不眠は増えていると思うぞ

By: Kazusei Akiyama, MD


2015年07月

今月のひとりごと:『不眠は増えていると思うぞ』

このコラムの22人の読者様、大変ご無沙汰をしてしまいました。2ヶ月連続で休稿したのは滅多にありません。実はこのところ、身内で不幸が重なり、色々メンタル面や体調面で調子がよく無く、その内、今月のひとりごとで取り上げたい「不眠」があったのです。不眠とは、言葉のとおりで、睡眠の障害がでる状態です。これが1ヶ月以上続くと、「不眠症」と呼ばれる病名がつきます。(註0)

睡眠はヒトに限るものではなく、動物はすべて生理現象として眠る事が必要です。違いがあるのは時間の長短や周期、夢の有無です。睡眠は心身を休めるためであるのは簡単に解りますね。医学的にいうと、細胞の修復、免疫力の再生、脳内の記憶の再構築、各種ホルモンの産生調整などが挙げられます。したがって睡眠が不足すると、これらの機能が阻害され(註1)、新陳代謝の低下(註2)、精神に関する疾患(註3)などが現れます。

不眠症は他の疾患と違い、数値の増減や病理的変化の有無(註4)で定義されません。つまり、「一日何時間以下の睡眠」、「入眠に何分以上かかる」「何回以上目覚める」といったような線引きがなく(註5)、「各個人が正常に眠れない状態が続き、日中に体調が悪くなる」ことと言えます。日本人では現在人口の20%が不眠に関する不満があるデータが存在します。加齢とともに増加が認められ、60歳以上では3人に1人が不眠に悩まされてます。

この疾患を分類すると4つに分けられます:寝始めの寝つきが悪い「入眠障害」、途中で何度も目が覚める「中途覚醒」、早朝に目が覚めてしまう「早朝覚醒」、十分な睡眠時間があったにもかかわらず、ぐっすり眠れたと感じない「熟眠障害」です。原因は原発性、つまり、特に不眠となる原因の疾患や条件がないケースと、二次性、つまり、睡眠を妨げる原因がはっきりする場合に分類できます。後者は原因を治療・改善することで不眠症は消失します。不眠を起こす原因や条件を表にしました。

表1:不眠の原因

生理的原因

時差ぼけや交替制勤務

悩みごと

わくわくするような事

環境要因

騒音

寝室の環境( 暑すぎる、寒すぎる、明るすぎる、枕など寝具が普段と違うなど)

器質的疾患

高血圧症や心臓病(胸苦しさ)、呼吸器疾患(咳、息苦しさ)、腎臓病や前立腺肥大(夜間の頻尿)、アレルギー疾患(痒み)、関節リュウマチ(痛み)。

脳血管発作、糖尿病、甲状腺機能亢進症。

睡眠時無呼吸症候群。ムズムズ脚症候群、周期性四肢運動障害。

精神疾患

ストレス関連障害。うつ病。

薬物など

カフェイン、ニコチンなど嗜好品含有。

ステロイド剤、降圧剤、抗がん剤、甲状腺製剤など治療薬。

『興味深いのが、「睡眠状態誤認」と呼ばれる診断名で、主観的な睡眠時間と客観的(註6)なデータが離れている状態だな。一種の時間認知障害なのだが、原因不明。客観的に観ると、相当な時間睡眠しているのだが、本人はそう感じない。ので、この場合はいくら睡眠薬を投与しても改善しない。不眠症治療の挑戦の一つだな。あと、現在バカにならないのが「ジャンクスリープ」といった状態で、テレビや音楽、照明などをつけっぱなしで寝ることだな。睡眠中に外部から音や光などの刺激が脳に伝わり、脳が休息しない。最近はスマホが普及しているので、スマホ由来のジャンクスリープが多くなっていると思うぞ。夜中にピーンとかポロロンとか各種着信音が鳴るからな(註7)。』

特に原因がなくても現社会は睡眠を妨げる方向に行っていると思います。ので、不眠症でなくても快眠のコツは有用だと考えます。表2に示します。

表2:快眠のコツ。

就寝・起床時間を規則正しく

体内時計を乱さないため。寝だめや夜更かしはだめ。

睡眠時間そのものにこだわらない

熟眠すればそれでいいのです。

太陽の光を浴びる

朝の光が大切です。光に当たると14時間目以降に眠くなります。

適度の運動

ほどよい運動ですね。やり過ぎは逆効果。

就寝前のリラックス

副交感神経を活発にさせると、寝やすくなります。ベッドでスマホはいじらない!

寝室は暗くする

暗くすることによって、睡眠ホルモンのメラトニンが放出されます。

快適な寝室をつくる

寝具、温度、湿度、同伴者の有無など。

焦らない

不眠恐怖の悪循環を断つ努力をする。

昼寝をする

13時から15時の間に20分程度の昼寝をすると快眠になる研究があります。30分以上は逆効果なので注意!

勿論、原因を診断するのが不眠症治療の第一歩です。このコラムの読者様は時差ぼけによる不眠などはよくあると思いますが、1ヶ月以上睡眠障害が続く場合は必ず医師の診断が必要と考えます。今回筆者の場合は「精神疾患」が原因の不眠だったわけですね。


  • 註0:睡眠障害はその他、寝過ぎる過眠やリズムの異常や夢遊病がありますが、今回は「寝られない」状態を取り上げます。
  • 註1:よく研究されているのが睡眠中の成長ホルモンの分泌であり、小児時に睡眠時間が少ないとこのホルモンが少なく、身長が伸びにくくなる。
  • 註2:顔色が悪くなる、食欲の低下、皮膚が荒れるなど。
  • 註3:集中力の低下、ストレスやうつなどのリスクの増加など。
  • 註4:例えば、血糖値N以上で糖尿病が定義されたり、食道にびらんがあるので食道炎が診断されたり、といったことですな。
  • 註5:これは睡眠時間は非常に個人差があるからだな。
  • 註6:ポリソノグラフと呼ばれる検査(別名睡眠ポリグラフ検査)で睡眠の長さや深さを測定できる。
  • 註7:消音しておいても、ブルブル振動してたら意味ないぞ。音を夜間設定にしておくとスマホの電源を切らなくても鳴りません。ぜひご利用ください。