また蚊の話しです:蚊を防ぐしかない

By: Kazusei Akiyama, MD


2016年02月

また蚊の話しです:蚊を防ぐしかない

このところ連続で蚊に媒介される感染症についてひとりごとしてますね。デング熱だけでも大変なところに、2014年よりチクングニア熱、そして去年よりジカ熱が出現し、先月書いた「世界最強のヤブカ」に変身していっている蚊が身近にいることがその理由です。現時点での統計では、2015年にはブラジル全土で158万件のデング熱が報告され(註1)、そのうち、839件の死亡がありました。チクングニア熱に関しては、2014年のブラジル上陸以来、17531件報告があったのですが、先月12月時点で3ヶ月前の9月の件数の34%増ということで、急速に件数が増えているのがわかります。これらもさることながら、今年の夏のトレンドはなんといってもジカ熱、そしてジカウイルス関連の小頭症出産でしょう。去年8月より12月末の統計では3893件小頭症出産(註2)が報告されており、ブラジルの20州、764市町村であったので全国的と言えますが、これらの1/3がペルナンブッコ州で起こってます。

  • 註1:この場合の報告とは感染症法に基づく「届出」の件数です。
  • 註2:小頭症の定義を変更(頭囲34cmから33cm以下に変更)した後の統計なので、前の定義であれば、もっと件数が多いです。

『小頭症はさらに増え、2016年末には1万6千件の予想が政府機関で出されているぞ。これは今後、公衆衛生上大問題になることは専門家でなくても分かる。合併症などの治療や対策で医療費がかなり必要になるだろう。また、80%以上の確立で知的障害者として成長、成人するので、特別支援学校や学級などの整備も必須だな(註3)。12月初頭にWHOが世界的にジカ熱に関する注意喚起を出したのは良いが、昨日、「ジカ熱に対して特に対策がない」と表明した。また、サンパウロ大学の研究でジカウイルスが胎盤を通過することが発見され、小頭症は直接胎児への作用のためである可能性が大になった。』

  • 註3:この体制は現時点では「ありません」。普通の学校もロクにできないのに、特別支援学校なぞ、あるわけないですな。

これら3種類のウイルス感染は現時点で治療方法がありません。感染して、症状があれば対処療法のみです。しかし、蚊の対処はでき、効果があります。今回は蚊とはどういう動物かを考え、それを元に防除を考察します。蚊は昆虫の一種で、35属約2500種おり、地球上に1億5千年以上前から存在してます。これらの一部が吸血し、病気を媒介します。媒介する主な病気は前出の3種類以外に、黄熱、西ナイル熱、日本脳炎、マラリアなどが重要です。マラリアと日本脳炎以外はシマカではない蚊が媒介しますが、今回はシマカの生態と対策についてひとりごとします。

『蚊のエネルギー源は花の蜜など、糖分で血ではないのだな。血はメスが卵の熟成に必要、ので、メスしか吸血しない。シマカが属するヤブカ類は日中、特に午後から夕方にかけて吸血する(註4)。蚊は高い温度、皮膚のにおい、汗(に含まれる乳酸?)、二酸化炭素を感知し、ヒトによってくるのだ。体重は2~3ミリグラムくらい、飛行速度は時速二キロくらいで、あまり早くない。このため、扇風機程度の風で飛行に支障がでるので風は防御の一つですな。一生は卵→幼虫(ボウフラ)→蛹(オニボウフラ)→成虫になり、気温25℃くらいで10日で卵から成虫まで変化する。ボウフラは止まった水のあるところで孵るので、最近うるさく古タイヤ、空き缶空き瓶、植木鉢の受け皿、など、小さな水たまり対策を言われているのだな。池などの大きな水たまりは肉食系の魚(註5)を入れると効果的。魚のいない池や湿地帯では、水面に油膜をつくるのが一番効果的な防除だな。化学的排除、つまり殺虫剤も効くが、これは人間にも害があるので防御したほうがよいと思う。虫除けとして皮膚に塗布するものはDEETが一番効果的だが、これは殺虫効果が無く、厳密には忌避剤である。他の忌避剤としてブラジルで入手しやすいのがシトロネラオイルだな。ろうそくやアロマ、スプレーなど多数市販されている。前出の感知事項から考えると、運動後に刺されやすい。また、身体の代謝が激しいヒトは刺されやすい。飲酒後も二酸化炭素が増えるのと、体温が上がるので、注意が必要だな。黒い色を好むので、黒い服などは避けた方がよい。』

  • 註4:イエカ類は夜吸血するので、寝ている時に飛んでいるのはまずヤブカではないと考えてもよいかも。
  • 註5:特に怖い魚ではないです、金魚でも可。

簡単にいうと、ボウフラを孵させない、ヤブカが吸血する時間帯は特に虫除け対策をする、家の中では忌避剤を使う、だと考えます。