錯覚してますよね:牛乳編

By: Kazusei Akiyama, MD

Hill Town. Ouro Preto. Caju© 2018.


2018年10月

錯覚してますよね:牛乳編

我々の生活の中では「良いと思って」錯覚しているものが結構あるのではないかと思われます。これらに焦点をあてる「錯覚してますよね」シリーズの第二弾は「牛乳」です。

牛乳は完全栄養食品と言われ、発育に良いため、日本の学校給食では国の規則により必須の食材です。小さい時からの教育(註1)で「牛乳は飲むほど健康に良い」と思っている人は多いと思われます。ブラジルでは脂肪分が多いのが問題とされてますが、当地でもどちらかというと優等な食品である旨肯定的な意見が多くみられます。カルシウム源として重要であるので、発育や骨粗しょう症予防のためにできるだけ沢山牛乳や乳製品を摂りましょうといったところですね。元々日本人は乳製品は摂らなかったのですが、太平洋戦争後、いわゆる食の欧米化の先陣としてパンと一緒に日本に入った歴史があります。牛乳の成分は主に水分、タンパク質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラル、必須アミノ酸、と栄養価が高い食品である事は事実でしょう。問題は栄養価値が高いか?という所にあるのではないかと考えます。

『誰が、どの様に使うか。で価値があるかないかになるな。』

牛乳、特に大量生産されたのには色々問題があります。表にリストアップしてみました。

問題・事実

健康と関連

説明

日本人種に牛乳は合わない

下痢、腹痛

アジア人は欧米人に比較して、乳糖を分解する酵素(ラクターゼ)が少ない、無い

高脂肪高蛋白食である

牛乳のみならず、高脂肪高蛋白食は癌の発生を高める

カルシウム、リンが多く、マグネシウムが少ない

発育、骨粗しょう症、腎臓結石、精神疾患

大量にカルシウムを摂取するのはメリットではない。カルシウムは生命の危険に関する物質であるので、体内の量を調整する機能が強く働き、過剰摂取した分は必ず排泄されるし(結石になる確率が増える)、リン酸カルシウムになり体内に沈着する。牛乳を大量に摂取する社会では骨折が多い研究結果がある(註2)。

飽和脂肪酸が多い

肥満、高脂血症、血液ドロドロ、動脈硬化

生産者はできるだけ乳脂肪分の多い牛乳を目指す。血液粘度が高くなる。

エストロゲンなどホルモンが多い

女性化、女性ホルモン依存の癌、前立腺癌

生産性を高めるため、妊娠した牛が好んで使われるため、女性ホルモンが多い。

成長因子IGF-1が多い(註3)

乳癌、大腸癌、前立腺癌

IGF-1の増加は、 早期の癌に対抗する自然の体の防衛メカニズム(アポトーシス)を阻害する

牛の飼育は狭い牛舎で行われる

化学物質摂取

牛のストレスがたまる、糞尿もまみれた生活である、病気になり易くなるので、抗生剤が投与される。

牛のエサは自然ではない

生活習慣病、精神疾患?

元々牧草を食べる牛が遺伝子組み換え由来の穀物を食べている。(註4)

乳糖不耐性がある

消化器疾患

ラクターゼが無い場合。

カゼインが多い

アレルギー疾患、アトピー、喘息

腸内pHを高くし、善玉菌を減らし、悪玉菌を増やす。そのため腐敗作用が有意になり、腐敗のため色んな毒素が発生する。(註5)

高温殺菌をする

腸内環境の変化

カゼインが変性して、代謝されにくくなる。乳清(ホエイ)が変性して腸内で乳糖の代謝に変化がおこる。

UHTミルク、いわゆるロングライルミルクを消費するのは論外だな。殺菌処理のため、栄養素が激減する(そのため、元々そのためである子牛に与えると1週間程度で死亡するといった研究がある)し、防腐剤も摂取する事になるからな。』

子牛は生まれた時は50kg程度ですが、2年で500kgの成牛になります。牛乳は子牛のための完全栄養食品であることは間違いないでしょう。身体が早く大きくなるための物質が満載です。それを反対に考えると、「早熟」「早老」を促すモノでありますね。なので、人間でも成長している時期には有用かもしれませんが、生涯をとおしては上の表をみても判るように疑問点が多くみられるのではないでしょうか?ではカルシウム源どうするか?の質問が出そうですが、いくらでももっと安全な代替品があります。(註6)。

『一般的に購入できる「大量生産された牛乳は危険であるので一切飲むな」、とは言わないが、質と量を考えて適量(成人の場合は嗜好品程度)摂取するのが良いのではないかと思う。質は広々とした牧場で牧草を食べている牛の高温殺菌してない絞りたて牛乳が理想的だけと、普通の生活してたらなかなか入手できないですよね。なのでやはり量を制限するしかないですな。』


  • 1:あるいは強制、強迫、日本の学校では牛乳を飲む事を強要するので、牛乳嫌いな人にとっては学校生活の非常に苦痛な事の一つですね。
  • 2:牛乳にはたんぱく質が多く含まれ、それらが代謝されて大量のアミノ酸になる。体内でアミノ酸が多いと、血液が酸性になり、身体はそれを中和するため骨の中のカルシウムを溶かしてしまう。
  • 3:インスリン様成長因子。
  • 4:穀物は牧草に比べ、脂質が多いので、乳脂肪を多い牛乳が生産出来るので、コストのメリットに増して、製品の品質のメリットもあると好んで使用される。
  • 5:アンモニア、フェノール、インドール、硫化水素、など。
  • 6:カルシウムの件はまたの機会にひとりごとしましょう。