ムカムカ、ああ、ムカつく

By: Kazusei Akiyama, M.D.

Food series: Unigunkan. Iwaya. Caju©2026


2026年03月

ムカムカ、ああ、ムカつく

最近、妙に「ムカつく」ことが増えた気がします。

正確に言うと、ムカつく対象がどんどん増殖しているように感じます。

たとえば、ニュースを見ていると。

「〇〇が差別だ」「△△は人権侵害」「□□は環境破壊」と、

毎日毎日、誰かが誰かを糾弾しています。

正義の旗を掲げて叫ぶ声が大きければ大きいほど、その裏に計算が見え隠れして、ぞわっとします。 本気で怒っている人もいるのでしょうが、「正義」やポリコレ(註1)を振りかざすことで得られる視聴率、いいね数、寄付金、  収益化、政治的工作……そういうものが透けて見えると、  途端に冷めてしまいます。

  • 註1:ポリコレ(ポリティカル・コレクトネス、政治的適正)とは、人種、性別、宗教、性的指向、障害の有無などに基づく偏見や差別を防ぐため、中立的な表現や行動を求める考え方です。誰もが排除されない社会を目指し、言葉の言い換えやメディアの配慮などで活用されていますが、行き過ぎているので「表現の自由」や「創作の多様性」を狭めているという議論があります。

『あー、またか。ムカムカ。』

ブラジルに住んでいると、それら以外にももっと直接的にムカつく場面が多いです。 信号無視のバイクで轢かれそうになる。 横断歩道で歩行者が待っているのに、車はクラクションを鳴らして威嚇します。  歩行者には赤信号になっているのに道を渡る権利を執行する。スーパーのレジが携帯電話でメールしながら会計して失敗する。どれも「自分が優先」という空気が濃厚で、「いや、規則というものがあるでしょう」と口に出したくなります。でも言わない。言ったら面倒なことになるからでしょ?

日本では「空気を読む」のが当たり前です。ブラジルでは「空気を読む」より「自分が他人より優位に立つのが良い」方が強い文化と言えるでしょう。 どっちも極端になると息苦しいです。 日本は同調圧力で押し潰され、ブラジルは自己主張の暴力で押し潰されそうになります。結局、どっちも「ムカつく」。

そして一番ムカつくのは、自分自身かもしれません。こういう場面で「まぁいいか」と流してしまう自分が。本当は「それは違う」と声を上げたいのに、「面倒くさい」「どうせ変わらない」「自分が損するだけ」と、心のどこかで諦めている自分が。「結局、ムカついてるのは社会じゃなくて、自分の弱さか。」と考えるのは日本人的な捉え方ではないですかね?

ブラジル人的に捉えると、一番ムカつくのは、狭く言うと回りの人達、広く言うと社会が悪いから。自分の権利や主張を無視しやがる。本当は「上手く立ち回った」と自身を褒めて優越感に浸りたいのに「ヤバかった」「下手をこいた」と、心のどこかで正しくない事をしていると自覚している。それで一番ムカつくのは、自分自身かもしれません。

今の社会情勢を見ていると、みんなが「正義」を叫びすぎて、本当の不条理や理不尽が埋もれてしまっている気がします。声の大きい者が正義を独占し、静かに耐えている人たちの声は届かない。 そしてその静かな人たちの中に、実は一番傷ついている人がたくさんいます。また、沢山の人達はソーシャルネットワークで自己肯定感を満たすため優位の競い合いをして自己否定感満載になってムカつく。

でもそのムカつきをどこにぶつければいいのか、分かりません。 このコラムの25人の読者様はどうしたら良いか分かりますか?

『ムカつくって、本当はこのどうしようもない世の中で生きている自分の中の矛盾や無力に一番イラついているだけなのかもしれないな。』

「ムカつく」という言葉、日常では怒りや苛立ちを表しますが、実は「nausea(吐き気)」という医学用語と深くつながっています。英語の「nauseous」は「吐き気がする」だけでなく「嫌悪感を催す」という意味も持ちます。日本語の「ムカムカする」「胸がむかむかする」も同じルートで、「ムカムカする」は、怒りや苛立ちで胸がざわつく感情を表す擬音語です。元々は胃の不快感・吐き気を表す「むかむか」が転じて、心理的な嫌悪や怒りまで広がりました。「胸がむかむかする」は特に、胸のあたりにこみ上げる不快感・イライラを強調します。

吐き気(nausea)は、脳の延髄にある嘔吐中枢が刺激されたときに起きます。原因は多岐にわたります。胃腸の炎症、薬剤、妊娠、乗り物酔い、化学療法、脳圧亢進など。でも面白いのは、心理的・感情的な刺激だけで吐き気が起きることです。嫌な臭い、グロい映像、強いストレス、怒り、屈辱感。これらはすべて「化学療法性吐き気」と同じ回路を通ります。

『つまり、ムカつくとは感情が嘔吐中枢を刺激している、と言っても過言ではない。』

生理学的に言うと、延髄の化学受容器引金帯(かがくじゅようきひきがねたいCTZ:Chemoreceptor Trigger Zone)は、血液や脳脊髄液中の有害物質を感知するセンサーです。ここにセロトニン、ドーパミン、ヒスタミン、アセチルコリンなどの神経伝達物質が過剰に作用すると、嘔吐反射が起動します。怒りや嫌悪の感情は、前頭前野や扁桃体から視床下部を経由して延髄に信号を送り、そのCTZを活性化させます。つまり「ムカつく」は脳内で本物の「毒」を検知したときと同じ反応なのです。

臨床でよく見るのは、ストレス性の慢性吐き気です。患者さんが「最近ずっと胸がむかむかして食欲がない」と訴えます。検査では異常なし。内視鏡も正常。ところが話を聞くと、上司のパワハラ、家族との不仲、会社の業績圧力……。よろしくない感情が持続的にCTZを刺激し続けています。こういうケースでは、抗不安薬や5-HT3受容体拮抗薬(制吐剤)が意外と効くことがあります。脳が「毒だ!」と勘違いしているのを、薬で少し抑えてあげるわけです。

ブラジルでは「enjoo(エンジョーオ)」という言葉が吐き気と嫌悪の両方をカバーします。カーニバルで飲み過ぎて「enjoado」(吐きそう)になるのも、腐敗政治を見て「estou enjoado dessa política(この政治にうんざりだ)」と言うのも、同じ単語。言葉が感情と身体を直結させている証拠です。

『結局、ムカつくというのは、脳が「これは体に悪いぞ」と警告を発している原始的な防衛反応なのだな。』

現代社会はその警告が多すぎます。SNSのヘイト、ニュースの惨状、日常の理不尽。脳のCTZは常にオーバーヒート気味です。結果、慢性的な「ムカつき吐き気」が蔓延しています。胸がむかむかするのは怒りかもしれないし、脳が必死に「逃げろ」と叫んでいるサインかもしれません。吐き気止めを飲む前に、一度深呼吸して「これは本当に毒か?」「何の毒か?」と自分に問いかけてみるのも一手だと思います。医学的には、自律神経の交感神経優位状態で胃腸の運動が乱れ、実際に軽い吐き気や胸焼けを伴うことがあります。ストレスが延髄の嘔吐中枢を刺激し、「毒だ!」という原始的な警報が感情と身体の両方で鳴っている状態です。

『ムカムカ=脳と胃が同時に「これはヤバい」と叫んでいる、ということですね。だから怒りが頂点に達すると本当に吐きそうになります。感情と身体は、思ったより密接につながっているのだ。』

ああ、ムカつく。

このムカつきが、単なる苛立ちなのか、体からの警告なのか、それとも自分の弱さへの自己嫌悪なのか、自己否定されたからなのか……。

いずれにせよ、吐き出さないと溜まる一方です。  本当に毒を飲んでしまった場合、折角生物の進化の時点でそれを吐く機能が付いたのでもあるし。無理せず、我慢せずゲロしましょう。


しっかり機能しないから機能性?

By: Kazusei Akiyama, M.D.

Big city at sunset. São Paulo. Caju©2019.


2025年12月

しっかり機能しないから機能性?

このコラムの25人の患者様は「機能性医学」て聞いた事ありますか?ポルトガル語でmedicina funcional、英語でfunctional medicineです。名称から見ると、なんか「普通」とか「一般」の「医学」よりスゴイように思えますね。辞書によると、「機能(function)」とは「体や機械、組織などの中で、あるものがその働きを十分に示す事。またはその働き。活動できる能力、作用。」と説明されてます。どうしてこんな話になっているかと言うと、先日診療所の患者さんが機能性医学を展開する皮膚科へ行ったら山のように血液検査指示が出たので、筆者の意見を求められました。恥ずかしい事ながら、「へ?」になってしまいました。今までなんとなく機能性医学という言葉は聞いた事があったのですが、注意した事が無かったのです。というのも、医科学には「機能不全(dysfunction)」という概念があり、生体の機能が正常に作動していない状態であり、体調不良や病気を引き起こす要因の一つです。医師としての筆者の頭の中では医療で生体の機能を正常にもどす事そのものを医学(狭義では医行為)であるので、わざわざ機能性と標榜する必要あるんか?がそれまでの知識でした。医療系の仕事では他に機能性栄養学とか機能性リハビリテーションといった言葉も耳に入ってはきてたけど最近何事にでもやたらと形容詞を付けるのが一層上等といった流れの内だろうと思ってました。画家<女性画家<レスビアン女性画家<オーバーサイズ・レスビアン女性画家のようにね。

そこで、これは一体どういう事なのか調査してみました。機能性医学とは、患者中心の個別化医療アプローチであり、遺伝的・環境的・ライフスタイル要因を詳細に評価し、慢性疾患の根本原因となっている生体システムの機能不全を特定し、治療することを目的とする医療行為であるそうです。

『これって、別に「正常な医療行為であるべき姿」ではないんかい。筆者の診療所での医療姿勢だけど。漢方医学をやっていると、自然にこの姿になるのだな。』

この様な医療姿勢をわざわざ提言するという事は反対に現代一般的に行われている医療行為が「そうではない」という意味であろうし、どうやら最近のトレンドになっているようなのでこの機会に少しお勉強してみました。結論から言うと、日本でもブラジルでも行われている通常の医療は現代の医療ニーズに応えられない部分が多々あるのが出現の根本的な原因だと思われます。生活習慣病、自己免疫疾患、複雑な疼痛症候群といった多因子性の慢性疾患の爆発的な増加は、単一の原因に単一の薬を処方する標準化された通常のアプローチでは不十分であるのです。複雑な慢性疾患の解明と管理が求められる場面があるわけですね。そこで、従来の医療が疾患を臓器や専門分野で区切って捉えるのに対し、身体を生体システムの複雑なネットワークとして捉え、システム間の機能不全を探る方法が提唱されました。このシステム生物学(Systems Biology)的視点は、同化・異化、防御・修復、エネルギー生成、輸送、コミュニケーション、構造統合といった身体の主要な機能をバランスの取れた状態で維持することを目指したのを機能性医学と命名されたのです。

1990年代より「非恒常的医療」が医療業界に認知されるようになってます。名称のとおり、これは十把一絡げの分類の仕方でしっかりと体系化された学問である東洋医学やインドのアユルベーダ医学のような伝統医学も「色彩療法(註1)」とか「波動療法(註2)」のような科学的とは言いがたい”治療法”も含まれます(註3)。現代のいわゆる西洋医学は科学的である、であるべき、でないとダメといった考え方が主流なので、機能性医学も科学的な包装があるようです。個人の遺伝的、環境的、およびライフスタイルの要因を詳細に評価し、慢性疾患の根本原因となっている複雑な相互作用を特定することに重点を置いた、個別化された患者中心のアプローチであり、栄養学、生化学、ゲノミクスの進歩を取り入れ、個人の生化学的特異性に基づいた、より科学的かつ個別化された治療モデルであると定義されます。

  • 註1. 色水治療や色光療法とも呼ばれる。特定の色や色光がヒトの身体的および精神的な健康に影響をあたえるという考えに基づいた”代替医療”。
  • 註2. ダウジング(dowsing)とも呼ばれる。人間が潜在的に持つ目に見えない放射線や波動の不均衡を感知し、健康状態を評価、調整する方法 。
  • 註3.例えば、虹の7色を分類する時、赤色と非赤色の2分類にするようなものです。全部ごちゃまぜ。

このアプローチは、東洋の伝統的な医療体系、特に日本の漢方医学が古くから実践してきた「人を診る医療」の哲学と、多くの共通点を持ってます。機能性医学と漢方医学は、その成立基盤こそ大きく異なりますが、患者を全体として捉えるホリスティックな哲学において深く類似しています。つまり、類似性と融合性がある”医学”と言えるのではないかと思います。

  • •詳細な問診と全身の観察: 機能性医学の詳細な生活習慣・環境問診は、漢方医学の問診や、診察室に入った瞬間から始まる顔色、動作、体型を観察する「望診」と同様に、患者の全体像を把握するために欠かせません。
  • •個別化: 漢方医学の「証」の決定は、機能性医学が目指す「生化学的特異性」の特定とパラレルです。同じ疾患名であっても、患者の証が異なれば処方される漢方薬が異なるように、機能性医学でも根本原因が異なれば栄養介入やサプリメントプロトコルが異なります。
  • •根治療法: 漢方医学には、表面的な症状を抑える「標治」と、体質そのものや根本原因を治す「本治」の概念がありますが、機能性医学の目標はまさにこの本治に相当します。
  • •ライフスタイルの重視: 食事、休息、運動による健康維持の知恵である漢方医学の「養生論」は、機能性医学の治療の柱である栄養医学、運動、睡眠、ストレス管理といったライフスタイルへの介入と本質的に同一です。漢方で言われる五臓や季節に合わせた食事や生活の提案は、機能性医学の食事指導において、その土地の伝統的な知恵として具体的に統合され得ます。

もちろん相違点はあります。診断方法と治療方法が大きく異なります。

  • •診断ツール: 漢方医学が五感を主とする四診と呼ばれる定性的な診断に頼るのに対し、機能性医学は定量的な最新のラボ検査に大きく依存します。機能性医学は、生化学的なデータを用いて、漢方が「気虚」「瘀血」といった概念で表現する体内の不均衡を、「ミトコンドリア機能不全」「リーキーガット(腸管透過性の亢進)」といった西洋医学的な用語で具体的に言語化・数値化しようとします。
  • •漢方薬の治療薬としての視点:複数の生薬の組み合わせである方剤が「証」に基づいて選択され、生体システムの全体的なバランスを穏やかに調整します。
  • •機能性医学的介入の治療薬: 高用量のビタミン、ミネラルなどの栄養素、ハーブエキス、プロバイオティクスなどが、特定された生化学的経路の機能不全をターゲットに個別化して使用されます。

この両アプローチは、特に慢性疾患において、漢方薬で全身の「証」を整えつつ、機能性医学的検査で特定された具体的な分子レベルの欠損や機能不全に高精度な栄養介入を行うという「統合医療(Integrative Medicine, Integrative Health Practice)」の形で非常に高い相乗効果を発揮できる潜在性があります。

症状を一時的に抑えるのではなく、腸内環境異常、ミトコンドリア機能不全、栄養素欠乏、慢性炎症のような疾患の真の根本原因を特定し、それを是正するための治療戦略を提供できます。これにより、患者は薬物療法に依存することなく、自身の自己治癒力を最大限に引き出し、より質の高い生活を送ることが可能になります。また、ライフスタイルへの集中的な介入は、患者自身が健康管理に積極的に関与するエンパワーメントを促進し、長期的な予防医学の実現に貢献します。複雑な多因子性疾患や、従来の標準治療で十分な効果が得られなかった患者にとって、新たな治療の選択肢を提供できる点が非常に大きな価値を持ちます。

一方で、機能性医学にはいくつかの課題と欠点が存在します。最も大きな欠点は、費用負担が大きいことです。最先端の機能性検査(註4)や、個別化された高用量サプリメントの多くが医療保険の適用外となるため、患者の経済的負担が高額になりがちです。また、このアプローチは、患者の食生活や生活習慣の抜本的な見直しを要求するため、治療の成功には患者側の高いコミットメント(努力と継続性)が不可欠であり、途中で離脱するケースもあります。さらに、この分野はまだ発展途上にあり、全ての介入やプロトコルについて大規模なランダム化比較試験(註5)のデータが十分とは言えないため、科学的根拠の強固さという点で、従来の標準医療と比較されることがあります。

『機能性医学は、現代医療の新たなパラダイム(註6)を提供するとまで言われている。急性期医療や救急医療における西洋医学の有効性は揺るがないが、機能性医学的アプローチは慢性疾患の予防と管理、そして健康の最適化という点で、従来の医療の盲点を補完する高い有用性を持っている可能性がある。生化学的根拠に基づく個別化と、漢方医学が長年培ってきた全身のバランスを重視する哲学を融合させることで、21世紀の医療において重要な役割を果たすと期待したい。パラダイムシフト。』

日本でも導入されてるようですが、ブラジルはこの分野の世界トップクラスで、機能性医学を専門とするクリニックや、栄養士との連携が非常に発達して機能性栄養学(Nutrição Funcional)が特に成熟している国の一つであるそうです。なので、これからも我々の生活の中で話題にあがりそうですね。2024年5月のひとりごと、「サプリ大好きな日本人へ」に機能性表示食品について展開してますのでこの機会に読み返してみていただければ幸いです。

『結局、機能性医学って「ちゃんと身体を機能させる医学」ってことだよな。名前はカッコいいけど、やるべきことは昔から変わらない。やるべきことをやらんからこんなふうになるんでしょうが。漢方やってる開業医としては、ちょっとニヤリとしてしまうトレンドでした。』

  • 註5. RCT(Randomized Clinical Trial)とは、被験者を複数のグループに無作為(ランダム)に割り付け、介入の効果を客観的に比較する研究手法。この無作為化により、年齢や性別などの個人の特性がグループ間で偏らないようにし、試験結果が介入によるものだと判断できるよう、科学的根拠レベルが最も高い研究手法の一つとされている。
  • 註6.パラダイムとは、ある時代や分野で支配的になっている「物の見方や捉え方」の枠組みのことです。科学分野の「天動説」から「地動説」への転換のように、時代と共に変化する考え方を指し、この変化は「パラダイムシフト」と呼ばれます。

なんでこんなに目がかすむんや

By: Kazusei Akiyama, M.D.

November rain picture at exibition. São Paulo. Caju©2023


2025年11月

なんでこんなに目がかすむんや

夜、お家に帰ってすぐ「あー今日の酒はいつもより酔うなあ。なんかいつもよりふらふらするぞ。」

帰ってちょっとしてから「ゲロゲロ。ゲロゲロ。あー気分悪い。頭痛いし。横になろう。」

次の朝「あれ、なんかぼやけて見えるな。霧がかかったのか?そうじゃないよな。あったま痛いし。ゲロゲロゲ〜。」

もうちょとしてから「あーしんどい。寒気する。何も見えない。起き上がれないよお。」

さらに数時間後

このコラムの25人の読者様、ここまでみるとどう思われますか?この人、大変な二日酔いになっているなあ、ですよね。確かに酷い二日酔いの症状のようですが、これは「メタノール中毒」の症状です。上出の「さらに数時間後」の「」は昏睡が起こっているか、死亡に至っているかです。現在ブラジル、特にサンパウロではこのような状況が身近に迫っています。

20259月頃からブラジルで発生している酒類へのメタノール混入問題は、深刻な社会問題を引き起こしています。この事件は、主にサンパウロ州を中心に報告されており、偽造されたジン、ウォッカ、ウィスキーなど蒸留酒に工業用メタノールが意図的に混入されたことが原因です。ブラジル国保健省の報告によると、9月以降、217件の疑い例が確認され、そのうち46件がメタノール中毒として確定。死者は少なくとも9人に上る惨事になってます。当初はサンパウロ州で1人の死亡が確認されて特段ニュースにならなかったのが、急速に被害が拡大し、10月に入ってからも新たな死亡例が相次ぎました。被害者は主に低所得層で、価格の安い偽造酒を購入した人々が多かったので、中産階級以上は我知らずを決め込んでいたところ、次第にその周りにも症例が現れ、お洒落なバーやレストランでの販売も影響を受け、業界全体の売上が急落しています。

この事件の背景には、ブラジルのアルコール市場における違法流通の問題があります。メタノールは工業用として安価に入手可能で、アルコール度数を偽って高く見せるために混入されるケースが過去にも散見されましたが、2025年の規模は異例です。メディアの報道では、被害者の家族が「貪欲による殺人」といった様な表現するほど、利益優先の犯罪性が指摘されてます。当局の調査で、特定のブランドの飲料がメタノール(0)で汚染されていることが判明し、全国的な警報が発令されました。パンデミック後の経済回復期に、規制の緩みがこうした違法行為を助長した可能性も指摘されています。また、大規模犯罪組織がマネーロンダリングのため所有しているガソリンスタンドのエタノールに水増し混入するため大量に備蓄していたところ、当局の別件の捜査で水増しが困難になり、あふれた在庫が市中に出回った説もあります。この問題は、公衆衛生の観点からだけでなく、経済や観光にも悪影響を及ぼしており、外国大使館も在ブラジル同胞に対して飲酒注意を呼びかけています。

メタノール中毒の症状は、ギ酸によるミトコンドリア(註1)の電子伝達系阻害と、代謝性アシドーシスが主な原因です。ギ酸は特に視神経や脳の酸素利用を阻害し、細胞死を引き起こします。メタノール中毒は、摂取後数時間から数日で発症する深刻な問題です。主な原因は、飲酒のように経口摂取ですが、皮膚吸収や吸入でも起こり得ます。人体では、肝臓のアルコールデヒドロゲナーゼ酵素によりホルムアルデヒドに、次いでギ酸に代謝されます。このギ酸が酸中毒(アシドーシス)を引き起こし、細胞毒性が高い。特に、視神経や脳にダメージを与え、永久的な障害を残します。

  • 1. ミトコンドリアは細胞内の小器官で、エネルギー(ATP)を生成する「細胞の動力源」。酸素を使って栄養を分解し、代謝や細胞機能を支える。膜構造を持ち、独自のDNAを有する。

症状は摂取量によりますが、初期段階と遅発段階に分かれます。初期は一般的に摂取後6から30時間くらいの時期で、頭痛、めまい、吐き気、腹痛、眠気が現れ、エタノール酔いと似るため大抵見逃されます。遅発ではぼやけ、失明 などの視力障害、呼吸困難、けいれん、昏睡が現れ、重症化すると心停止や呼吸停止に至ります。ギ酸の蓄積がミトコンドリアを阻害し、乳酸アシドーシスを悪化させます。致死量は個人差がありますが、成人で30-60ml(約15-100g)とされ、10mlでも重症化する可能性があります。子供や高齢者はより低量で危険です。治療はエタノール投与やフォメピゾールで代謝を阻害し、透析で除去できますが、初期治療が遅れると予後不良になります。ブラジルの事件では、これらの症状が多発し、失明例も報告されています。

メタノールは、飲用には適さないものの、工業分野で幅広く活用される有用な化合物です。その主な理由は、安価で大量生産可能であり、反応性が高く、多様な派生物を生成できる点にあります。まず、燃料として使用できます(註2)。バイオディーゼルやガソリンの添加剤として、燃焼効率を向上させます。船舶や自動車の代替燃料としても注目されており、クリーンエネルギー移行の一環でメタノール燃料電池が開発されてます。次に、化学原料として重要です。ホルムアルデヒドの原料となり、これを基に樹脂、接着剤、プラスチックが製造されます。例えば、合板や家具の接着剤に欠かせません。酢酸の生産にも用いられ、塗料、溶剤、繊維の原料となります。また、メチルエーテルやメチルアミンなどの誘導体は、農薬や医薬品の合成に不可欠です。人工甘味料の製造にも使用され、人体でそれが代謝されるとメタノールが発生します(註3)。不凍液やウインドシールドウォッシャー液としても一般的で、低温での凍結防止効果が高いのも特徴。さらに、廃水処理での脱窒素剤や、実験室での溶剤として利用されます。世界生産量は年間数億トンに及び、中国や中東が主産地です。

  • 2. 米国のインディカーシリーズの燃料は2005年まで100%メタノールを使用していた。
  • 3.トマトジュースや柑橘類のジュースなど、天然に存在する食品から摂取される量よりも少ないとされているけど

『これらの有用性ゆえに、普段からかなりの量が流通しており、ブラジルの事件のように違法混入が発生可能になるのだな。メタノールはエタノールより安価で入手しやすく、アルコール度数を偽装するために悪用されるのだ。また、今回の事件では、偽造酒を作る時に使用される本物の瓶をメタノールで洗浄した可能性もあげられているな。』

ブラジルのこのメタノール事件、ほんとに怖いですよね。行政の対策として、保健省が10月頭に全国警報を出して、蒸留酒の摂取を控えるよう呼びかけてるけど、それだけじゃ足りないと筆者は思います。もっと抜本的に、供給網の監視を強化して、メタノールの流通を厳格に規制すべきでしょう。保健大臣が「公衆衛生緊急事態」って宣言してるんだから、迅速な通知と対応を義務づける法律改正とか、国際協力で偽造酒の撲滅を目指せばいいのにやりませんな。仕事できない。なので政治的な信頼も揺らいでます。被害が200人超えてるんだから、検査体制の拡充や、バー・レストランへの抜き打ちチェックを増やさないと、経済も打撃受けるだけです。個人レベルでは、まず信頼できる店やブランドだけ買うことでしょう。ラベルをよく見て、異常な安さや臭い、蓋と封印に注意。酒税に関する封があるのを確認するのはもちろんですが、その封自体も偽造されているケースもあるのでなんとも言えないです。新規のボトルをとるでもしないと封印なんか分からないし。「飲む前に少量テストして、異常を感じたらすぐ医療機関へ」と言いたいところですが、メタノールはエタノールに似たアルコール臭の上、混和性が高いのでまず分からないですよ。結局、予防が一番、と最近は皆思うようになっているので外食で飲酒するのが激減しているようです。命を落としますからね。筆者は海外の免税店で購入したお酒を自宅で楽しむ事にしてます。

『現時点でブラジルで飲酒して本稿で書いたような症状があれば、即座に救急外来の受診が必須です。』


0. メタノールは、化学式CH3OHで表される有機化合物で、別名メチルアルコールや木精とも呼ばれる。分子量は32.04 g/molで、常温では無色透明の液体状を呈し、軽く揮発性が高い。沸点は64.7℃、融点は-97.6℃と低温でも液体を保つため、取り扱いが容易だ。密度は約0.792 g/cm³で、水やエタノールと完全に混和する性質を持つ。可燃性が高く、引火点は11℃と低いため、火災のリスクがある。また、エタノール(飲用アルコール)に似た甘いアルコール臭を有するが、毒性が極めて高い点で区別される。化学的には、アルコール類の最も単純な構造を持ち、一価アルコールに分類される。炭素原子が1つで、水酸基(-OH)とメチル基(-CH3)が結合した形だ。工業的には、主に天然ガスや石炭から合成され、一酸化炭素と水素を触媒下で反応させるメタノール合成法が一般的。純度は99%以上のものが市販されており、pHは中性に近いが、水溶液では弱酸性を示す。熱化学的には、燃焼熱が約726 kJ/molで、エネルギー源としても利用される。 


バナナ屋が「カリウム、カリウム!」って叫んでる国

By: Kazusei Akiyama, M.D.

September. Change of seasons. São Paulo. Caju@2020.


2025年8月

バナナ屋が「カリウム、カリウム!」って叫んでる国

どこの国かというと、もちろんブラジルです。サンパウロなど都市部ではおなじみのフェイラ、青空市場(feira livre)では「バナナ屋」というお店が必ず一軒はありますね。他の果物を扱っているお店はあるのですが、バナナだけは専門店です(註1)。店のおやじは「バナナ、バナナ」と売り込んでいるのではなく、大抵、「カリウム、カリウム」(註2)とやっているのを見ます。なぜそうなっているかと言うと、バナナはカリウムが豊富で「カリウム補給に良いぞ!」と叫んでるのです。カリウムが足りなくなると、筋肉痙攣、いわゆる「こむら返り」、脚がつる要因になりますのでブラジルでは健康番組などで「バナナを1日1本食べて、脚つるのを予防しましょう」とやる訳です。

  • 註1. 街の路上で週1回催される青空市場。バナナの他、一般的な専門店はジャガイモ、鶏卵、チーズ、魚、菓子、パステウ(pastel)。
  • 註2. ポル語でカリウムは「potássio」、ポタッシオ。

このコラムの25人の読者様は何故こんな話になっていると訝しがられているのだと思います。筆者が先月甲子園で開催されていた全国高校野球選手権大会を観ていたら、結構選手が脚つって治療受けていたり続行不可で交代になったりしてました。夏の甲子園に出るにはかなり練習したし体力があるであろう高校生でも頻繁に脚つるんだと感心していて、フェイラのバナナ屋を思い出したのです。高校生野球選手のこむら返りはカリウム不足では無いでしょう。しかし、こむら返りは夏の暑い時と冬の寒い時に現れやすいし、丁度日本とブラジルが該当時期なので今月はこのテーマでひとりごとしてみます。

こむら返りは、ふくらはぎなどの筋肉が痙攣、急に強く縮んで痛む状態です。主な原因は、筋肉の疲れ、脱水、電解質(ナトリウムやカリウムなど)の不足、血流の悪さなどです。夏の場合、暑さで汗をかき、水分やミネラルが失われると起こりやすいです。運動中や後に多くみられます。冬の場合は寒さで筋肉が硬くなり、血流が悪くなると発生することが多いです。特に夜寝ている時に起きやすいです。

医学的に言うと、筋痙攣は、主に筋肉の神経筋制御の異常や筋肉自体の生理的状態の変化によって引き起こされます。

  • 神経筋制御の異常:筋肉を動かすための神経細胞の過剰な興奮が関与しています。神経障害(末梢神経、脊髄の障害、薬物による抑制)があると、異常な筋収縮を引き起こす場合があります。
  • 電解質バランスの乱れ:筋収縮は、ナトリウム(Na⁺)、カリウム(K⁺)、カルシウム(Ca²⁺)、マグネシウム(Mg²⁺)などの電解質が重要な役割を果たします。これらの電解質のバランスが崩れると、筋肉の興奮性が変化し、痙攣が誘発されやすくなります。また、脱水(体液量の減少)により、電解質濃度が変化し、筋肉の興奮性が高まります。
  • 筋肉の疲労と代謝異常:筋肉の過剰な使用や疲労は、乳酸やその他の代謝産物の蓄積で筋肉のエネルギー代謝が追いつかず、代謝産物が蓄積すると、神経筋の興奮性が高まります。
  • 血流不足:筋肉への酸素供給が不足すると、筋線維が異常な収縮を起こしやすくなります。
  • 外的要因として考慮しないといけないのは薬剤や疾患による痙攣で、利尿剤、スタチン(高脂血治療薬)、糖尿病、甲状腺疾患などです。

季節ごとの特徴では、夏は運動中や直後に発生する「運動関連筋痙攣(EAMC Exercise Associated Muscle Cramps)」が典型的で、冬は夜間や休息時に発生する「夜間筋痙攣(nocturnal leg cramps)」が典型的、特に高齢者に多くみられます。

『これで、高校生選手と中年以上のこむら返りは原因・要因が違うとわかりますね。』

こむら返りの薬物的治療は基本的に漢方薬である芍薬甘草湯の服用と電解質補正以外、薬物療法の有効性は限定的で、非薬物的治療が推奨されるのが医学の常識です。反対に薬物使用による筋肉痙攣を警戒する事が医療の現場では重要だと考えます。特に高脂血症の治療でスタチン剤、高血圧症の治療で利尿剤など前述の筋肉の生理を変化させる薬物の使用が増えているので注意が必要です(註3)。したがって生活習慣改善や予防が重要になってきます。季節ごとの違いを表にすると次のようになります。

  • 註3. これらのお薬は一度処方されるとご自身で勝手に延々と服用されている方が多いですが、こむら返りのリスク要因である事はあまり理解されていないと思います。

表:こむら返りの夏季と冬季の比較、要因、予防、生活習慣

要因

夏季

冬季

主な誘因

脱水、電解質喪失、筋肉の過剰使用

低温、血流低下、運動不足、筋硬直

発生タイミング

運動中・直後

夜間・休息時

影響する環境

高温多湿

低温乾燥

主な筋群

ふくらはぎ、太もも

ふくらはぎ、足の裏

予防のポイント

水分・電解質補給、適切な運動管理

保温、ストレッチ、適度な運動

重点栄養素

ナトリウム、カリウム、水分

マグネシウム、カルシウム、オメガ3

推奨食品

バナナ、スイカ、トマト、マンゴー、パパイヤ、麦茶、ココナッツウォーター(アグアデココ)、フルーツジュース、アサイー、ブラジルナッツ、カシューナッツ

サツマイモ、ケール、生姜、納豆、豆腐、チーズ、青魚、温かい野菜スープ、テールやフェイジョアーダなど煮込み料理、ブラジルナッツ、カシューナッツ

食事の特徴

水分豊富、消化の良い冷たい食品

体を温める、血流を促す温かい食品

水分摂取の注意

頻繁な(こまめに)水分補給(水分は1日2.5〜3.5リットル(註4))、スポーツドリンク

意識的な水分摂取(水分は1日1.5〜2リットル(註5))、温かい飲み物

環境調整

通気性の良い服装、日陰や扇風機、エアコンで熱中症予防、発汗後のシャワーと着替えを徹底

保温性の高い靴下や長袖(サンパウロは特に夜間、室内を20~22℃に保ち、必要あれば加湿器で乾燥対策、毛布、湯たんぽなどで就寝時の足元保温

睡眠習慣

涼しい寝室、就寝前にココナッツウォーターや水1杯で脱水予防

夜間筋痙攣予防のため、クッションなどを使用し足を軽く上げて寝る、温かい寝具で筋肉の冷え防止

『血行が良くなる、筋硬直を改善するのでマッサージもお薦めです。』

最後に、糖尿病、末梢神経障害、甲状腺疾患などの疾患や利尿剤、スタチン薬剤、神経系用薬(註6)が痙攣の原因でもありうるという事を忘れないでほしいです。生活習慣改善など上記予防策をとってもこむら返りが頻繁に起こる場合は必ず医療機関を受診してください。

  • 註4. 水分量には固形の食品に含まれる水分も合算、食べ物以外に2~3リットル水分を取るのではない。  スポーツドリンクは糖分が多いので注意が必要。
  • 註5. 寒い時期はあまり喉が渇かないので努めて水分補給をする事。
  • 註6. 向精神薬、抗うつ薬、パーキンソン症候群治療薬など。

 

咳が続くから百日咳と呼ばれます。

By: Kazusei Akiyama, M.D.

August. Waning gibbous moon. São Paulo. Caju©2022.


2025年8月

咳が続くから百日咳と呼ばれます。

医療現場での最近の話題は百日咳です。世界的にみて症例が増大している感染症ですが、特に日本のマスゴミで取り上げられる事が多く見られます。邦人患者が多い筆者の診療所では必然的に出てくる話です。しかし「大変だ〜子供が罹ったら死ぬぞ」とパニックばかりが煽られ先走っているように感じるので、正しく百日咳を理解するため今月は純粋な医学解説ひとりごとにします。

百日咳(pertussis, whooping cough, coqueluche (ポル語、コケルッシ))は、Bordetella pertussis(百日咳菌)と呼ばれるグラム陰性桿菌、一種の細菌(バクテリア、ウイルスではない)による急性呼吸器感染症です。この疾患は主に毒素を介した病態を示し、呼吸器上皮細胞への細菌付着と毒素の産生が中心的な役割を果たします。この感染症では免疫力の低い乳幼児で重症化しやすいです。ワクチン接種(DTaPなど)が予防の鍵ですが、免疫の減衰が再流行の原因となっています。診断はPCRや培養で行われ、抗生剤使用の早期治療が重要です。成人の場合、非典型的なことが多く、風邪や咳喘息と誤診されたり症状が軽く見逃されやすいため、感染源となりやすいです。

1. 病原体と感染経路

病原体: Bordetella pertussisは、好気性のグラム陰性コクシバチルスで、ヒトのみに感染する厳密なヒト病原体です。動物や環境リザーバー(註1)は存在しません。細菌は呼吸器粘膜に局在し、血流にはほとんど侵入しません。

感染経路: 主に飛沫感染で、感染者の咳嗽やくしゃみにより菌を含む微小飛沫が空気中に拡散され、易感染者が吸入して感染します。接触感染はまれです。潜伏期は平均7〜10日(最長3週間)で、最も感染力が強いのはカタル期と痙咳期初期です(表を参照)。

  • 註1. リザーバーとは病原微生物が生存し、感染源となりうる場所のこと。例:動物リザーバーの場合、ネッタイシマカ(黄熱の感染源)、環境リザーバーの場合、病室や医療器具(院内感染の感染源)。

2. 感染の段階と臨床的進行

百日咳の病態は、3つの段階に分けられ、各段階で細菌の付着と毒素の影響が症状を引き起こします。全体の病程は通常6〜10週間ですが、合併症により延長されることがあります。

表:感染の段階と臨床的進行

段階

期間

主な病態生理的特徴

臨床症状

カタル期 (Catarrhal phase)

1〜2週間

細菌が気道上皮の線毛細胞に付着し、局所的な炎症を開始。粘液分泌が増加し、初期感染が上気道に限局。

風邪様症状(鼻汁、くしゃみ、低熱、軽い乾性咳嗽)。感染力が最も高い段階

痙咳期 けいがいき (Paroxysmal phase)

1〜6週間

毒素の影響で線毛機能が麻痺し、粘稠な分泌物が蓄積。咳嗽発作が繰り返され、胸腔内圧の上昇により組織損傷が発生。

激しい痙攣性咳嗽(スタカート咳嗽)(註2)、吸気時の「whoop」音(註3)、チアノーゼ(註4)、嘔吐、疲労。乳幼児では無呼吸や窒息が顕著。

回復期 (Convalescent phase)

数週間〜数ヶ月

炎症が徐々に収まり、線毛再生が進むが、残存する刺激で咳嗽が持続。二次感染で再発作可能。

咳嗽の頻度減少だが、残咳が長引く。他の呼吸器感染で再燃しやすい

乳幼児では非典型的な進行(例: 無呼吸、チアノーゼ、徐脈)がみられ、重症化しやすいです。

  • 註2. 短い咳が連続的に起こる状態。
  • 註3. 激しい咳の発作後に、息を吸い込む時に「ヒュー」という笛のような高い音が聞こえる現象。
  • 註4. 皮膚や粘膜が暗紫色になっている状態。酸素濃度の低下の結果。

3. 細菌のメカニズムと毒素

百日咳の病態は、主に毒素媒介性疾患であり、細菌が呼吸器上皮の線毛細胞に付着した後、複数の毒素を産生して宿主の防御機構を回避します。細菌は抗原性成分を介して線毛上皮細胞に付着します。これにより、局所的な炎症と上皮細胞の変性を引き起こします。細菌は肺胞マクロファージ内に存在することもあり、組織侵入を示唆します。付着した細菌は毒素(註5)を産生し、線毛を麻痺させ、粘稠な分泌物の蓄積を招き、咳嗽発作を悪化させます。病理学的には、気管・気管支粘膜の上皮細胞変性(空胞形成、核崩壊、脱落)が主で、鼻咽部にも病変がみられます.

  • 註5. Pertussis toxin (PT): ヒスタミン過敏症やインスリン分泌増加を引き起こし、リンパ球増加を促進しながら化学走性を阻害。宿主防御を回避し、系統的な影響を与える。Tracheal cytotoxin: 線毛上皮細胞を損傷し、粘液線毛クリアランスを障害、炎症を増強する。Adenylate cyclase toxin: 宿主細胞のシグナル伝達を乱し、細菌の生存を助ける。Dermonecrotic toxin: 局所的な組織壊死を誘導する。

4. 宿主の反応と合併症

免疫応答: 細菌付着と毒素により局所炎症が発生し、白血球増加症(特にリンパ球増加)がみられます。リンパ球増加はPertussis toxinの影響で、好中球の化学走性を阻害します。

合併症の病態: 咳嗽による胸腔内圧上昇で、点状出血、結膜下出血、鼻出血が発生。乳幼児では低酸素血症や毒素効果で痙攣、脳症、肺高血圧が起こり、死亡リスクが高まります。肺炎球菌などが原因の二次細菌肺炎も一般的です。

5. 2025年7月現在の流行状況

2025年に入り、日本および世界各地で百日咳の報告数が急増しており、過去数年と比べて顕著な流行が見られます。日本の国立健康危機管理研究所(JIHS、旧・国立感染症研究所)によると、2025年1月から7月中旬までに累計43,728件の報告があり、これは2024年通年の約4,000件から10倍以上の増加です。特に東京、大阪などの都市部で多く、感染者の約60%が青少年・成人で、乳幼児の重症例も散見されます。グローバルにも再流行(resurgence)が観察されており、WHOや各国保健機関のデータから、ワクチン接種が進んだ国々でも増加傾向です。特に中国で2023年の14倍規模の急増が目を引きます。ブラジルは南米地域の再流行の中心の一つとされており、サンパウロ州では2024年に前年の4倍増が報告されてます。

6. 流行の主な原因

百日咳の流行は、細菌そのものの変異によるものではなく、社会的・免疫学的要因が主です。以下に主な原因を挙げます。これらは日本と世界で共通するものが多く、相互に関連しています。

  a. ワクチン免疫の減衰(Waning Immunity, diminuição da imunidade): 百日咳ワクチン(DTaPやTdap)は幼児期に接種されますが、効果が5〜10年で弱まるため、青少年・成人での免疫力が低下します。日本では乳幼児の接種率が95%以上と高いものの、ブースター接種(追加接種)が不足し、成人感染が増加。ブラジルを含む世界的に同様で、WHOは免疫減衰を再流行の主要因と指摘しています。

  b. COVID-19対策緩和後の免疫債務(Immunity Debt, lacuna de imunidade): パンデミック期のマスク着用・社会的距離確保で呼吸器感染症の曝露が減り、集団免疫が弱体化。2023〜2024年の緩和後、百日咳を含む感染症が急増しました。日本ではインフルエンザやRSウイルス感染症(註6)と並行して流行し、世界各国で同様のトレンドです。

  c. 抗生物質耐性菌の出現: 一部株がエリスロマイシンのようなマクロライド系抗生物質に耐性を持ち、治療が難しくなるケースが増加。日本で2024〜2025年に耐性株関連の死亡例が報告され、流行拡大を助長しています。これはグローバルな問題で、細菌の遺伝子変異が原因です(註7)。

  • 註6. ブラジルでの臨床現場では百日咳よりRSウイルス感染症を重点的に流行監視しているように思われる。
  • 註7. 特定の遺伝子型(fim3–24/ptxP-3)の株がアウトブレイクに関与している可能性が指摘されている。

  d. 季節・社会的要因: 日本では夏季の高温多湿、夏休みの人の移動・集まりが感染リスクを高めています。ブラジルでは冬季の閉め切った空間での活動や季節に多い風邪症状が感染リスクを高めてます。世界的に、都市部や高齢化社会での密接接触が寄与。PCR検査の普及などの診断技術の進歩で報告数が増えている側面もありますが、本質的には感染拡大です。

  e. 接種率の地域差や誤認識: 全体的に高いものの、一部地域でワクチン忌避やアクセス不足が見られ、特に発展途上国で影響。中国の急増はこうした要因が強いです。また、「幼児期の接種で一生免疫」との誤解が、成人ブースターの怠りを招いています。

7. 予防と対応

  • – ワクチン接種を徹底:妊婦・周囲成人へのブースター(日本ではTdap、ブラジルではdTPa)、乳幼児の定期接種。
  • – 早期治療:抗生剤投与で感染拡大を防ぐ。
  • – 公衆衛生:マスク、手洗い、咳エチケット。

日本から移住してくる子供さん達の予防接種はブラジルで必要なモノとは違うので(註8)、当地に到着したら「すぐに」予防接種の調整を医師に相談する事が重要だと考える。筆者の診療所HPに小児用のブラジル公式予防接種スケジュールを載せているので(註9)、参考にしてほしい。旅行者は事前接種を確認する事が必要になってきたと思われます(註10)。このコラムの25人の読者様、周りの愛する人達に今月の話の拡散をご協力いただけたら嬉しいです。』

  • 註8.  例:ブラジルでは日本脳炎はないが、細菌性髄膜炎がある。
  • 註9.  https://www.akiyama.med.br/jp/vaccine-brazil-children/
  • 註10. 現時点での大人の接種勧告は妊婦と1才以下の子供と同居の場合のみ.

 

寓話のようで寓話でない話:「買い物袋もって来いよ」

By: Kazusei Akiyama, M.D.

July. Some cloud at Sunrise. São Paulo. Caju©2024.


2025年7月

寓話のようで寓話でない話:「買い物袋もって来いよ」

最近、近隣の街でこんな出来事がありました。

スーパーのレジで、年配の男性が若い店員にこう言われました。

「マイバッグはお持ちですか?プラスチック袋は有料ですし環境に良くないので、ご自分の袋を使うのがおすすめですよ。」

男性は少し照れながら答えました。

「すみません。私の若い頃には、こうした『エコ』の考え方はあまりなかったもので。」

店員は上から目線の口調で返しました。

「それが問題なんです。昔の世代が環境のことをあまり考えなかったから、今こんな状況なんですよ。」

少し間を置いて、男性は穏やかに語り始めました。

「確かに、私たちの時代には『エコ』という言葉はありませんでした。でもね…」

– 牛乳やジュース、ビールの瓶は店に返し、洗浄・再利用されていました。リサイクルそのものです。

– エスカレーターがなく、階段で移動。電気は自然と節約していました。

– 買い物や用事は徒歩。ちょっとした移動に車は使いませんでした。

– 布おむつを洗って使い回し。紙おむつは一般的ではありませんでした。

– 洗濯物はロープに干し、太陽と風で乾燥。乾燥機は不要でした。

– テレビやラジオは家に1台だけ。各部屋に置くなんてありえませんでした。

– 切ったり混ぜたり潰したり、調理は手動。電動ミキサーなどは使っていませんでした。

– 梱包には古新聞を使用。プチプチみたいなプラスチックの緩衝材はありませんでした。

– 草刈りは手押し式の芝刈り機。電気は使いませんでした。

– 日常が運動そのもの。ジムでランニングマシンを使う必要はありませんでした。

– 水は蛇口から直接、またはガラスコップで飲みました。プラスチックのコップやペットボトルは存在しませんでした。

– カミソリの刃だけ交換。使い捨てはしませんでした。

– 子どもは自転車や徒歩で通学。車で親の送迎はありませんでした。

– 部屋にコンセントは1つで十分。複数の機器を設置したり充電する時代ではありませんでした。

– 道案内は地図や人に聞くもの。GPSやスマホはなかったのです。

– 電話は固定電話で、1軒に1台あれば贅沢。携帯電話のバッテリーで環境を汚すなんて考えられませんでした。

「だからこそ、今の若い世代が「昔の人は環境を顧みなかった」と批判するのを聞くと、どこか皮肉に感じてしまいます。本当に環境を第一に考えているのだろうかと、つい考えてしまうのです。」

この話は、ネット上のフォーラム、Quoraのスペイン語版に掲載された投稿を基にしています(註1)。投稿者はペルー在住のマリア・デル・ピラル・トヘリさんで、題名は「generación equivocada」直訳すると「間違った世代」。この投稿は、2020年にペルーで起きた抗議運動「Se metieron con la generación equivocada」(「彼らは間違った世代に手を出した」あるいは「間違った世代にケンカを売った」)を背景にしています。  当時、ペルーではマヌエル・メリノの暫定政権と政治腐敗に抗議する若者主導のデモが全国で展開されました。このスローガンは、若者の抵抗を象徴するものとして広まりました(註2)。当時、世界の関心はコロナ禍やトランプ対バイデンの米国大統領選に集中しており、ペルーの運動は日本やブラジルを含む海外ではあまり知られていません。要するに、「若者たちが政治腐敗に立ち向かった社会運動」だったのです。

  • 註1. https://qr.ae/pAIVvI(原文閲覧可能)
  • 註2. 2020年のペルー政治危機:マヌエル・メリノの就任と辞任、ビスカラ大統領の弾劾。

『それだけ見てると、若者達が社会問題や政治問題に関心を持ち、立ち上がるのは良い事だ!パチパチ。拍手。になるな。』

ここで、しかし、が入ります。一見、若者が社会問題に関心を持ち、行動を起こすのは素晴らしいことです。だが、よく観察すると、これらの運動が本当に自発的なのか、疑問が湧きます。  2020年頃、ペルー以外でも若者主導のデモが世界中で発生しました。たとえば、香港の民主化デモ、米国のブラック・ライブズ・マター(BLM)運動、タイの反政府デモ、チリの抗議デモ、欧州の気候変動ストライキなどです。これらはリーダー不在でSNSを活用した分散型運動という共通点を持ちます。しかし、人権や環境、民主主義といった「正義」のテーマが、特定の勢力によって利用されている可能性が筆者にはあるように思えるのです。若者の情熱が、経済的・政治的な目的のために巧みに焚きつけられているとしたら、どうでしょう。

気候変動ストライキを例に取ると、環境ビジネスの影が見え隠れします。一番目につくのは電気自動車シフトですが、太陽光や洋上風力への企業投資、環境コンサルティングの成長、ESG投資の拡大、代替タンパク質やエコツーリズムの推進(註3)――これらは若者のストライキによる環境意識の高まりと連動し、企業利益に直結しています。しかし、企業や政治家が「環境」を旗印に、注目や利益を得ようとしている現実や、一部の運動が左派政権下で勢いを失う様子を見てると、多様にある「運動」の誠実性を疑問視するのは筆者だけでしょうか。

  • 註3. 低炭素旅行サービスと言ったモノまで出てきた。

『本当に環境の事など思ってないでしょ。結局金儲け。あるいは法人が社会の風当たりに乗り遅れないようにそのフリしてるだけだったり。一定の注目を浴びるから政治家なんかも便乗も多いし。どっかがレジ袋有料化してたな。』

ペルーの抗議運動も、当初は政治腐敗への抵抗でしたが、環境や人権など多様な議題が混在し、焦点がぼやけたてしまい、かの国のトランスジェンダーの国会議員の勝利みたいな話になって終わってしまっている印象です(註4)。トヘリさんの投稿は、若者の情熱が大きな権力に利用され、環境のような重要な案件が偽善の虜になっている可能性を警告しているのではないかと思います。  この話は、単なる世代間の言い争いではありません。近年色々叫ばれている正義のテーマを考えるとき、私たちは何を優先し、どう行動すべきなのか――そんな問いを投げかけてきます。

  • 註4. https://www.lavanguardia.com/politica/20201115/49472171977/en-peru-se-metieron-con-la-generacion-equivocada.html(解説記事)

ハレンチってエッチじゃないの?

By: Kazusei Akiyama, M.D.

June. Little bit foggy morning. São Paulo. Caju©2018.


2025年6月

ハレンチってエッチじゃないの?

いきなりですが、このコラムの25人の読者様、「ハレンチ」ってどう解釈されてますか?筆者は7割方はエッチ、つまり性的な意味合いをもつ言葉だと思ってましたが(註1)、なんかモヤモヤするのです。それでお勉強してみたら、やはり元々の概念と最近の用途ではギャップがあるのがモヤモヤの原因でした。「ハレンチ」は漢字で「破廉恥」と書き、「廉恥」が破られる、無くなる、壊れる、つまり「清らかで恥を知る心が失われる」ことを指します。広辞苑によると「廉恥」とは「心が清らかで、恥を知る心がある事」。したがって破廉恥とは恥を恥とも思わず平気でいる事、不正を平然と行う態度を意味します。でも最近は「恥を恐れない」といった意味合いで使われているようです。

  • 註1:「ハレンチ」が性的な意味合いを持つのは、刑法上の公然わいせつ罪やわいせつ物頒布等罪など、わいせつ行為に関連するイメージによるものと考えられる。

『お勉強を進めてみると、「恥」や「不正」の概念は東洋と西洋では随分違うのが分かるのだな。なので、今回も東西考、日本とブラジルの文化を比較しながら破廉恥の意味と現代社会での役割を考えていきたい。』

「破廉恥」という言葉は、道徳的または社会的な規範を著しく逸脱し、羞恥心を欠いた行為や態度を指します。この概念は、時代や地域によってその意味や社会的役割が異なり、日本では歴史的に「恥の文化」に根ざし、集団の秩序や礼節を保つ基盤でした。戦後の道徳教育で、公の場で大声を出す、性的な話題を公然と語る、露出度の高い服装などが「破廉恥」と非難されることがありました。しかし近年では、グローバル化や個人主義、インターネットの普及で価値観が多様化する現代では、「破廉恥」という言葉の効力や意義は揺らいでいると考えられます。性的少数者の権利の尊重、身体の自由、自己表現の多様性が社会的に認められつつあり、「破廉恥」とされた行為の一部が「個人の自由」として再評価される場面も増えているようです。

反面、現代の日本社会は依然として「空気を読む」「和を乱さない」といった同調圧力の文化が根強く残ってます。結果として、ある集団では自由とされる行動が、別の文脈では「破廉恥」とされるといった矛盾も生じます。たとえば、若者文化においては奇抜なファッションや過激な表現が受け入れられますが、高齢者層や保守的な地域社会では眉をひそめられることもあります。つまり、「破廉恥」という概念は一様ではなく、時代や立場、文脈によってその意味合いを変化させているわけです。

一方、ブラジルにおいては「破廉恥」に直接対応する語として「vergonha(恥)」や「sem vergonha(恥知らず)」などがありますが、文化的な意味合いは日本とは大きく異なります。ブラジルは多民族国家、多文化社会であり、ポルトガル植民地時代、先住民族、アフリカ系奴隷、欧州や東洋の移民の文化が融合し、個人主義と集団主義が混在する独特の価値観を持ちます。そのため、倫理観や公共空間での振る舞いに対する基準も多様になります。

ブラジルのカーニバル文化は、破廉恥の概念を考える上で興味深い事例です。カーニバルでは、社会的規範が一時的に緩和されます。普段はタブーとされる大胆な表現が許容され、露出度の高い衣装や派手な踊りが文化的祝祭をして容認されます。これは、破廉恥の概念が状況依存的であることを示しています。ただし、カーニバル外での同様の行為は、破廉恥とみなされる可能性があり、文化的文脈の重要性が分かります。一見、日本の保守的な目線から見ると「破廉恥」とされる行為が、ブラジルでは「解放」「祝祭」「自己表現」として評価されます。この違いは、国民性や宗教、気候、歴史的背景によるもので、ブラジルにおける「恥」の概念は日本ほど行動を抑制するものではありません。

『そんなブラジルでも腐敗や暴力、差別といった行為は、現代ブラジル社会において「不名誉」とされ、強い批判を浴びる。10年ほど前からサンパウロ市のパウリスタ通りで度々発生する大規模デモは、政治腐敗や社会的不正への抗議として、「恥知らず」な行為を糾弾する動きの好例だろう。』

日本とブラジル双方で、SNSの普及は破廉恥の概念に新たな次元を加えたと思います。個人の行動が即座に拡散され、破廉恥とみなされる行為が世界的に注目されるようになる一方、過剰な監視やキャンセルカルチャー(註2)は、個人の自由を制限し、対話を阻害するリスクを伴います。インターネットでは「バズる」こと、つまり話題になることが重要視され、刺激的で過激な言動が注目を集めやすいです。その中で、かつては「破廉恥」とされた行為が、むしろ「話題性」や「個性」として受容されるケースも増えているのが現状です。

  • 註2:キャンセルカルチャーとは、特定の人物や企業が不適切な発言や行動をした際に、SNSなどで糾弾し、不買運動やボイコットなどを呼びかけ、社会的に排除しようとする動き。「キャンセル」を叫び、切り捨てる行動からこのように呼ばれるようになった。2020年8月のひとりごと「物事の本質を曝露させたコロナかな。」で展開してます。

特に若年層では、「恥」を恐れずに自己表現を行うことが、成功や影響力につながることもあるとされてます。TikTokやInstagramでは、性的な要素や過激な発言がバイラル(註3)になる例が世界中で見られます。日本においても、そうした表現が商業的成功を収める一方で、炎上やバッシングといった形で「破廉恥」が再確認される場面もあります。ブラジルでは、ネット上の自由な表現が文化的に受け入れられやすい傾向がある一方で、政治的・宗教的な価値観との衝突も頻発してます。たとえば、LGBTQ+の表現に対する支持と反発の両方を引き起こし、公共の場での行動が物議を醸すこともあります。

『つまり、「破廉恥」の判断基準は、文化の中における価値観の対立を反映しているとも言えるのであろう。』

日本では、伝統的価値観と新しい自由の在り方がせめぎ合い、ブラジルでは多様性と宗教的保守性が複雑に絡み合っています。結局「破廉恥」という概念は、単なる道徳的評価を超え、社会における「正常」と「逸脱」の境界線を可視化する機能を持っていると思います。

『その境界線がものすごくあいまいになりつつあるけどね。そして今の社会、日本でもブラジルでも「破廉恥」だらけに見えますけど。25人の読者様にとっての「破廉恥」って、どんなものですか?』

  • 註3:viral、ウイルスの。情報やコンテンツがウイルス感染のように急速に広まる様子。

 

ブラジルの予防接種スケジュール0〜14歳

by: Kazusei Akiyama, MD


ブラジルの予防接種スケジュール

当地には2種類のスケジュールがあり、公式スケジュール(Programa Nacional de Imunização)は保健所や公共医療機関などで無料で提供されるワクチン。外国人であっても無料です。小児科学会スケジュール(Calendário Vacinal da Sociedade Brasileira de Pediatria)は民間の医療機関で有料で接種されるワクチンであり、公式スケジュールの拡張版です。

公式スケジュールは低コスト、高カバー率のワクチンを使用した公衆衛生を優先するスケジュール、小児科学会スケジュールはより広範なワクチンを利用し、個人保健を優先するスケジュールです。医学的に考えると公式スケジュールは最低限の疾病予防をしており、十分だと言えます。民間の分はそれのプラスアルファで更に予防をする希望があり、経済的余裕のある家族向けです。

当地ブラジルは予防接種政策に関しては世界的に予防接種先進国と認知されており、成功の歴史があります。1975年に始まったPrograma Nacional de Imunização(PNI、予防接種国家プログラム)のプログラムのおかげでブラジル人は大変ワクチン好きで、インフルエンザワクチン導入時の接種率の高さや新型コロナワクチンが配布された時の一般人の関心と支持は日本の比では無かったです。

過去のひとりごと「今度はサル。また変なモノ出てきましたな。」にワクチンについて書いてますので、併せてご検討ください。。

ブラジルの予防接種スケジュール:ブラジル国保健省の公式スケジュール2024/2025年版


ブラジルの予防接種スケジュール:ブラジル小児科学会の推奨スケジュール2024/2025年版

このページへのリンクやコピーは出典(https://www.akiyama.med.br/jp/vaccine-brazil-children/)を明示の上、ご自由にしていただけます。


 

 

患者になるのも要デジタルリテラシーの世の中

By: Kazusei Akiyama, M.D.

May: Little bit cloudy sunrise. São Paulo. Caju©2022.


2025年5月

患者になるのも要デジタルリテラシーの世の中

先月の前半、日本でのマスメディアは壱岐島沖でドクターヘリが墜落したニュースで占められてました。2025年4月6日、長崎県対馬市から福岡市へ患者を搬送中のヘリコプターが、壱岐島沖約27kmの海上で転覆しました。6人全員が救助されましたが、患者と付き添い、医師の3人が死亡しました。ヘリは佐賀の航空会社が運航し、福岡和白病院から委託を受けていました。海上保安庁は事故原因を調査中。この事故は離島医療の課題を浮き彫りにし、ヘリ運航の安全基準見直しや遠隔医療への依存増加が議論されています。特に運航会社と病院への批判が強く、日本の同調圧力文化が影響を与える可能性が大きいと思います。「落ちるかもしれないヘリコプターに患者を乗せて病院は無責任だ!」と言った論調に悪意と浅慮を感じて憤慨しているのが今月のひとりごとの素です。

ドクターヘリは、緊急医療現場に医師や看護師を迅速に派遣し、現場で治療を行いながら患者を医療機関へ搬送するヘリコプターです。救急医療に必要な機器や医薬品を搭載し、特に離島や山間部での救命活動に役立ちます。車両が到達できる陸地では、救急車よりも早く治療を開始でき、特に重症患者の救命に効果的です。しかし、間に「海」がある場合、離島ではヘリ搬送が「最後の砦」です。福岡和白病院は民間資金でヘリを運用し、対馬の命を支えてきました。残念な事に批判が強まれば、こうした民間努力が減少し、遠隔医療の格差が拡大する恐れがあります。実際、この病院は離島からのヘリ輸送を無期限運行停止してしまいました。運航停止は緊急搬送の遅延や医療アクセスの低下を招き、遠隔地の患者に直接的な影響を与えます。マスゴミは自分が離島に住んでいないので、事故の話題性ばかりに焦点をあて、表面的な責任追及に終始しているように見えます。もっと根本的な、離島医療の資金不足、民間ヘリの安全基準の曖昧さ等、構造的な問題が議論されているようには思われません。

『離島に高度な医療機関がそろっていれば別にヘリなど飛ばさないでいいでしょ?無いから飛ばさないといけない、そんな単純な事もわからんのか。』

しかし、筆者が思うに、これは反対にヘリ運航のリスクがクローズアップされたことで、テレメディシン(telemedicine、遠隔医療)やドローンによる医療物資輸送など、非物理的な遠隔医療技術への投資や導入の議論が加速する良い機会にしないといけないと。ヒトの健康や感情を扱うモノである以上、医療文化は人間生活の中でも保守的な分野に入ると思います。また、医療は高額な経済活動であるため、色んな利権が絡み、これも革新を拒む一員でしょう。ドクターヘリや遠隔医療に関しても、「とんでもない事態」が起こらないと引き金にならない歴史があります。

ドクターヘリはHEMS(Helicopter Emergency Medical Services、医師を乗せた緊急医療ヘリコプター)が欧米式の正式名称で、欧米では1970年代より運用が始まってます。ブラジルでは1980年代に主に都市部で交通渋滞を回避する手立てとして定着するようになりました。これは革新というより、民間主導で富裕層向けの救急サービス、つまり、更に高額な経済効果を見込んだモノでしょう。ただ、実際このサービスは交通事故や心臓発作患者の生存率向上に寄与する実績が認められたため、消防や警察のヘリで公的機関がサービスするようになり、2000年代にブラジル保健省が全国緊急医療サービス(SAMU: Serviço de Atendimento Móvel de Urgência、2003年設立)の一環としてHEMSを強化してます。日本では緊急医療におけるヘリコプターの使用は消極的だったのが、1995年の阪神・淡路大震災が転機となり、迅速な医療アクセスと搬送の必要性が認識され、この災害での被害(死者6,434人、負傷者43,792人)は、HEMS導入の議論を加速させました。正式には2001年に運用開始があり、以降ドクターヘリは全国に拡大し2022年4月時点で、47都道府県中45都道府県に56機が配備されるまでになってます(註1)。

『つまりヘリの場合、大震災が起こらないと重要性が分からなかった。ブラジルの場合は大渋滞か。』

  • 註1:ブラジルでは全国で約50機。警察へりなど緊急搬送に使用される機材はもっと多いが、ドクターヘリは、医師や看護師が搭乗し、現場で初期治療を行えることが定義であるため、単に患者や怪我人を搬送するヘリコプターがドクターヘリと言うわけではない。

遠隔医療(テレメディシン)に関しては、日本の場合、遅々と整備が進まない状況でした。日本の医療文化は、医師と患者の信頼関係を重視し、対面での診察を伝統的に好む環境が遅延の一番の理由とされます。1997年には遠隔診療が認められましたが、医師法では対面診療が原則とされ、初期はフォローアップケアに限定されていたり、規制緩和があっても禁煙治療など一部条件つきの制度でした。それが2020年の新型コロナ禍で状況が一変し、初診の遠隔診療が解禁され1万以上の医療機関が新患者のオンライン相談を提供し、医療アクセスの拡大に寄与してます。しかし、対象疾患や保険適用には依然として制限があり、遠隔診察の保険点数は対面の約70%に設定されているため収益性が低く、導入が進まないようです(註2)。ブラジルでは僻地の医療拡充に有用ではないかというくらいの位置づけで1980年代から議論がありましたが、結構医師側の抵抗があり、医師の60%がテレメディシンの診断精度や法的責任を懸念し、消極的でした。ある程度成功していたのは、遠隔地から送信される画像の診断と海洋油田で勤務している労働者(註3)への医療サービスでした。石油プラットフォームにはメディック(救急救命士や看護師)が常駐し、簡易診療所を運営しており、常駐医療体制があるといえますが、高度な診断や治療には陸上の専門医の支援が必要になります。海洋油田は労働リスクが高く、作業員は重機事故、爆発、落下、化学物質暴露などのリスクにさらされ、急性外傷(骨折、頭部損傷)、心疾患、熱中症が頻発;非労働関連疾患(消化器疾患、感染症)も約40%を占めるといったデータもあります。海洋油田の特殊な環境が、ブラジルのテレメディシンを技術的に進化させたのは間違いないと考えられます。このように利用が限定的であったのが、2019年に規制緩和があり、遠隔診断、処方、カウンセリングが合法化されました。そこへ2020年の新型コロナ禍で緊急措置としてさらに緩和され、民間投資と規制緩和でテレメディシンが急成長し、都市部での受容が進んだ現状と言えます。

『遠隔医療の場合、新型コロナパンデミックが転換点と言える。』

  • 註2:更に、APPI(個人情報保護法)の厳格な適用が求められ、医療機関は高コストのセキュリティシステムを導入する必要がある。これが特に地方の小規模施設で障壁となっている。
  • 註3:ブラジルは、リオデジャネイロやサンパウロ沖の100〜300km以上の遠隔地に位置する世界最大級の海洋油田を開発している。これらの油田は、数千人の作業員が海上プラットフォームや掘削リグで働き、広義では日本の離島の医療事情と似ているところがある。

ドクターヘリの大きな問題点は「過剰トリアージ」でしょう。過剰トリアージ(over-triage)とは、緊急性の低い患者や軽症患者を、緊急度の高い患者向けのリソースで対応してしまうことです(註4)。ドクターヘリは運用コストが高額であるので最悪になります。この現象の解決策(註5)の一つにテレメディシンを活用し、初期診断の精度の向上を目指す方法があります。反面、テレメディシン運用で陸上医師の慎重すぎる判断が、HEMSの不適切出動を招く事態も無視できません。

  • 註4:サンパウロ州のHEMS(2018年)では、搬送患者の約30%が打撲、軽度骨折などの軽症で、地上搬送で十分だったと報告がある。
  • 註5:トリアージプロトコルの標準化(いつ使うか);救急救命士や医療従事者への訓練の強化(どう使うか);民間HEMSの過剰派遣の規制(商業的動機の抑制);地上医療の強化(HEMSへの過度な依存を軽減);市民教育(過剰要請の抑制)。

遠隔医療の1番大きな問題点は診断精度です。対面診療に比べ、テレメディシンは診断ミスリスクが高くなります。2番目の問題点は最低スマートホンを始めとする電子器機を使用しないとできない医療行為であり、高齢者や低学歴層のデジタルリテラシー不足が、テレメディシンの利用を阻害します。今回のドクターヘリの件でも見られるように、遠隔医療の重要性に疑問の余地はないと思われます。待ち時間や移動時間の短縮などのコスト削減的な経済効果や医療のアクセスの改善といった医療の民主化効果もあります。このコラムの25人の読者様の生活圏のブラジル、特に都市部では社会受容性高く、筆者の診療所でもテレメディシンがすっかり定着してます。賢くご利用いただければ心強い保健ツールになることは間違いないと考えます。

『したがって、要デジタルリテラシーの世の中です。デジタルは使えるようにしましょう。』


 

医者のウソは方便なのか?

By: Kazusei Akiyama, M.D.

April: Clear sunrise. São Paulo. Caju©2021


2025年4月

医者のウソは方便なのか?

先月のひとりごと、「酒」の話で今まで書いてきた「開業医のひとりごと」を引用するため一通り目をとおしてみると、「またの機会に展開します」話が色々ありました。その内の「医者のウソは方便」が今の時代と衝突する感じで気になりましたのでこのテーマで今月は展開していきたいと思います。

まず定義からいきましょう。「ウソ」とは意図的に事実と異なることを述べることです。例えば、「昨日は遅くまで働いてたよ」と言うのが本当はそうでなかったら、それは嘘になります。動機は様々で、冗談、自己防衛、あるいは他人を騙すためかもしれません。正しいとか間違っているはともかく、基本的に誰かを「誤解」させたりするための行為でしょう。いわゆる「意図的な虚偽」です。特に西洋社会は個人主義が強いので、嘘は「個人の信頼」や「自己の誠実さ」を損なうものとして重く見られがちです。「方便」は仏教の「upāya」という概念からきており、真実をそのまま伝えるのではなく、相手の理解や救済のために適切な手段であり、時に嘘を使うことがあります。ここから「嘘も方便」という日本の慣用句にもつながり、続いて「医者の嘘も方便」といった言い回しができるのですね。

この考え方からいくと、ウソは悪いモノではないと言うことになります。本当に悪いモノではないのでしょうか。西洋と東洋では捉え方が違います。東洋社会では個人より集団の和が重視されるため、嘘がグループの調和やメンツを保つために使われることがあります。例えば、上司や親戚に失礼にならないよう本音を隠す「建前」は、嘘の一種とも言えますが、社会的に受け入れられています。だから「医者の方便」のように相手のためになる嘘は肯定的に捉えられる訳です。西洋でももちろんwhite lie(白い嘘)という同じような悪意のない、相手を傷つけないための嘘は許容される概念がありますが、どちらかいうと良いか悪いかの二元的になりがちだと考えます。反面、東洋では自然の流れに従うことが重視され、嘘か真実かという二元論よりも、状況に応じた柔軟性が優先されることがあります。嘘が「調和」や「バランス」を保つなら、必ずしも否定されません。ウソが「悪い」とされるかどうかは、状況や文化、意図によって変わるので、一概に「悪い」「悪くない」とは言えない部分があります。

『西洋が「(はいyes)か(いいえno)か」のバイナリデジタルで成り立っているのに対し、東洋では(はいyes)、(いいえno)、(はいといいえのどちらもyes and no)、(はいでもいいえでもないnot yes nor no)の4パターンあるそれだな。(註1)』

  • 註1:インド文化の概念です。

ここまで来るとこのコラムの25人の読者様はウソはそんなに悪いモノではないと思うようになってきてませんか?もう一度整理してみます。

 

◎嘘が「悪い」とされる理由

一般的に、嘘が「悪い」とされる背景にはいくつかの要素があります:

 信頼の崩壊: 嘘がバレると、人間関係や社会の信頼が損なわれる。例えば、友達に「昨日会えなかった」と嘘をついて別の予定を優先したら、信用を失うかも。

 害を与える可能性: 他人を騙して利益を得たり、傷つけたりする嘘は非難されやすい。企業のCSRで「環境に優しい」と偽るのも、消費者を誤解させて害を及ぼすから問題視されます。

 道徳的規範: 西洋のキリスト教(「偽りの証言をしてはならない」)や東洋の儒教(「信が重要」)など、多くの文化で「真実を語る」ことが美徳とされ、嘘はそれに反するものとされます。

 

◎嘘が「悪くない」場合

でも、嘘が必ずしも「悪い」とは限らない状況もあります:

 相手を守る嘘=方便:「医者のウソは方便」のように、患者に「大丈夫だよ」と言う嘘が不安を和らげるなら、それは優しさや思いやりからくるもの。プラシーボ効果(註2)を狙っているウソもありますね。東洋の「嘘も方便」は、まさにこの考え方ですね。例: 子供に「サンタが来るよ」と言うのは、楽しさを与える嘘。

 調和を保つ嘘: 東洋社会では、集団の和を優先して本音を隠すことがあります。「おいしいね」と微妙な料理を褒めるのは、相手を傷つけないための嘘。

 結果が良い嘘: 西洋でも見られる功利主義的な視点では、嘘が全体の幸福を増すなら許される。例えば、戦争中に敵を騙して味方を救う嘘は「正義」とされることも(註3)。

  • 註2:プラシーボ効果:実際の薬理作用がない物質や治療(偽薬や偽の処置)を用いた場合でも、患者が「効果がある」と信じることで症状が改善したり、気分が良くなったりする現象。
  • 註3:古代ギリシャでは、嘘は社会秩序を乱すものとされつつも、統治者が民を導くための「高貴な嘘 (noble lie)」は正当化される場合があるとされました。

 

◎嘘の「善悪」は状況次第

結局、嘘が「悪いモノ」かどうかは、以下に依存します:

 意図:  自分だけ得しようとする嘘は悪意と見なされやすいけど、相手のためなら許容される。

 結果:  嘘が害を及ぼすか、利益をもたらすか。企業のCSRのグリーンウォッシングは害を及ぼすから「悪い」、でも社員を励ますための「少し大げさな言葉」は良い場合も。

 文化:  西洋では「真実」が原則(哲学でいうとカントは「どんな嘘もダメ」と嘘は普遍的な信頼を壊すから絶対的に否定)で嘘は例外的に許される(哲学でいうとニーチェは「真実がいつも良いとは限らない」と、嘘にも価値を見出す余地を認める)けど、東洋では状況に応じた柔軟さが認められがち。

嘘は「悪いモノ」と決めつけるより、「何のために、誰のために使われるか」で評価が変わる訳です。純粋に悪意だけの嘘は少ないし、むしろ人間関係や社会を円滑にする道具として機能することもある。逆に、嘘がなくても生きられるかと言えば、現実的には難しいですよね。「悪い」と感じるのは、嘘そのものより、それが引き起こす結果や裏切り感なのかもしれません。結論としてはウソは悪いモノではない場合もあると言う事になります。結局、良い悪いの以前の問題で、ウソを言っている人(組織)の倫理(ethics, ética)によるところだと考えます。

『思いやるのか?偽るのか?つまり、善意か、悪意か、に行き着くか。』

この部分を「見抜く」のが難しいのではないかと思います。人間は「認知バイアス」というものがあります。「単純接触効果」のように繰り返し聞くと信じやすくなるといった「習性」です。「刷り込み」というヤツですね。これを悪用した有名な例がナチス・ドイツの宣伝大臣ヨーゼフ・ゲッベルスに帰せられる「ウソも100回言えば本当になる」ではないでしょうか?意図的、組織的に「嘘を効果的に使う」技術であり、どこかの国のL政権が多用しているように現在も使用されています。

また、ウソは「虚偽」や「欠如」、「誤解」が根本にあるので、反面の「本当」、「真実」、「事実」、「実情」、「確証」などの概念が絡んでくるものです。例えば、容器に美味しい飲み物が半分、50%あるといる事実に対して、人によっては「まだ半分残っている(からまだ楽しめる)」と見るし、あるいは「もう半分しかない(から損した気分)」と見るでしょう。どちらが正しいと言えるのでしょうか?これらの概念はまた引き続きひとりごとします。