あ~もうツケが廻ってきたのか…

By: Kazusei Akiyama, MD


2012年12月

今月のひとりごと:『あ~もうツケが廻ってきたのか…』

皆さんお元気でお過ごしでしょうか?師走になりました。今月のひとりごとは、一年のツケでも、飲み屋のツケでもありませんよ。ブラジルの「まともな教育がない社会」のツケの話しです。医療と関係ないとは言えません。

『当地では義務教育は6歳から9年間ある。Ensino Fundamental、基本教育と呼ばれるものだ。そういうことになっているが、実際には4年だけというのが内地にいくと結構多い。これは昔小学校と中学校の制度があり(註1)、どちらも4年ずつだった名残だそうだ。つまり、地方には小学校しかなかった。で、ず~とそのままで、1996年に法律が変わり、最低8年間学校にいかんとあかんよ(註2)、となっても絵に描いた餅状態になっているのだな。筆者の親友にミナス州教育局の上級職員を拝命されている女史がいるが、日本とも交流があり、関心が高い。先日でていた疑問が、日本の小学校(市立や区立などいわゆる公立)は「ある時点でグレードアップして中学校になるのか」だった。事情が分からないと「へ?」になるよな。で、事情は田舎が多いミナス州、つまり、くだんのず~と4年しかなかった学校を毎年1年ずつ足していき、9年まで到達することをやっているわけだ。そこで、日本でも同じように足していってしまいに次のステップの学校になるのかという質問なのだな:

「いや、小学校のままだよ。」

「じゃ、中学校はどうするの?」

「別に今から造らなくても、もうあるよ。」(註3) 

彼女は教養が無いわけでもないし(註4)、世間知らずというわけでもない。要するに感覚の問題になってくるのではないかと思う。2008年のUNESCOのEFA Development Indexなる各国の教育開発指数によると(註5)ブラジルは調査された127カ国中88位であった。中程度の指数とされ、ましなアフリカの国なみ。南米ではエクアドルやボリビアより下位。実社会では要するに、「教育不足」だな。これが経済大国になり、社会活動するために色々ややこしいことをしないといけなくなってくると、スキル不足になってしまっている。間違いなく。(註6)』

20人の読者の皆さんは全般的なサービス低下を感じませんか?金融や小売業では顕著ではないでしょうか?医療に関しても、検査での受付がでたらめであったりします。アテンドする人によって対応が違いすぎます。信用があるとされている大手の検査機関F社でもそうですよ。サービスの内容は各自でチェックするしかないですね。教育不足は他に外食産業などでも現れます。食品の扱いが分からなかったり、間違っていたりすると食中毒の原因になりかねないです (註7)。この問題、教育不足に関してはこうしたら良いだろうと、筆者も提言のしようがありません… でも予言はできます:「もっとひどくなるでしょう」。


註1: 1971年に廃止。

註2: 2010年より9年間。

註3: 日本は増やすどころか、デフレ・少子化社会で、学校の統廃合が行われていますよね。

註4: 教育論で大学院出ているのだな。

註5: ほかにも指数が色々ありますが、ここではこれを使います。毎年リポートが出ていて、今年版もありますが、最後にまとめがあったのはこの2008年版です。学校に行ける状況(平等性)が大きいほど、文盲率(教育欠乏)が低いほど指数が高い。ちなみに1位日本、2位英国、3位ノルウェー。

註6:ところが、現在の好景気のため、仕事にはありつけるので、「この程度」のスキルで十分だと勘違いする人間が増えている。ましてや、自分は勉強などしなくてもここまで来たのだと自慢する元国家元首の国だから、勘違いが加速する。そのため、実はなにもできないくにせ努力もせず、少し先でもっと高度な社会になった時に取り残される今の若い人たち、ロストジェネレーションが出るのではないかと言われている。

註7:一番確率が高いのは消化器寄生虫感染だな。「トイレに行った後、ちゃんと手を洗う」といった教育すらできていない。


サンパウロ在住は運動不足になりやすい。

By: Kazusei Akiyama, MD


2012年11月

今月のひとりごと:『サンパウロ在住は運動不足になりやすい。』

日本では10月8日は「体育の日」でした。運動会の季節でもあります。国民の祝日に関する法律では体育の日の定義を「スポーツにしたしみ、健康な心身をつちかう」とされています。この場合、「したしむ」とはスポーツ観戦するのではなく、参加することですよね。運動の重要性は今更宣伝する必要はないと思いますが、しかしかえって当たり前すぎて日常では忘れがちになるのではないでしょうか?

『まずなぜ運動しないといけないかというと、「人間は植物ではなく動物であるから」だな。当然でしょう!とお叱りの声が聞こえるようだけど、簡単にいうとそうなのだ。つまり、動く事が大前提の生物であり、すべて生理現象はこの前提に準じている。動かないとちゃんと体が機能しませんよ、ということだな。以前にもひとりごとした低体温などはその例で、運動しないから体温が正常範囲で維持できなくなり、今度はそのため代謝や免疫機能が正常に働かなくなる。』

それでは運動不足の定義は?というと、これがはっきりした科学的なものがありません。一般的には「1回30分以上の運動を週に3回以上」で解消(註1)されると言われます。医学的には一番有名な説は「週間消費カロリーと摂取カロリーの差が2000kcal以下の場合、運動不足と定義」(註2)されるもので、この2000kcal以上を週3回以上に分けて運動で消費するのが理想と考えられてます。

『この2000キロカロリーというのが結構多いのだな。仮に4回に分けると、1回500kcalになるのだが、時速6キロの早歩きで2時間くらい運動しないと消費しない。きついですな…毎日、つまり7回に分けると約300kcalで、80分くらい。これもできるかどうか?ただ運動イコールカロリー消費ではなく、関節を動かす、柔軟や 筋力を維持する、有酸素活動をするなど、メニューの内容も重要なのだ。仮に無酸素運動である筋トレを300kcal分毎日してもいわゆる運動の効果は100%ないぞ(註3)。』

一番手っ取り早いのが歩くことなのですが、サンパウロに住んでいると自動車移動が多くなるので(註4)、それもしなくなります。よほど「気にして」、「時間もかけ」、運動に取り組まないと、あっという間に運動不足になってしまうということですね。このコラムの20人の読者様は運動充足してますか?(註5)


註1:「運動充足」とでもいうのでしょうかね。

註2:ハーバード大学卒業者を対象に研究されたもので、1986年にNew England Journal of Medicineという重要な医学雑誌に記載された論文で定義。この2000kcalは成人男性の数値であったが、その後の調査で女性も同じ数値であると発表されている。この研究では運動不足の男性はそうでない群と比較したら各年齢帯で死亡する確率が31%高いことが判明した。

註3:秋山説では運動の一番の目的は「血行を良くする」です。これには有酸素運動が必要。

註4: 公共交通機関が不足;治安の問題;高低差がある地形などのため。

註5:運動不足になると、肥満になりやすくなる。メタボにも。そこから糖尿病や循環器系の病気なども。精神病とも関係あるぞ。痛み(肩こりや腰痛)も。不眠症も入るな。また、骨祖そつ症と大関係がある(これは別途ひとりごとします)。


すぐ、半年目、一年目、に注意が必要です。

By: Kazusei Akiyama, MD


Ipê Roxo. Amparo. Caju©2014

2012年10月

今月のひとりごと:『すぐ、半年目、一年目、に注意が必要です。』

皆様お元気ですか?気候が不順で、寒いのか暑いのかよくわかりませんね。この調子では体調の維持が大変です。さて今月のひとりごとで何の注意かと言うと、「当地に長期滞在する場合、体調不良になりやすい節目」についてです。開業も17年しているとサンパウロ駐在でいつ病気になりやすいかのパターンが判明してきます。

『*すぐに。これは当地に到着してすぐにということだな。大体1ヶ月以内なのだが、2週間目あたりが要注意だと思う。海外引っ越しの疲れやストレスと直結しているパターンだな。実質引っ越しは大変な労力を要するし、まして数年以上海外に転勤となると出発前に日本でやらないといけない業務が増える。大概この引っ越しは家族の内、妻が担当する事が多いので(註1)、この期間は女性が倒れる。小さな子供さんを抱えたお母さんや日本で仕事を持っていた妻(註2)が犠牲になりやすい。

*半年目。これは駐在3か月目から6ヶ月目の期間だな。実はこの期間が一番体調を崩しやすい。引っ越しの疲れがあり、新生活もまだ慣れず、ブラジルは治安が悪いと驚かされビクビクしているうちにぶっ倒れる。このパターンでは子供も含め家族のだれにでも起こり得る。

*一年目。これは1年ほど過ぎると、新生活にも慣れて、ホッとして気が緩み体調を崩すパターンだな。どちらかと言うと、お母さん方に多い。しかし、この一年目には、お父さん方が故障することがある。あまり診ないけど。その場合業務内容や人間関係など仕事と関連するストレスが高じて、病気になるのだ。症状が激しい事が特徴の一つかも。』

  • 註1:夫は先に現地入りし、住居をはじめ生活基盤の手配などの担当がパターンかな。
  • 註2:仕事の整理などで忙しい上に、引っ越しが…

新生活の慣れなどと関係のある「病気」ですから、海外生活が長かったり、何度も駐在経験があったりする方や家族のほうがなりにくいですね。一番よく診る疾患はいわゆる風邪ですが、元々持病があったり、病気の傾向があったりする方はそれが悪化したり発症したりすることもよくあります。 したがって、初めてサンパウロ(あるいはブラジル)に駐在の方は要注意だと考えます(註3)。このコラムの20人の読者様は大丈夫ですか?

  • 註3:人生の3大ストレスは「引っ越し」「離婚」「死別」とされるが、その一つであるため。

『また今月のひとりごとにも「ストレス」が出てきたぞ。ストレス自体は悪いモノではない。異常事態に対応する生理的反応であり、この反応のために我々の先祖は恐竜のランチになるのをふせげたのだ(註4)。だから適度なストレスは仕事などの効率を上げるが、極度になると疲弊して低下する(註5)。 反対に気が緩んでもよくない。じゃ~どうしたらいいの?と聞かれるのだ。適当に気が張った生活を目指す。これだな。』

  • 註4: 恐竜時代、捕食者に対してストレスを感じなかった哺乳類はあまり子孫を残していないはず。
  • 註5: 前者はeustress、後者はdistressと呼ばれる。

加湿器はこわいぞ!

By: Kazusei Akiyama, MD


A dry day in São Paulo. Caju©2012

2012年09月

今月のひとりごと:『加湿器はこわいぞ!』

このところ、サンパウロではずっと雨がふりません。この原稿を書いている時も、雨なし41日目です。これでは空気も乾燥しますね。先週は3年ぶりにすごく乾燥した日があり、湿度10%でした(註1)。このような状態が続くと、乾燥性皮膚炎や乾燥性結膜炎などの疾患が増えます。さらに日本を含む、湿度と温度が低い冬期の場所ではインフルエンザウイルスが繁殖します(註2)(註3)。空気乾燥の対策は室内を加湿することになります。しかし、ここに大きな落とし穴があるのです。

  • 註1:砂漠なみの湿度です。因みにその日は診察室内で湿度32%でした。
  • 註2:インフルエンザウイルスが繁殖するには、低温+低湿度+暗いの3条件が揃った状態が一番。ブラジルの場合、冬期の乾燥は晴れて(明るくて)乾燥していることが多いので、条件が揃う期間が北半球ほど長くないのだな。
  • 註3:サンパウロの場合、この乾燥時期に光化学スモッグが出現するので、さらに結膜炎や慢性の呼吸器系疾患が悪化する状況になる。

『元々日本など冬が厳しい所ではストーブの上にヤカンを載せて蒸気を作っていたのだな。ところが加熱式加湿と呼ばれるこの方式(註4)は、火傷の危険があるということで、電気メーカー製造の「加湿器」が普及した。「超音波式」と呼ばれる器械で、熱を使わない、電力消費が少ない、安価ということで、パチパチ、素晴らしい!ように見えたのだが、これが実は恐ろしい器械であることがその後判明した。常温の水を使うため、水に含まれる雑菌や加湿器のタンクに繁殖するカビなどをまき散らし、病気をおこす。昔の蒸気方式は水を沸騰させることによって殺菌していたのだな。細菌を吸い込んで細菌性肺炎になったり、カビのためいわゆる「加湿器病」になったりする。後者は厳密な医学用語では「換気装置肺炎」(註5)で「過敏性肺炎」の一種と定義され、カビを吸入することが原因のアレルギー性肺炎だな。さらに、ブラジルの住宅は漆喰や煉瓦など吸湿性の高い建材で作られいるためいくらでも水分を吸収してくれる。そこからカビが発生し、さらに状況が悪化する(註6)。』

  • 註4: 家庭向けの器械の代表的な方式は:スチーム式(加熱、ヤカンと同じで電熱でも)、気化式(非加熱、濡れタオルと同じだな)、超音波式、ハイブリッド式(複数の方式で欠点を補う)。
  • 註5: 換気装置肺炎は加湿器関連と空調関連(エアコン病)がある。
  • 註6: この場合、建材が水分を吸収する状況は加湿の方式と関係がない。日本では室内では防湿性の壁紙を使用することが多いので、建材の吸収が少ない。両方の場所で同じ器械を使ってみた方はタンクの水の減り具合が違うことに気づいているはずです。

『こうなると、なぜ加湿器を運転しているか解らなくなりますね。室内を快適にするのや、病気の予防などに使っているはずなのにかえって病気の元になっているかもしれません。』

超音波式の恐ろしいところは、清掃を仮に毎日しても、清掃と清掃の間の24時間で雑菌が繁殖するには十分という事実でしょう。なので、ちゃんとしたメーカーでは最近この方式での器械は作っていないそうです。医学的に一番よいのは方式はともかく、殺菌機能がついたものだと言えます。また、加湿する室内の湿度をモニターすることも重要です。患者さんの話を聞いていると、「加湿することは良いことだ」といった概念が一人歩きしていることが多々見られ、湿度と関係なく「なんとなく」運転している場合が結構あるのではないかと思われます。また夜中に喉が渇くといったような症状のため、就眠時に利用している方もおられますが、必ずしも乾燥とは関係ありません(註7)。高価なモデルになると、湿度計が付帯していて、自動的に運転の調整をしてくれるものもありますが、このコラムの20人の読者様の自宅ではどのような方式をお使いでしょうか?いずれにしても正確な湿度計で湿度の確認をすることは各家庭に必要でしょう。ちなみに人間が快適と感じる湿度は50%前後だそうです(註8)。

  • 註7: 口を開けて寝ているから喉が渇く事が多いぞ!
  • 註8: 70%あたりからカビが発生します。

健診する時期を誤ると、大変な事になるぞ

By: Kazusei Akiyama, MD


2012年08月

今月のひとりごと:『健診する時期を誤ると、大変な事になるぞ』

8月は一時帰国される邦人が多い月です。それで、その機会に健康診断を受診するというパターンがよく見られます。この場合の健診とは企業の定期健康診断のことですね。健康診断とは健康状態を評価し、健康の維持、病気の早期発見を目指すものです。そのために診察(註1)と各種検査が行われます。定期健診は法律で定められたものですから(註2)、皆さんきちんとされる訳です。日本に帰っている時に健診をするのはよく考慮して実施すると問題ないのですが、「ついでに」受けたりすると大変な事になりねません。

『健康状態とはその時の状況によって変化するものなのだな。あたりまえだけど。状態がよくない時であったり、また、一時帰国して連日会食など、普段の生活とは違う状況であったりすると、間違った評価になる。企業健診というものは「やって、はい終わりです」ではなく(註3)、所見により再検査だの治療だのいろんな展開が起こされるので、場合によってはとてもややこしい精密検査などになったりしてしまうのだ。また、医原病も怖い。医療を受ける(この場合、検査だけにしても)事による体調不良の出現や医療事故なども十分ありうる。一番よろしくないパターンは、当地での駐在員が業務関係で日本出張し、その機会に「ついでに」健診するのだと考える(註4)。』

実例をあげます。業務報告のため東京出張されたサンパウロ駐在員の例です。あまり内容が芳しくない報告のため、本社での会議でご本人曰く「3日間メタメタにやられ」、その直後に健診を受診されました。その結果、不整脈をはじめ、心電図や循環器系の検査でひっかかり、精密検査となりました。サンパウロに帰着後検査する事になったのですが、受診時にも不整脈がみられ、心臓内科での診察の結果、運動負荷をかけた心筋シンチ検査(註5)や冠動脈造影(註6)を実施する事になりました。結果はすべて問題なしで、結局元々心臓系に問題のない方であったので、会議の負担や健診結果を見て、ストレスが上昇したための所見だったのです。 おそるべしストレス!ここで注目したいのは、不要な検査を受けたであろうということです。平常であれば、健診にひっかからなかったのではないかと十分考えられます。精神的負担も不要、時間・費用的に不要、また検査にはリスクを伴うもので、これも不要ではなかったでしょうか?

『健診というと軽く考えていたり、おざなりに済ましていたりしてないだろうか?医者側は健診の企画をするにあたり注意すべき項目が多々あるが(註7)、受診する側もそれなりにちゃんと考えて受けないと、不本意な結果と展開になる可能性があるぞ。日本で健診を受けるのもいいけど、状況的や時間的にややこしい場合、サンパウロで健診することを考慮するほうがよいと思う。サンパウロにはちゃんと健診が出来る医療機関があるのだから。』


註1:この「診察」というのが実は健診で一番重要な項目である。診察時の問診と身体検査で患者さんの体調や傾向、生活習慣や家族歴などから来る疾病リスクなどの見当をつける。でもほとんどの健診サービス、「診察」のウェイトが少ない。

註2:日本の場合、1972年の労働安全衛生法によって規定されている。2007年に大幅に改正された。

註3:やってはい終わりだったのだな。それでは「はい、良いですとか悪いです」と状況把握しかできてなかったので、悪い場合改善行動も伴うべきと改正があった。これがいわゆるメタボ健診の始まりだな。

註4: 反対に健診するために日本出張することもあるが、これは問題ないのでは。

註5:運動負荷(走ったり、自転車を漕いだり)をかけながら、心臓の筋肉に特異的に付着する放射線物質を投与し、これを測定する。心臓の血流が悪いと、付着しない。

註6:脚や腕の動脈から細いカテーテルを入れ、心臓の冠動脈までたどり、造影剤を入れながら、撮影する。狭窄部分などがあれば画像にでる。

註7:健診の企画についてはまたの機会にひとりごとします。


シリコンなくてもでかいんですよ

By: Kazusei Akiyama, MD


Result of one night snowing. Shirahone Onsen. Caju©2012

2012年07月

今月のひとりごと:『シリコンなくてもでかいんですよ』

さてなにがでかいと言うと、ブラジル人女性のお尻です。理由はある有名なコミックを読んで、?、となったからです(註1)。漫画の中で、ブラジル視察に来た日本の大手企業のトップがリオの海岸を”視察”している場面で:

「こちらの女性はみんなお尻の形がいいですね」

「ハハハ いいとろこに気がつきましたね 実はあれはシリコンです」

「シリコン?」

「そうです 整形です」

「ブラジル人は女性の一番のチャームポイントはお尻だと思ってます だから若い娘達は形をよくするために普通にシリコンを入れてますよ」

「へえ」

と、当地駐在員とトップが会話します。本当かな?ド勘違いでしょう、これは。ブラジルの女性に「普通にシリコンが入っている」のは胸で、お尻ではないです。筆者が想像するに、この資料は次のような情報で現れたのでしょう:

  • *ブラジルは美容形成手術が盛んです;
  • *ブラジルの女性のチャームポイントはお尻です;
  • *ブラジルの女性はお尻にもシリコンを入れます。

ここで、”お尻にも”の「も」が欠落すると、前出の「普通に入れる」にぶっ飛ぶわけですな。たしかに胸以外にお尻、太もも、ふくらはぎ、上腕、胸(男性向け、筋肉質にみせるため)、顔などの形成にシリコンインプラントが使われるけど、圧倒的に多いのはやはり豊胸手術です(註2)。

『これを読んで思ったのが、やはり日本人からみて、ブラジル人女性はボリュームあるだった。体格がアメリカ人ほど大きくないにしても、違う。平均的な日本人女性は体重40キロ台が多いのだが、ブラジル人は60キロ台、痩せていても50キロ台だもんな。医療をするときもこれを考慮しておかないと、薬の出し過ぎとかになる。あるいは、検査の基準値に入らない(註3)ので異常値に見える。はなしを戻して、お尻と胸とどちらかにシリコン入れるかというと、後者になるのは理由があるのだ。お尻は筋肉が多いので、鍛えようがあるけど、おっぱいはないのだな。だから、この漫画の正しい会話は「…だから若い娘達は形をよくするためにせっせとジム通いでお尻の筋トレをしてますよ」になる。友人のT氏曰く、「横から見て、前も後ろも出っ張りのない、エンピツ嬢」がよしとされる国(註4)から見ると、当地のお尻には圧倒されて、シリコンでも入れないとこんなのにならない、であるのだろうか?』

  • 註3:例、クレアチニンという腎機能に関係する血液検査があるが、体全体の筋肉量に依存するので体格が小さいと値が小さい。当地で検査すると日本人女性の結果はブラジル人女性の基準値以下になることが多い。反対にブラジルの基準値内でも日本人女性にとっては基準値以上であってもその異常値に気が付かない。
  • 註4: 2011年7月号の「開業医のひとりごと」痩せていればよいというものでもないぞを参照。

いずれにせよ、取材が甘い感じがしたのです。いよいよ社長がブラジルに視察に来るとは、本当にブラジルトレンドですね。だからこそ、ちゃんとした情報発信を心がけようと決心する筆者でした。


糖尿病を考えるのに良い機会なのだな

By: Kazusei Akiyama, MD


2012年06月

今月のひとりごと:『糖尿病を考えるのに良い機会なのだな』

最近の一般刊行物の健康のページなどで、日本の糖尿病に関連する検査の基準値が変わった話を多数みます。HbA1cと表記される検査で、正式な名称は「ヘモグロビンエーワンシー」です。「グリコヘモグロビン(註1)」と呼ばれることもあります。糖尿病はこれからどんどん増える病気です。この話題をきっかけに20人(註2)の読者様のご関心をひけたら幸いです。

HbA1cは血糖値を評価するのに使用されます。絶対値としての数値である血糖値は採血時の状況で「空腹時血糖」と「随時血糖」に分類されます。つまり、空腹であるかないか、何時間空腹かによって数値が変わります。その反面、HbA1cは採血から過去約2ヶ月くらいの血糖値の平均を反映する検査なので、採血直前の食事の有無の影響を受けません。

『暴飲暴食した直後や体調不調時の採血で血糖値が上がったとしても、HbA1cが高くなければ、一過性のものだとわかるのだな。反対に普段から生活態度が悪く、血糖値が高い輩が検査前の数日間食事などの改善をして血糖値が正常範囲になっても、HbA1cは低くならない。ばれる。』

基準値が変わったのは、つまるとことろ日本で使われていた基準値と海外(米国)で使われていた基準値が異なっていたため、検査結果の評価に誤解が生じたり、国際共同治験をするのに問題があったりしたからとされてます(註3)(註4)。おおざっぱにいうと日本の基準は”海外”とくらべ数値が約0.4%低かったので、この分引き上げがあったのです(表1)。これで患者さんのデータの数値が上がる訳ですが、基準値自体も引き上げがあったので、この措置により診断数が増えるということではないはずです。但しこれは学会の基準の変更であり、各医療機関がそれを採用するかは異論がでてます(註5)。

『基準値というものはそれをサンプリングした人口に由来するものであるから、どちらが正しいとかそういった問題ではない。筆者が注目するのはデータを同調することによって研究の比較が容易になる面以上に、新薬の開発や市場に出す時の学術的データの裏付けをするためではないかと思う。日本市場に外国で開発された糖尿病治療薬が入りやすくなるのだな。日本人は欧米人と体格や代謝能力が違うので、はたして正しい比較になるのであろうか?新基準をみていると、米国人に比べ、日本人のほうが糖代謝がさほど高くないことがわかる(註6)。いずれにしても現時点で確実にいえるのは、日本人種が欧米化した食生活を進めると、確実に糖尿病になることだな(註7)。』

 

註1:正確にはHbA1cはグリコヘモグロビンの一種である。

註2:そうなのです、読者様が一人増えました。減ったり、増えたり。平均して20人前後がこのコラムの愛読者様なのでしょうね。たぶん。

註3:くわしく言うと国際基準とはこの場合NGSP値のことで、日本基準はJDS値と呼ばれる。本当の意味での国際基準としてはIFCC値と呼ばれるコンセンサスがあるが、定着していない。ネットで検索するとさらに詳しい情報があります。興味のあるかたはどーぞ。

註4:ちなみにブラジルでもほとんどの検査機関で米国基準が使用されている。

註5:主に表記や報告システムの変更に関するコスト面でもめている。

註6:HbA1cは平均的な血糖値を表す、したがって、高いと血糖値がいつも「高め」であること、つまり、代謝能力が低いことを意味する。

註7:ブラジルのサンパウロ州バウル市で行われている日系1世と2世を対象にした長期疫学調査ですでにでているデータとして、40歳以上の男性の2型糖尿病とその予備群の有病率は40%以上あり(ほとんど半数ですよ!)、発病リスクは同世代の日本在住の邦人とくらべ約7倍たかい!


日本人の顔はマスクで見えない

By: Kazusei Akiyama, MD


2012年05月

今月のひとりごと:『日本人の顔はマスクで見えない』

4月に日本に行きました。桜の季節真っ只中で美しい日本でした。その反面、「花粉症」の季節でもあります。それでどちらを向いてもマスク着用の人ばかりでした。花粉症+マスクは完全に日本の都市文化に定着した感じがあります。広義の花粉症は植物の花粉にアレルギー反応をおこすことですが( 註1)、一般的にはスギやヒノキの花粉に対するもので鼻づまりやくしゃみなど鼻の症状、目のかゆみなど目の症状、咳やのどのイガイガなど喉の症状、皮膚のかゆみなどのセットで、かなりの人口が罹患するものがいわゆる花粉症と理解してもいいと思います。

『もともと日本では花粉症はなかったのだな。今のブラジルでもない。花粉や植物に対するアレルギー性鼻炎や結膜炎はあるのだが、国民的イベントではないぞ。日本では1960年代から報告されはじめ、現在では都市人口の30%までが花粉症になっている可能性がある。北米ではブタクサ、西欧ではイネ科の花粉症があることを考えると、先進国になるほど花粉症になりやすのだな。日本の場合、スギの大量植林のため、スギ花粉の量が増え、それが主な原因とされる。それだけではないぞ。アレルギーの発症や重症度というものは接触・曝露する量に比例するものではないのだな。つまり、アレルギー反応をおこす物であれば、微量でも十分おこす。スギ花粉が大量にあるということは、接触する機会が増えるということだけだ。問題は日本人がアレルギー体質になってしまったところにあると考える。』

アレルギー体質と都市化は密接しています(註2)。大気汚染のため呼吸器系が病気になりやすくなる、アスファルトやコンクリートで造られた街、緑地の減少のため、花粉が吸着分解されにくい環境なども原因に挙げられてます。筆者はそれ以外に、都市生活に多い例えば洗剤や防腐剤のような化学製品や食生活も関連していると思います。

『これの根拠は個人的な体験でしかないが、非常に興味深い事があった。とある理由で日本の公立(いずれも市立)の小学校で講演をする機会があったのだが、明らかに若くて、共働きが多い地域の子供達は明らかに主婦かつ教育ママの多い地区の子供達に対し、アトピー性皮膚炎が圧倒的に多かった(註3)。どちらも平屋が多い、地方都市の郊外の街であったことを考えると、生活仕様からくる食生活の違いであるのではないかと思う。前者のほうが簡要食品、スナック菓子、加工食品などの消費が多くあるように見えた。』

いずれにしてもアレルギー体質になる要因は少なくないと考えられますので、花粉症でない方でも安心できません。19人の読者様の都市生活、大丈夫ですか?

ちなみにマスク、しっかり装着しないと意味がありません(註4)。立体タイプはちゃんと顔の大きさにあった物を使いましょう。平型はワイヤー部を鼻にあて、ワイヤーを曲げて鼻の形に形成し、下部は顎の下までしっかり引き下げます。高価なものより、安価で1日2回以上交換(捨てる)ほうが効果的です(註5)。


註1:アレルギー性鼻炎、アレルギー性咽頭炎、アレルギー性結膜炎、アレルギー性皮膚炎、花粉性肺炎など。

註2:必ずしも先進国と関連とは言えない。自然が多く、生活仕様が日米とは違う北欧ではあまりアレルギー性疾患はない。

註3:同じ40人くらいのクラスの前者が約4割、後者が2~3人。いずれも保護者(ほとんど母親)と接する機会があった。

註4:この場合の意味は「花粉を吸入しない」ですね。日本の文化ではもともとマスクは自身の病気を他人様にうつさない心遣いであったのですが。

註5: マスクだらけで日本は今不気味だぞ。顔、そして表情が見えないから。


ストレスは不安障害の原因の一つなのだ

By: Kazusei Akiyama, MD


2012年04月

今月のひとりごと:『ストレスは不安障害の原因の一つなのだ』

前月のブラジルでの運転のひとりごとは大変反響がありました。「そのとおり、ムチャクチャだ」で自身の体験談の様な賛同も結構あったのですが、それ以上に多かったのが、「それで怖い。外出するのも疲れる」の様な恐怖の意見です。海外で生活するにあたり、不安になる要因が多いほど健康にもトラブルが出てきます。東洋では「すべての病は気から」というように、気がうまく回らないと病気になります。このような場合は例えばストレス関連障害と呼ばれる精神および行動の障害と関連します。うつ あるいはパニックになってしまった、というやつですね。

『これらはいわゆる精神科領域で「不安障害」と分類されているのだな。日本人も含み、 一般人口の25%がこのような障害があるという調査もある。うつ状態。(註1)(註2)』

  • 註1: ①抑うつ気分(気分の落ち込み、いやな気分、空虚感、悲しさなど);②興味・喜びの喪失;③食欲や睡眠の増減
  • 註2:躁鬱病(最近では双極性感情障害と呼ばれる)のようなかなり重篤な症状がでるものは「気分障害」に分類されている。これは生物学的な欠陥がある疾患、つまり、神経伝達物質の不足・不良などのために病気になるのではないかという説が最近強い。

地域医療や一般内科の診療の実態ではうつ状態(註3)がよく見られます。今回のブラジルの交通が怖かったり、あるいは危険なため、運転できない、外出できないためストレスが溜まるような生活状況では誘発される要因に十分なりえます。ただ、反対に精神的症状をきたす器質的疾患(註4)もあるので、一概に精神病であるとは言えません。精神的症状がある場合、必ず器質的原因を除外した上でしか精神障害とは診断できません。器質的疾患であれば、原因を治療すれば(可能であれば)うつ状態自体も良くなります。精神障害であれば、必要期間投薬したり、カウンセリングを受けたり、東洋医学的治療をしたり、いろいろアプローチができます。

  • 註3:一過性のストレス性障害(急性ストレス障害、適応障害、心的外傷後ストレス障害など)、自律神経失調症、パニック障害、恐怖症性不安障害、心気障害、心因性や内因性うつ、など。
  • 註4:一番多いのが甲状腺疾患。副腎や副甲状腺疾患。脳血管障害。パーキンソン病。脳腫瘍。膠原病。重金属中毒。

『うつ状態やパニックの症状はつらい。日本人的に根性論で克服するのもいいけど、治療したほうが楽じゃないの?引きこもったり、ブラジルに居る境遇を呪ったりしてないで。とにかく症状が2週間以上つづくようだとなにかがおかしいから医者に診てもらいましょう。』

ちなみにブラジル人の運転で根本的に一番ちがい、かつそれが分かってないと危険であるのが、「黄信号」です。日本では黄信号の意味は「もうすぐ赤になりますよ、止まる準備をしましょう」ですよね。一応ブラジルでも規則上そうなのですが、実状は「 もうすぐ赤になりますよ、急げば間に合うぞ(註5)」なので、黄信号イコールスピードアップなのです。黄信号になるとかえってスピードを上げてくる車が多いので、これは覚えておいたほうが良いと思います。

  • 註5:vai que dá とポル語で言います。

ブラジル人の運転は絶対に信用してはならない。

By: Kazusei Akiyama, MD


2012年03月

今月のひとりごと:「ブラジル人の運転は絶対に信用してはならない。」

今回はかなりきついひとりごとですね(註1)。でもちゃんと理由があるのです。現地のむちゃくちゃな交通事情は交通事故に直結しており、事故は医療と関係があります。傷害例は治療の対象になり、死亡例は死亡統計に計算されます。事故は医学では外傷と呼ばれ、これらの数字を公衆衛生の観点で解析して公共政策を立てるわけです(註2)。一般的に先進国になるほど、「外傷」による死亡原因が減ります。ちなみにブラジルでは2000年の公式統計では外傷が第4位です(註3)。また、外傷の内交通事故死より他殺死(殺人など)が多いのも先進国でない一つの証明でしょう。しかし近年の好況で自動車が増え、運転する人口も増え、交通事故が「疫病」と認定されるまでになりました(註4)。

  • 註1:また自動車の話ですね。
  • 註2:医療費に関する国家予算と関係があります。
  • 註3:ブラジルの死亡原因(2000年)1心疾患、2不明な原因(冗談では無いです)、3癌、4外傷。比較すると日本では1癌、2心疾患、3脳血管疾患、4肺疾患です。原因の構築の違いが分かります。
  • 註4:ブラジルの交通事故死の原因トップ3:1轢死(歩行者がひかれる)、2全面衝突、3二輪の事故(バイクがこけて自滅する)

『こういったところでブラジルの教育不足・不良が顕著に表れたのだな。運転免許を取るのにautoescolaなる教習所に通う義務があるのだが、形式だけだな。金をだしてパスできるし。だから運転技術が未熟であるし、体系立てられた方法でもない。また、交通規則(註5)を学習・理解していない。したがって、対向車線や交差点など「相手」が必然的に存在する交通では「むこう」がなにするのか分からないし、読めない。これだけでも大変なのにブラジル人特徴である「責任は他人のもの(註6)」と「上手いことやる(註7)」が背景にある。さらに、社会整備がちゃんとしていないので、運転しにくい(註8)。これだけあると表題のひとりごとになるのだ!』

  • 註5: 1997年に公布されたブラジルの交通規則自体は世界的に見ても進んでいると評価されているのだが。取り締まりが不良でしょう。
  • 註6:それで「権利は自分のもの」なのだ。
  • 註7:ser espertoというやつだな。
  • 註8:道路標識が不良であったり、車線がいきなり無くなったりするでしょう?

当地の自動車運転は筆者の観点から見ると非常に大きな欠陥があると思います。 とにかく、あぶない。絶対に他人に頼ること、つまり「譲ってくれる」や「規則を守ってくれる」のを期待してはだめです。だれも責任とってくれません。それより怪我したり死んだほうが損です。カーニバルの期間中の取り締まりでは去年に比べ、飲酒で引っかかったのが5倍に増え、サンパウロ州では死亡が29%増加でした。ブラジルでは運転はよほど自信がない限りやめたほうがいいのでは?それで、する場合「あつかましく」運転するのがコツです(註9)。

  • 註9:日本人の様に「他人の迷惑を考えたり」「人様の事を思いやったり」してはだめです。

『最後にブラジルでしかありえない交通事故の筆者の実例です。筆者はスクーターに乗るのですが、サンパウロのイビラブエーラ公園前の信号での出来事です。信号が赤になったので先頭で停車線で止まりました。同じ車線の前を行っていた車は信号を無視して、横断歩道をさらに2メートルほどの所で「上手いこと」信号をパスしてやろうと狙っていたのですが、不運なことにCETの車(註10)がこの赤信号で横に停車したのです。悪い事をしていると分かっている前の車はバックを始めました。「まさか停車線までバックしないよな」と筆者は思ったのですが、どんどん来ます。「うそだろ~」。それでピッピ~とクラクションを鳴らしたのです止まりません。ピッピッピ~。でも止まりません。ぶっつかっても。むこうはどんどんバックします。仕方ないので車体を蹴っ飛ばしました(凹みました)。これでやっと止まり、「いったい何だ?!」と怒ってお兄さんが車から降りてきたのですが、開口一番「おまえはバックをしているのを見ていなかったのか?バックライト点いているだろう。」でした。』

  • 註10:CETはサンパウロ市の交通整備機関で違反切符を切れる。

2026年3月校閲:運転の無茶苦茶は更にひどくなる見込みです。今年の1月より運転免許取得に教習所通学義務が現行政府により撤廃された。教習所費用が高すぎて免許を取得できない(しない)人が無免許運転する状況への素晴らしい対応だそうです。