ばれっとしょくどうってどっかのレストランですか?

By: Kazusei Akiyama, MD


2011年06月

今月のひとりごと:『ばれっとしょくどうってどっかのレストランですか?』

レストランではありませんね。食堂ではなく食道。BarretosではなくBarrett’s。今月もまた堅いひとりごとです。食道の病気は欧米人に多く日本人には少ないとされていたのですが、最近は増加しているのは間違いがないようです。筆者の一般内科業務でも健康診断業務でもほとんど毎日の様に「逆流性食道炎」が見あたります。業務の性質上、前者は有症状、後者は無症状ですが 逆流性食道炎は酸性の胃液が食道内に過剰に逆流して起こり、次のような原因が考えられます:① 逆流を防ぐ機能が低下;② 蠕動運動の低下;③ 腹圧の上昇;④ 胃液の分泌増加。これらの原因を誘発する要因は:肥満、前屈姿勢、老化、ストレス、 食道裂孔ヘルニア、食後すぐに横になる、喫煙・飲酒、食事の内容(高脂肪、刺激物、塩分の多い物)、薬品や化学物質の摂取などが挙げられます。症状は主に「胸焼け」ですが、「咽頭痛」、「喉の違和感」や「咳」として現れることもあります。

『老化や姿勢はともかく、食べ物と生活状況と密接した病気だな。食の欧米化と生活の都市化が関係していることは異論がない。ようするに脂っこいものをおいしいと喜んで摂っているとやばいのだ。また、夜遅く食事をしたあと、直ぐに寝るのも良くないぞ。問題は症状で苦しむだけではなく、炎症がずっと続いていると、しまいにびらん→潰瘍→合併症=出血(註1)、狭窄(註2)、バレット食道(註3)に移行することが多いのだな。』

バレット食道とはつまり食道の粘膜が小腸の粘膜に変化してしまった状態です。ここで問題になるのは一度診断がつくと、年間0.5%の確率で発ガンする可能性があることです。このため、「前癌病変」と呼ばれる病態に分類され、定期的な経過観察が必要になります。この合併症もあまり日本人にはないものとされてましたが、近年増加の傾向にあるのではないかと考えられてます。胃痛や胸焼けなどの症状がある場合は治療の対象になりますが、ない場合は観察のみになります。治療薬の服用も重要ですが、それ以上に食事と生活内容の改善(註4)が重要であるのではないかと思う疾患です(註5)。

『単なる胸焼けと思わずに、症状がある場合は一度診察してもらったほうがいいぞ!』

 

1:食道の周りにある静脈に到達し、障害をおこす。

2:潰瘍が治るとき、組織が萎縮をおこし、内径が狭くなる状態。嚥下障害になることが多い。

3:炎症刺激のため、食道の扁平上皮が円柱上皮に化生した状態。内視鏡検査で確定診断される。

4:腹圧が上がらない様にする:服装に注意する、重いものを持たない、前屈みの姿勢や座りっぱなしをやめる。食事:長期の絶食をしない、一度に沢山食べない、食べてすぐに横にならない、早食いをしない。避ける食べ物:脂肪・油が多いもの(揚げ物、チーズ、シュラスコなど)、チョコレート、砂糖が多いもの、塩分が多いもの、柑橘類、トマトソース、コーヒー、香辛料、酒類の過多(特にビール)、コーラ類。その他避けるもの:たばこ、運動不足、肥満、ストレス。

5:でもどこの文献を読んでも、食事や生活指導だけでは不十分なことが多いとでているのだな。これは生活習慣はなかなか変革できないことを示しているのでは?24人の読者様たちは変革できますか?


最近騒がしい「放射線」は身近にあるぞ。

By: Kazusei Akiyama, MD


Prunus mume. Hikone. Caju©2011

2011年05月

今月のひとりごと:『最近騒がしい「放射線」は身近にあるぞ。』

今チェルノブイリ原発事故の25周年を迎えてます。また、東日本大震災の福島原発事故も現行しているので今回は「被曝」についてひとりごとです。被曝とは「放射線にさらされる(曝露される)状態」です。もともと放射線は自然界に存在するもので、さほど害をあたえそうにないのですが、現在の我々の理解では「放射線=有害」ではないでしょうか(註1)?被曝による影響がでてくるのはその「量」によります。有害であるという概念はあまりにもまわりの生活に被曝する機会、状況が多いことを示すのではないかと考えます。

  • 1:被曝は天然被曝と人工被曝に分類できる。天然では宇宙線(飛行機搭乗で被曝します)や地殻(ラドン温泉が一例)からの放射線や天然の放射性物質(カリウム40や炭素14)などがある。それら以外が人工。また、外部被曝と内部被曝にも分類できる。外部被曝に対して、体内に取り込んだ状態が内部被曝。経路はa.経口、b.皮膚吸収、c.肺で吸収(吸入)、d.傷口から血管に入る、の4経路。内部被曝の問題点は外部の様に汚染除去できないので長期間被曝するところにある。

『おおまかに、大量被曝=急性=確定的影響、低量被曝=慢性=確率的影響、と分けることができる。ここでは後者について考えてみるが、しかし前者について恐ろしいのが確実に病気と死に至りますよというところですな。毒性が強い。例えば原爆のような大量被曝であるとその量が明らかに影響があるのは疑問の余地がない。問題は大量・低量の線引きと「どれだけ低量が(でも)影響を起こすか」であるのだな(註2)。』

  • 2:放射線の被曝量と健康の影響に関する仮説。
    • 1.一定量(しきい値と呼ばれる)より被曝量が少ないと害がない
    • 2.有害な効果が量と共に増大する(LNT仮説と呼ばれる、主流)
    • 3.少量の被曝は健康によい、しきい値以上は害がある(ホルミシス仮説)

福島原発事故でみんながナーバスになっているのはこの低量被曝のところです。政府が「健康に害はないレベル」といっても、本当にそうなのか?と疑問がでてきます。なぜこのようになるかというと、「健康に害があるレベルははっきりしていても、害がないレベルは、実は、はっきりしていない」からなのです。

『測定の問題(実際に発表されている量なのか)や透明度の問題(実際起こっている事が発表されているのか)などは無視して考えてみるぞ。「はっきりしていない」から「確率的影響」という言葉が使われる(反対に「はっきりしている」レベルだと「確定的影響」になる)。註2に書いたとおり、これらの影響は仮説であり、だれも「このレベルだと問題ありません」とはいえないぞ。正しくは「このレベルだと問題がでる可能性が低い・極めて低い」だろう。この背景があるから「本当か?」になるのではないかと思う。』

一般人口では低量被曝が一番身近で関心があるものと考えられるのが、病気と関係があるからです。ニュースでみる内部被曝や甲状腺癌などですね。でも、医療の現場にいると患者さんがあまり気にされていないのが諸検査(註3)による人工被曝です。忘れてはならないのが、検査による被曝はその検査の所見による情報(病気の確定など)のメリットがデメリットを上回ると判断されるから指示するものであって、手放しで喜んでしてもよいものではありません(註4)。このコラムの24人の読者様(註5)も検査する時、検査を希望する時、は是非この事を念頭においてもらいたいものです。

  • 3:レントゲン関連、CTスキャン、核医学、マンモグラフィーなど。詳しくはICRP International Commission on Radiological Protectionの勧告を参照。検査のみではなく、勿論治療用の放射線も同じ考え方をする。
  • 4:例えば癌のリスクが少ないのに「癌検診」と称して全身CTで被曝するのは本末転倒ではないだろか?
  • 5:そうです、今月から読者様が二人増えたのです。新規に読者であるとお二人より直接申告がありました。深謝!

日本人は我慢づよい。そして胃ガンが多い。関係あるのかな?

By: Kazusei Akiyama, MD


2011年04月

今月のひとりごと:『日本人は我慢づよい。そして胃ガンが多い。関係あるのかな?』

このたびは東日本大震災に被災されました皆様に心よりお見舞い申し上げます。このコラムの22人の読者様のご親族にもいらっしゃるかも知れません。心配です。一日もはやい復興をお祈り申し上げます。筆者はたまたま災害発生直後に訪日したのですが、被害の大きさもさることながら、被災者たちの自制が目につきます。日本人の大変困難な状態な中でも整然と救援物資の配給を受けたり、避難所生活をしている姿は海外のメディアでもたくさん紹介されました。

『しかし本当に日本人は我慢が強いと思った。これは絶対に良性の特徴であるぞ。でなければあんなに狭い所で大人数が一緒に生活出来ない。しかしその反面、「ストレスが溜まる」事になるよな。ただでさえ発散が下手な民族が今回のような自粛ムードになってしまうと、さらに溜まるのでは?』

ストレスは癌と関係があるとされてます。日本人は世界でもダントツに胃ガンが多い民族です。米国の白人と比較すると、10倍から15倍発症率(註1)が多いとされてます(註2、註3)。完全な胃ガンの原因は不明ですが、食生活と生活環境が関係あり、近年ではピロリ菌の関与が指示されてます。

『この生活環境というのが大部分ストレスと関係あるのではないかと思われる。邦人が日本を離れて生活するだけで胃ガン発病のリスクが23倍減る試算がある論文もあるぞ。それでも多いのだな。まだすべて解明されていないけど、ピロリ菌感染に対する反応が遺伝子レベルで欧米人と異なることがわかってきている。日本の胃ガン検診は世界で一番進んでいるプログラムであるが、そのため早期発見と早期治療が可能になり、悪性腫瘍による死因の第一位ではなくなった(註4)。胃ガンの発病率は40才くらいから増え始める。この年齢になったら毎年の定期健診では必ず胃ガンの検査は受診してもらいたいな。(註5)』

最後に、今回の大震災にあたりブラジル人の友人達の見舞いのメッセージに出てくる、主に被災者された日本人像の形容詞・名詞をリストアップします。日本人はこのように見られているのですね。イイ言葉が多いと思います。

1:発症率とは人口10万人の内、1年間でどれだけの人数が対象の疾患に新規発病する指数。

2:日本人の胃ガン発病率は約11010万人、北米白人は約7/10万人。

3:ちなみにブラジルでは北(アマゾン地方)が少なく、南に行くほど多くなる。サンパウロ州では約2410万人。日本よりかは少ないが、北米白人の3倍以上。

4:日本人の悪性新生物による死因:男性:第1位肺ガン、第2位胃ガン、第3位肝臓ガン、第4位大腸ガン。女性: 1位大腸ガン、第2位肺ガン、第3位胃ガン、第4位肝臓ガン。

5:バリウム検査は技術的に優れている日本以外は検診に利用できない。ブラジルでの健診では胃カメラを実施すること。


美女でも…どうしても冷めた目で見えてしまうのだな。第二弾

By: Kazusei Akiyama, MD


Can I go there? São Paulo. Caju©2010

2011年03月

今月のひとりごと:『美女でもどうしても冷めた目で見えてしまうのだな。第二弾』

お~。先月からこのひとりごとで続けるとは?ネタ切れ!とこのコラムの22人の読者様に思われても仕方ありませんね。今月はカーニバルがあるのでそれにちなんだ内容です。美女なモレーナがたくさん出てくるでしょう?例えばエスコーラジサンバのハイーニァダバテリア(註1)の紹介等にに名前年齢出身地や身長スリーサイズがありますが、よくみると300mlとか400mlと容積が明記されている事があります。これが今回の「冷めた目」です。そう、豊胸手術で使用されたシリコンインプラントの大きさなのですね。

  • 1Rainha da Bateria de Escola de Samba. 直訳すると「サンバ学校の楽団の女王様」ですな。男ばっかりの楽団の花の役割。

日本人でなくてもギョッとする明記ですが、ここ20年で美容形成手術に関する社会的概念がすっかり変わったのではないかと思われます。美容形成手術が世界で二番目に多く行われているこの国ですが、これには事情があります。その一番がトロピカルなお国柄肌を露出する機会が多いため美容に関する意識が違う、二番が当地の外科医の腕が世界基準から見ても高い、三番が比較的安価で処置を受けられる、だそうです(註23)。

  • 2:一番多いのが米国。
  • 3:これには文化的な違いがあると愚考する。庭園が良い例で、フランス式や英国式庭園は自然を人工的な形に作り上げるが、日本式や中国式は自然を模擬する。つまり、欧米文化では自然は支配するものであって、東洋文化では共存するものであると考えるのではないだろか?それがこの様な行動にも表れると思う。

早い話、ブラジルでは立派なおっぱいはまず人工と疑っても間違いない。それほどポピュラーな処置になってる。 毎年10%の成長率だそうだ。このまま進むとブラジルの美女は美容手術の作品になってしまうのでは?ちなみに2009年度の調査では年間645千件の形成手術が行われ、約7割が美容外科であったのだな。元々形成外科とは傷や変形をきれいに治すのが目的の専門であるのだが(再建外科と呼ばれる)、美容外科の需要が多いのが現状。最近一番多いのがくだんの豊胸手術で約24%、次が脂肪吸引で約15%。ブラジル形成手術学会によると1990年代までは乳房の手術は縮小がほとんどだったそうだ(註4)。堂々とシリコンインプラントと言えばオカマがするものだったと記憶している。それが最近は女性がして当然の様子になってきた。それも爆弾タイプがいいらしい。インプラントメーカーの話によると当地では乳癌の手術後の再建に使用される自然な形の物ではなく、「尖った、オカマ好みの」ものが圧倒的に需要があるとの事だな。あちこちいじる(註5)のは本人が納得しているからいいと思う。見た目が良くなる以上に自尊心が向上するのが一番の効果だろう。医学的にみて問題点や副作用(註6)などもあるけど、ブラジルのちゃんとした病院では確かに外科の腕はいいので最近は医療ツアーが組まれているのも社会現象だな。関心のある方はブラジルでの手術は要検討ですぞ。ちなみに筆者は人工おっぱいは嫌いです(註7)。』

  • 4:ごく最近まではブラジルの美女像は「胸が小振りでおしりと太ももが大きい」だったのだな。服装もその体系に合っていたし。いつから変わったのだろう。
  • 5:その他の美容外科処置の上位部位は:腹部、目蓋、鼻、顔全体、耳。
  • 6:シリコンインプラントの一番大きい問題点は耐用年数です。最近は破裂しても流出しない材料や施術方法などの進歩がありますが 一生ものではありません。副作用としては皮膚の縫合痕が残る場合があるのと、インプラントの周囲に炎症がおこり、組織が硬化してしまう、痛みがあるなどです。またこの慢性の炎症のため希にガンの誘発原因になっているのではないかと指摘されてます。
  • 7:さわると痛がるし、それ以上に冷たい(血流がないから周囲の生きた組織より温度が低い)のが嫌いだな。

美女でも…どうしても冷めた目で見えてしまうのだな。

By: Kazusei Akiyama, MD


2011年02月

今月のひとりごと:『美女でもどうしても冷めた目で見えてしまうのだな。』

いきなり持ち上げて突き落とすひとりごとはいったい何事か?と心配になったこのコラムの22人の読者様、大丈夫です。別に変になったわけではありません。筆者が薬局に行った時の一コマを発展させようといった魂胆です。今週近所の薬局に入ろうとした時に美人なモレーナがちょうどお店を出る所で、目が合い、向こうは「お、カッチョイイ日系のおっさんだな」と思ったのかにっこり笑ってくれました。押せばひびく感じで0.01秒くらい嬉しくなったのですが、手元を見るとプラスチックのたらい(盥)を持ってますし、薬局から出てきた状況を考え合わせるとまず第一に頭に浮かんだのが「お、美人じゃん」ではなく、「ああ、膀胱炎か腟炎か痔がこじれているのだな」だったのです(註1)。

  • 註1:「カッチョイイおっさん」とはとても主観的な見方であり、「お、ちょうど良いカモだな」と美女が思ったとの一説もあり。ま~どっちにしても気分が萎える状態であったことは間違いありませんな。

『そう。内科医をやっていると探偵のような頭になるのかな?つまり断片的は情報をつなぎ合わせて意味のある説明=診断をする。この場合、女性+たらい+=「ああ」になった訳だな。 また、美人であるなしに関係無く膀胱炎や腟炎や痔になるのですな。ブラジルではbanho de assento 註2)と呼ばれる治療法があり、日本の腰湯(註3)に似ているのだが、たらいに湯と薬を入れ、おしりだけ漬けるなんとも人様に見られたくない治療があるのだな。で、これが前述の病気治療に使われる。いきなりではなく、色々やってだめだと、「じゃあbanho de assentoでやってみましょう」といった感じで処方される。この美女さんもかわいそうにこじれているのだな~、と思ってしまった。腟炎と女性の関係は説明しなくても当たり前だな。なぜ膀胱炎かというと若い女性に多いから(註4)。あと痔は性別に関係無いように思われるけど、経産婦は痔になる可能性が高いのだな(註5)。筆者は単に漬かる事によるお薬の塗布だけではなく、温かいお湯が陰部の血行を良くし回復を促進させるのではないかと思う。日本では(その気になれば)毎日お風呂に入れるけどブラジルの生活では普通無理。どうしても腰が冷えた時に一度薬なしでもいいから( 註6)ためしてみてください。』

  • 註2:発音は「ばんにょであせんと」、直訳すると「座浴」ですな。
  • 註3:腰湯は東洋医学の考え方。薬湯ですることが多い。腰とお腹を温める目的がある。半身浴とはちがい、45℃前後の高めのお湯が使われる。今回の例のような少ない量を使う場合、座湯とも呼ばれる。
  • 註4:これは尿路感染では最も多い「急性単純性膀胱炎」のはなしで、尿道の短い女性に多く、会陰部に常在する大腸菌が原因であることがほとんど。他に「慢性複雑性膀胱炎」があるが、こちらは高齢者で男性のほうが多い。
  • 註5:妊娠により、下腹部の容積が増え、直腸肛門部静脈の下流にある下大静脈系が圧迫され流通障害がおきやすいため。
  • 註6:漢方薬などを使う手もありますが、入浴剤を入れると簡単にできていいです。ただし、頭や手足が濡れたままでやると冷えるので、身体が乾いた状態で座浴しましょう。

年末年始で太った分は運動して痩せる…かな?

By: Kazusei Akiyama, MD


2011年01月

今月のひとりごと:『年末年始で太った分は運動して痩せるかな?』

このコラムの22人の読者様、明けましておめでとうございます。旧年中のご支持ありがとうございました。今年もがんばってぶつくさひとりごとする所存ですので引き続きよろしくお願いいたします。さて1月は体調がいつもと違っている事が多いです。そして、年末年始の食べ会や旅行シーズンで体重が増えている可能性が大だと思います。カロリーの摂りすぎといろんな行事で忙しいので運動不足になる時期なのですね。健康の話では必ず運動(不足)が出るのですが、運動とはいったいなにか?のひとりごとです。

『要するに身体を動かす行為であるが、健康上、生理的効果、精神的効果と社会的効果があるのだな。生理的は疾病予防が一番わかりやすい。運動をしない事によって悪化する「太ること」はいろんな病気のリスクが増える(註1)。また、長寿の秘訣である「血行をよくする」行為の一つなのだな。精神的効果はうつやボケの防止がいろんな研究で解明されている(註2)。社会的効果は社交性が増すことだな(註3)。運動は急性と慢性、有酸素と無酸素、にも分類できる。短期的・長期的な効き目と体への負荷のかけ方の話だな(註4)。これら三つの効果といろんな分類が組み合わさって健康のためになる。一般的に運動不足にならないようには「毎週3日以上、一回45分以上運動しないといけない」といったような厚生労働省の運動指針などがあるが、去年米国の心臓内科学会の指針見直しでは「毎週5日以上、130分以上歩く、2回に分割してもよい」ことになった。これって朝15分と夕方15分歩けばよいわけではないですか。反対を言うとこれっぽちも運動してないぞという意味ですな。ブラジルの都会部で生活をすると歩くことが減るので運動不足になることはあっても増えることはないぞ。皆さんはこの基準以上の運動はされてますか?ちなみに年末年始の増加分は運動で取り戻すぞ!と決心された方、40分早歩きしてもコーラ1缶程度のカロリー消費しかしないので、同時に口を閉じないと減量しませんよ。』

 

註1:運動不足と明らかに関係のある疾病:肥満、2型糖尿病、高血圧症、高脂血症、脳梗塞、虚血性など心疾患、骨粗卒症、ボケ、うつ。

註2:例をあげると、運動をすることでインスリン様成長因子(IGF-1)生産され、脳由来神経栄養因子(BDNF brain derivated neurotrofic factor)が刺激される。BDNFと関係があるのが記憶、学習能力であり、これらの低下はボケ(の一種)である。

註3:運動するのに出かける、団体運動で社交活動が増す、など。

註4:急性の運動は脳の活動を活発にする。慢性の運動は心理的な達成感を満足させる。


平熱が低いんです…では良くないぞ!

By: Kazusei Akiyama, MD


Handroanthus albus (ipê amarelo). Gouveia. Caju©2009

2010年12月

今月のひとりごと:『平熱が低いんですでは良くないぞ!』

筆者の臨床現場でとても気になっているのが患者さんの体温です。 今年女性で34.2℃というのがありました。いわゆる「低体温」と呼ばれる状況ですね。 全体的に体温が低くなっていることは間違いないようです。 あまりデータがないのですが、日本人の場合、子供と老人の1/3が低体温であろうと推測されてます。大人のデータは見あたりませんね。30%以上だとするとこのコラムの22人の読者様のうち7人は低体温の計算になります。低体温は正常体温(註1)より低い状態と定義されますが、実は「たかが平熱が低いだけ」では済まされないのです。そして、済まされるべきではないのです。公衆衛生政策に取り入れられてもおかしくないと筆者は思います。

  • 註1:正常体温は測定方法によって数値がちがう。外気温の影響を受けにくい体内の深部体温は37.0℃前後;表層体温では舌下が36.8℃前後、腋下が36.4℃前後(いずれも±0.5℃程度の誤差がある)。子供はやや高め、お年寄りはやや低め。若干日中変動があり、朝起きた時が一番低く、午後3時頃ピークで夜にむかい下がっていく。

なぜ人間は体温があるかというと、恒温動物であるから。体温を自力で維持できるのですね。理由は生体内のいろんな化学的反応が効率よく行われる温度というものがあり、これが制御できると、生物として生活能力・生活圏が大きくなります(註2)。 通常の体温は食べ物の化学分解によって発生し、血液とともに循環します。 調節はホメオスターシス、生体恒常性とよばれる自立神経機能によります。 ヒトの場合、 手足の末梢の血管を収縮や拡張させて調整を行います。

  • 註2:その証拠に人間は北極圏から赤道まで生活が可能である。

『まず始めに「低体温」「低体温症」「冷え性」の違いを理解する事だな。「低体温症」は冬山遭難など事故で発症することがほとんどであるな。医学的に使う手もある(体温を下げて障害を受けた脳を保護する脳低温療法など)。「冷え性」は手足末端が冷たく感じる自覚症状が必須である。「低体温」は自覚症状がない。体温測定して初めて判明する。冷え性では生体を維持するのに重要な内臓の深部体温を優先させる機能がちゃんと働いているのだな(註3)。低体温ではその機能が働かないので、どんどん放熱する。内臓から冷えていることも多い。体温が低いと基礎代謝や免疫力が低下するのだな。疲れやすくなったり、むくみがとれなかったり、痩せにくくなったり、風邪をひきやすくなったり、ガンになりやすくなったりするぞ。体温が1℃下がったら免疫力が2/3になる試算があるのだな。表に低体温の主な原因と理由、対策を示す。平熱35.9℃以下の方は一度生活の見直しをしたほうがいいぞ。病気になる前に。』

  • 註3:末梢循環は放熱するので、血流を減らして熱を内部(深部)に回す。

©秋山一誠診療所


医は仁術なのか?

By: Kazusei Akiyama, MD


2010年11月

今月のひとりごと:『医は仁術なのか?』

このコラムの22人の読者様、 季節の変わり目で体調を整えにくい今日この頃ですが、皆様お元気ですか?今月はとある患者様が「医は仁術でしょう?だから診察費は安くないといけない。」と発言されたものをひとりごとします。

『「医は仁術(なり)」を広辞苑で引いてみると「医は、人命を救う博愛の道である」とある。もともと中国の明時代の記述であるが、日本では貝原益軒が江戸時代に「養生訓」に用いた定義が一番有名であろう。つまり「わが身の利養のみ志し、人をすくふに、志専ならず。医は仁術なり。仁愛の心を本とし、人を救うを以て志とすべし。」といった理論になるわけだな。病気になると必ず不安がついてまわる。普段であれば問題のない判断でも上手くできなくなる。要するに困っているところに付けこんではだめだぞということだな。医師と患者の関係はどうしても上下になりがちなので特に気を付けないといけない。ところが実際はそうではないのだな。「医は算術」なる言葉が出現したのが証拠でしょう。つまりお金持ちを優先したり、利益の多い処置を選択したり、売名できる状況を喜んだりすることが多々あった(ある)のだな)(註1)。筆者の仁術の解釈はポイントは仁愛の心であり、人が好きで人を助けるのを良とする心が第一ではないかと思う。利益目的の医学であってはならない。利益は患者にとって最適の医学を実施した結果であるべきなのだな。しかしそうではない経験が皆さんにはありすぎるのだな。だから頭の中での理解が仁術から算術に変換してしまい、総じて医療費は高いといった意見になるのではないだろうか(註2)(註3)? 反論するとわが身の利養を考えるなとは貧乏をしろということではないと考える。日進月歩の医学で最も重要なのは最新の知識を手に入れることであると思うが、これにはほどほどお金がかかるのだな(註4)。最低限の収入を考えると、安価で多人数を診るか、高価で少人数を診るか、このどちらかになってしまうのだな。皆さんは安いけど勉強もしてない(しない)(できない)医者に行きたいですか?』

 

註1:医は算術で圧倒的に有名な小説は山崎豊子の「白い巨塔」でしょう。22人の読者様たちにはお勧めします。少し前の時代の話ですが、根本は変わってません。こんな医療システムに自分の健康を委ねて大丈夫なのか疑問に思いますよ。

註2:もちろんこの現象の一番の責任は医師にあり!

註3:最近の医療費は高い。でも医師の報酬が高価ではなく、検査費用や処置費用などの医療の高度化のため費用の高騰が主である。また、三分診察で代表される保険診療も医療費を高くしているのだな:診察時間が少なすぎる(理由は診察報酬が低いので ー日本の場合、初診の基本料金は2700円(約35米ドル)ー 多人数診ないと経営がなりたたない)ので考える時間がなく、検査ベースで考察をしてしまうのだな。検査の方が高額なのに。

註4:ちなみに筆者は最新の医学書が購入できない収入になった時点で医業は廃業と考えてます。


海水浴をして免疫力を高めよう

By: Kazusei Akiyama, MD


Morro Dois Irmãos. Cacimba do Padre Beach. Caju©2010

2010年10月

今月のひとりごと:『海水浴をして免疫力を高めよう』

このコラムの22人の読者様、皆様お元気ですか?先月はお休みをいただきました。休暇中にはノルデスチ地方の某所でダイビングを楽しんで来ました。久々に海に潜って、その時つくづく思ったのが「人間の免疫力はすごい!」でした。なぜだか説明します。一度ダイビングしてみるとわかるのですが、どれだけ美しくて汚染のない海でも、明らかに大変な量の生物、微生物、浮遊物があります。魚介の生活代謝物はあるし、ワカメのような藻類や、辛うじて肉眼で見えるプランクトンやクラゲ類、見えない微生物、海水に溶けているミネラルなどなどです。 海水を舐めてみると色々な味がわかります。 それだけ「汚い」ところに入っていって大丈夫なのが今回のひとりごとです。

『そう。大丈夫なのだな。透明度の高い海に潜ると「汚い」のがよ~く見えるぞ。とにかく潜水作業そのものが忙しいので始めは気にもならないのだが落ち着いてくるとゾッとするぐらい生物がいるのだな。目の前できれいな熱帯魚がブリッと排泄してるし。でその中をゆらゆら移動している間に思ったのが、これだけ周りが「異物」だらけでも人間病気にもならないだけの免疫力をもっていることだな。抗菌抗菌といろいろあるが、あれはいったい何なんだろう?ダイビングしながら思ったのが、アトピー性皮膚炎に海水浴療法なるものは(註1)、これは適度な汚れが効果があるのではないか?海水には塩分を始めいろんなミネラルが溶けているのでそれがアトピーの皮膚に良いのではないかとされているが、筆者はそうは思わない。その証拠に塩水療法(註2)が無効の場合でも海水では有効例がいくらでもあるのだな。秋山説は二つ:①適当に汚い水が免疫力を高め、かつ正しい作用に導く、②海水浴は温かい所で行うので冷えが改善される(註3)。日本の小学生のアトピーの有病率は約10%とされているが、場所によっては3人に1人も有りうるそうだ。後進国では無い疾患だな。ブラジルでも少ないぞ。また、一昔はアトピーの85%が成人すると治っていたが、最近では大人になっても20%しかなおらないといったデータもある。これはアトピー要因が増えたのと、治癒する機会が減ったのと、主にステロイド使用で治るのが遅くなっている(あるいは治らなくなっている)のではないだろか?この内、治癒機会として海水浴が重要であると思いたい。アトピーでなくっても免疫には絶対にいいからこれから暑くなる季節なのでどしどし海に行ってもらいたいな。(註4)』

  • 註1:海水療法または海洋療法。正式にはタラソテラピーと呼ばれ、20世紀の初めヨーロッパで始まったレキッとした医療行為。でも日本では「タラソ」は癒し系・エステっぽいアプローチ。
  • 註2:食塩とミネラルを溶かした水で身体を洗う方法。
  • 註3:東洋医学的に診ると、アトピー患者さんは総じて冷えているのだな。炎症がおこってほてっているのに。いわゆる虚熱なのだ。これを西洋医学ではさらに冷やすので絶対によくならない。
  • 註4:日焼けには注意しましょう!

酒は百薬の長、にはなってないよな。

By: Kazusei Akiyama, MD


2010年08月

今月のひとりごと:『酒は百薬の長、にはなってないよな。』

東洋には古くから「酒は百薬の長」という言葉があります。実際ゆっくりと香りとコクなど味を楽しむ、酒席(コミュニケーション)を楽しむなどリラックスできますし、医学的には適量であれば末梢血管を拡張させ、血行をよくする作用など良い面は多々あります。でも現在の生活環境ではどうなのでしょう?結論から言うとカロリー摂りすぎの重要な要素になっているのではないかと思います。表の一般的なお酒とカロリーを見ると、例えばウイスキー1ショット125カロリー(成人男性の1日の必要カロリーの約7%)で、数値的に見るとそんなにとんでもなくはないのです。オレンジジュース(生)で1110カロリーぐらいなので比較してもカロリー量としては殺人的ではありません。問題はカロリー量ではなく、それの取り方です。一晩でオレンジジュース56杯は飲まないですよね。ところがウイスキーを56ショットは心当たりのある方は結構おられるでしょう。また、黙々とウイスキーを飲むということはありません、必ずおつまみだの食事だのさらにカロリーが取り込まれます。下手をすると、夜の一食で一日の必要カロリーを摂取していたりします。

『さらに、お酒はストレスの発散に使用されるので、「楽しむ程度」ですまないことが多いのだな。元のストレス自体も身体に悪いし。ブラジルだとカイピリーニャが好きな邦人が多いのだが、1300カロリーだぞ!このような環境でメタボになるなといっても無理かな?』