胞は消滅しますが、一部がメモリーT細胞と呼ばれる細胞に変化し、体内に残ります。これが「細胞免疫」と呼ばれるものです。細胞免疫は一回目の感染で抗原と接触して得た情報を記憶しているので、次回感染した場合、直ちに反応し、その抗原を退治するのです。但し、細胞免疫は1種類だけの抗原を認識するため、異なる抗原に対して何百万単位の種類の免疫細胞が必要になります。

『体調を整えないと免疫が低下するなどと言われるのは、この「自然免疫」や「獲得免疫」が上手く作動しない事を指すのだな。』

感染症に対する防御は投薬で治療するといった手がありますが、抗生剤を始め、あらゆる薬物は病原体をすべて完全に死滅(あるいは異物をすべて完全に除去)させる訳ではありません。ある程度減少させたり不活性化させたりはしますが、最終的には体内の免疫が作動しないと感染症は終息しません。なので、投薬するにしても、免疫も作用するようにしないとダメです(註4)。事前に細胞免疫が無い場合、ワクチンを使用します。ワクチンによる予防接種は、人為的に病原体と接触し、免疫を獲得する方法です。新型コロナウイルスの場合、新規に現れた病原体なので、「運悪く」早い時点で感染した方以外はだれも免疫をもっていない訳です。そこで、今世界中で最も望まれているのが「新型コロナワクチンを!」でしょう。

  • 註4:感染症の治療に免疫抑制作用があるステロイド剤を使う事があるが、やり過ぎると治療が上手くいかない。

先月のひとりごとでワクチンにも触れたように、現在、数ヶ月後に使用可能な製品が出てくると思われます。これを心待ちにしている人達が多いのは承知してますが、残念な事にここにきて心配な事柄が判明してきました。接種により有効な抗体はできるのですが、どうやらコロナウイルスに対する抗体は短時間で消滅してしまう可能性が大変大きいようです。さらにやっかいなのが、「再感染」の症例が報告されてきた事です。抗体が減ったため再感染するのも困りますが、その再感染により感染症が重篤化する可能性があるからです。「抗体依存性免疫増強」という状況がそれです。

獲得免疫の産物として抗体がありますが、実はすべての抗体が有用である訳ではないのです。抗体は大きく3種類に分けられます。病原体をブロックして感染症を発症させない「中和抗体」がいわゆる「善玉抗体」であり、皆これを期待するし、抗体と言えばこのタイプの事と思うのです。例は麻疹の抗体です。一旦できると、一生効果があります。次に、「感染抗体」があり、これはブロックもしないが悪さもしない、「感染した証拠」になるだけの抗体です。例はエイズのHIVの抗体です。そして問題が「感染増強抗体」、俗に「悪玉抗体」と呼ばれるタイプです。例はデング熱の抗体です。抗体依存性免疫増強は過去の感染やワクチンによって獲得した抗体がワクチンの対象となったウイルスに感染した時、または過去のウイルスに似たようなウイルスに感染したときにその抗体が生体に悪い作用を及ぼしてしまう状況です。以前の”情報”に基づいた抗体はウイルスに結合するのですが、中和しなく、「免疫複合体」とよばれるモノになり、自然免疫などの細胞に吸着しやすくなり、さらにウイルスの侵入門戸を広げてしまう事になるのです。

『新型コロナウイルスの再感染がこの作用機序で起こっている事実は現時点で認められていない。しかし、既に変異した新型コロナウイルスが何種類かある(註5)上、再感染は前回感染のウイルスの型と異なるとの報告が多くを占めるので、今後の検証が必要だな。』

この様な事情のため、救世物になる新型コロナワクチン、重篤化の原因になるかもしれないので手放しで喜べないです。ごめんなさい…

  • 註5:武漢で発生したウイルスは、日本や東南アジア、オセアニアに伝播したモノは弱毒した変性とされ、ヨーロッパ経由で米州や中東、南アジアに伝播したモノは強毒化していると、分類されている。S型、K型、G型と呼ばれる新型コロナウィルスの変異。

ウィズコロナの正常とは?

By: Kazusei Akiyama, M.D.

660cc cars. Osaka. Caju©2020


2020年9月

ウィズコロナの正常とは?

当地ではコロナ禍も若干落ち着いてきたようですが、このコラムの24人の読者様は皆様お元気でいらっしゃいますか。今年の3月以来、日本へ退避された方が大勢いらっしゃるので、ネットで閲覧できなければ、現地には2~3人くらいしか読者様残っておられない様な感じです。サンパウロでは8月中旬より、コロナによる死者がゼロ/日になるなど、隔離緩和されても感染拡大がストップした実感があります。しかし、世界的に見ると、コロナ禍が収束するのはまだ一年以上かかるのではないでしょうか?確実にコロナに打ち勝つのにはワクチンが必要です。現在、世界中で124社がワクチンを開発しており、その内10社程度がヒトでの臨床試験に入ってます(註1)。すでにロシア製が使用認可を受けてますね。ワクチンができても、それで大丈夫とは言えません(註2)。どんなワクチンでも同じですが、開発時の3大課題が①安全性、②予防に有効な抗体ができるか、③有効な抗体の持続期間はどれくらいか、です。①と②は年内に答えが出ても、③は実際時間が経ってみないとわからないので推測しかできません(註3)。

  • 註1:その内、4社がブラジルでも臨床試験を進めてます。ブラジルはCOVID-19が多いので、ワクチンの試験をするのにとても向いているので、今後当地での臨床試験は増えると思われます。
  • 註2:ワクチンを使用して病気にならないか、副作用は無いか、毒性はないか、等。
  • 註3:いくら安全であり、有効な免疫ができても、その免疫が数ヶ月しか持続しなかったら、ワクチンの意味ないですね。

この様な状況の世の中なので、日本では「外出自粛」と呼ばれる隔離生活をいつまでもできる訳がありません。したがって、「共存するしかない」ので「ウィズコロナ」といった概念が浸透してきてます。先月ここで書いた「新しい生活様式」でコロナウィルスと共存するぞ、といった事ですね。この新しい生活様式は純粋に疫学的に考えると、先月の ”単なる「感染症対策として」普段しなかった行動を生活に取り入れるだけの問題” だと思いますが、人生を変えてしまうような状況なので、対応性は各個人や集団、民族によって違いが出てきます。今回はこのウィズコロナの「新しい正常」をどうするか考えていただくのに筆者の周りで実際おこった二つの出来事を展開します。

ニューノーマルだな』

❶ 規制の一つに飲食店の営業時間の短縮があります。サンパウロ市では先程までは17時までの開店しか認められなかったのが、22時まで営業しても良いと言う事になりました。「ようやく外出して夕食に出かけられる」事になった訳ですが、皆様ご存じのように、サンパウロ市の現地人の夕食設定は夜9時頃からが習慣になってます。

『9時に行っても、10時に閉まってしまうの?』

そこで、新しい正常ではどうしたら良いのでしょうか?

a) 22時に閉まるのであれば、いつもより早いけど19時に行って、夕食を楽しむ。

b) 外食したいけど、21時開始は譲れない。22時に閉まるのであれば、出かけない。

c) どのみち外食は危険と思うので、家で自炊(またはデリバリー)する。

❷ 新しい生活様式の重要事項の一つが密を避けるです。当地の中産階級以上では女中を使う事が普通ですが、社会的に下層の人達がそのような仕事につきます。住んでいる所は密になっている場合が多いし、密になりやすい公共交通機関を利用する事がほとんどです。雇い主よりコロナ感染する可能性が高い人達と言う事になり、その人達と接すると感染リスクが増えます。

『実際サンパウロ市の疫学調査で、社会の下層部は上層部に比べ、コロナ罹患の確率は3倍であると結果がでている。』

そこで、新しい正常ではどうしたら良いのでしょうか?

a) 給金を提供し続けても女中業をしている人を本人の家から出さないようにする。

b) 女中業をしている人を雇い主の家から出さないようにする。

c) 女中の使用そのものを止める。

この2例を周りの人達に尋ねてみたところ、日本人とブラジル人では反応が違います。リアル2~3人、バーチャル24人の読者様はどうされますか?