黄熱よりデング熱のほうがかかりやすいぞ

By: Kazusei Akiyama, MD


2010年04月

今月のひとりごと:『黄熱よりデング熱のほうがかかりやすいぞ』

現在ブラジルでは去年より「感染症危険情報が発出されています」。外務省の海外安全ホームページや在サンパウロ総領事館発信の情報です。内容はデング熱と黄熱の流行についてですが、いろいろ問い合わせがありましたので今月はこのテーマでひとりごとします。

疾患の説明や症状は外務省のHPに詳しくあります(註1)のでそちらをご覧ください。確かにどちらもブラジルでは発症例が増えています。サンパウロ在住の邦人に関心が高いのは黄熱のようです。というのは、致死率の高い疾患で、2008年頃までサンパウロ州では安全とされていたのが一部予防接種勧告地域になってしまったからでしょう。黄熱は予防接種が有効な感染症なので、じゃあ全員にワクチンを打ったら終わりだろうと思われるのですが、非常に副作用の強いワクチンなのでそうは問屋が卸しません。結論からいうと、絶対に接種するべき以外の方はワクチンを使わないほうがよいと考えます。サンパウロ州の下記の地図の左側(明るい色)に①在住(註2)、または、②ブラジル各地の黄熱予防勧告が出ている地域(註3)の森林部や農村部に出張や旅行をする、この二つの状況のみ予防接種が必須だと考えられます。本連載読者の皆さんのほとんどは該当地域に在住されていないので出張や旅行が対象になりますが、「行くかも知れない」程度でなく「実際行かれる」場合予防接種を受けてください。現地に入る10日前に済ますのをお忘れ無く。医療の現場では黄熱以上にデング熱が気になります。その理由は発症数が圧倒的に多く、サンパウロ市内でも罹患可能であるからです。

  • 1http://www.pubanzen.mofa.go.jp/info/info4.asp?id=259
  • 2:左側の市町村名リストは次のサンパウロ州健康局の勧告を参照:ftp://ftp.cve.saude.sp.gov.br/doc_tec/ZOO/fa250210_recomendacao.pdf
  • 3Acre, Amapá, Amazonas, Pará, Rondônia, Roraima, Distrito Federal, Goiás, Tocantins, Mato Grosso do Sul, Mato Grosso, Maranhão, Minas Gerais, São Paulo(一部), Bahia, Paraná, Piauí, Santa Catarina, Rio do Grande do Sul.

『黄熱もデング熱もネッタイシマ蚊によって媒介されるウイルス性の感染症なのだな。黄熱のほうが致死率が圧倒的に高い。 リオで黄熱の流行で渡航禁止になるなど第二次世界大戦前までブラジルの都市部でもかなり黄熱が多かった。都市部で壊滅できたのは実はワクチンのお陰ではなく、蚊の駆除がポイントだったのだな。ブラジル人ではOswaldo CruzAdolfo Lutzなど現在感染症系研究所の名称になっている医師達が活躍したのだ。これにより黄熱のウイルスは森林部に追いやられたのだが、蚊は今度は都市部で流行するデングを運ぶようになった訳だな。これには都市部の拡大と地球温暖化のため蚊媒介性疾患の分布拡大の可能性があるという学説がある。どっちにしても、蚊に刺されるのを防ぐのが予防の重点になる。つまり:①蚊の多い所に行かない(ブラジル沿岸部、気温が高いので多い)②刺されないようにする(虫除け剤を塗布あるいは服用、服装、蚊が食事をする時間帯に外出しない)の二点だろな。絶対数としてデング熱のほうが感染しやすいぞ。ちゃんと治療すればまず助かるので、海などにいって、蚊にさされて、1週間ほどしたら高熱、頭痛などがでるようであればすぐに受診しましょう。』