ブラジル医療事情:検査の受け方

By: Kazusei Akiyama, MD

ブラジルの医療事情(5) ー 検査の受け方

今回のテーマもブラジルと日本では随分システムが違います。病院にかかった折に検査が必要となった場合、日本では診察を受けている医院や病院で検査をします。いわゆる検査の外注はありません。受診中の医療機関でできない検査であれば、適切な検査機関に紹介されますが、検査のみの依頼ではなく、患者さんの診察および精密検査の依頼になります。この様な流れになってますので、医療機関ではある程度検査ができる環境を整えておかなければなりません。このシステムならばどこでも受診すれば(ある程度の)検査ができるので便利です。しかし、設備投資に多大な費用がかかり、特に小さな診療所などでは大きな負担になります(そのため、検査費を稼ぐため、不要の検査をする所も出てくるわけです)。また、日々進歩する医療検査機器に対応しなければなりません。

ブラジルでは医院レベルの受診科で必須の検査—例えば産婦人科にエコー検査や子宮癌検査など—があるのを除き、検査はほとんど外注になります。このシステムであれば、設備投資をしなくても常に最新、最善の検査を実施することが可能です。また患者さんが主治医を変えなくても良いのが利点です。もっとも、検査機関まで移動する必要がある、という難点はありますが。

ではどのように検査を受けるのか?

「腹痛で内科医を受診」した例で解説してみます。まず診察を受けます(診察の受け方は前号参照)。検査が必要であると医師が判断した場合、指示書が出ます。この例の場合、血液検査、尿検査、大便検査、上腹部エコーの指示が出たとします。検査によっては時間の予約が必要ですので、担当医と検査機関についての確認をします。また、保険の種類により、使用できる検査機関の制限あるいは事前許可がありますので、これも確認が必要です。一般的な血液検査や尿検査は予約は不要ですが、一定の条件(絶食の時間や検体採取時間帯の制限、付添人の有無など)が満たされていないと検査ができず、出直さなれればならなくなりますので、これらの検査の条件も確認します。そして、検査機関をどこにするかを担当医と相談します。

さて、必要条件を満たした上で予約のとおりに決められた検査機関に行きます。そこでもまず、カルテの作成があります。名前や住所の他、服用中のお薬やアレルギーなどの質問があります。ちゃんとした検査機関では医師が常勤してますので、分からなければ主治医と連絡を取るなど対応してくれます。カルテ作成時に結果の渡し方について尋ねられます。数字だけの結果であればインターネットでも見られますが、写真など画像がある場合、後日取りに行くか、配達を依頼するか決める必要があります。カルテができると、待合室に案内され、名前を呼ばれたら採血の部屋に入ります。採血が終わったら確かに採血しましたといった旨のサインをし、採尿と検便のキットを渡され、採取場所に案内されます。採ったものを返せば次はエコーですが、大便が採れなかった場合、後日持参でも構いません。エコーの待合室で呼ばれたら更衣室で検査用の衣類に着替え、検査室に行きます。エコーが済めば、検査終了です。いつ検査結果ができ上がるのかは、カルテを作った時点でわかりますので、それ以降に検査持参で指示を出した主治医の再診を受けます。

血液検査には自宅まで採血しに来てくれるサービスもあります。それほど急を要する検査ではない場合などでしたら検査機関まで出向く必要がなくなります。このようなサービスも上手に使ってみてはいかがでしょうか?

ちなみに総合病院では検査の方法は日本と同じシステムですが、基本的に外来がありませんのでどのみち医師のオフィスに出向く必要があります。また、救急部門では必ずしも気に入った医師が勤務しているとは限りません。専門医院と総合病院、どちらを選ぶかは患者さん次第です。