By: Kazusei Akiyama, MD
2018年01月
今月のひとりごと:『表示してある情報、わかりますか?』
謹賀新年。2018年は良い年であるように…と願いたいです。ブラジルでは不安神経症になる要因の多い新年ですね。今年はFIFAワールドカップが開催されます。10月には大統領選挙を含め、選挙があります。前半は浮かれ気味。後半は嘘八百のオンパレードで頭の中の正当軸がブレると思われます。(註0)当地では今年は3年前より進められてきた「食品表示」の変革が行われる予定です。改革を進めたい消費者団体とさほど進めたくないメーカーの”戦争”が開戦です(註1)。
食品表示とは名前のとおり、販売される食品に内容、原料、栄養表示など記載する事です。1962年にFAO(国連食糧農業機関)とWHO(世界保健機関)により食品規格が設立されたのが始まりです。それまでは、表示があったりなかったり、内容も各事業者が好きな事をラベルしてました。しかし、毎日の食べ物です。取引の公正、安全性の確保も重要ですし(註2)、何を食しているかを理解する事で健康の増進を図る目的が一番大事なのではないでしょうか?そのため、内容量や原料名、保存方法や調理方法等で始まった表示も近年では栄養に関する情報に重点がおかれるようになりました。表示方法は各国それぞれ規則があり、統一されてませんが、大概、名称、内容量、原材料名と賞味期限が共通してます。原材料は多く含有されるモノから順に記載されるのも共通してますが、日本の場合は「水」(註3)は表示しなくてもよいようです(註4)。
件のブラジル当局(註5)は数年前には「砂糖含有」の表示を図り、加工業界の反対で失敗している経緯があります。今回は「警告」を記載するか(註6)、含有物質(註7)の量により白緑黄赤と色による表示(註8)にするかが争われてます。いうまでもなく、前者は消費者団体案で、後者はメーカー案ですね(註9)。どうなるかは不明です。
現行のブラジルの食品表示には次の情報が義務化されてます:
1.原材料リスト。多いモノから順に記載。単品(例:酢)の場合は原材料名のみ。
2.生産者と消費者窓口。
3.ロットと賞味期限。
4.内容量。
5.栄養表示表。
6.栄養に関するその他の情報。グルテン含有、大豆含有、diet食品、等。
表示違反項目もあります:
a.間違った食品の代用:例:イチゴジャムは生で食べるイチゴの代用でない。
b.効能をうたう:特に医療関係の効能は禁止。
c.当たり前の特徴を得するような言い方:例:コレステロールフリーの食物油(植物油はコレステロールを含有しない。)、本当のトマトが入ったケチャップ(トマトが入らないとケチャップではない。)
栄養表示表は4種類ありますが、一番良く見るのが次のモデルです。記載項目は一盛りに対し「カロリー」「炭水化物」(註10)「タンパク質」「総脂質量」「飽和脂質」「トランス脂肪酸」「食物繊維」「ナトリウム」。
ブラジルの食品の栄養表示表(2017年現在)
「食品表示があれば、人の生活に好影響をあたえる」のだろうか?偽装事件もあるし。数字を読んで理解、判断できるのだろか?できてないでしょ。食品表示が早くから導入された米国が良い例だろう。全人口の1/3が肥満!平均寿命世界第40位…一体何を食べて病気になるのかがわかるリストになってませんか?』
- 註0:このコラムの24人の読者様、是非、冷静に騒ぎをやり過ごしてくださいね。
- 註1:現地メディアのトーンです。
- 註2:食の安全については2012年1月のコラムもご覧ください。
- 註3:飲料水の事ではなく、食品に含有される水。
- 註4:日本の場合、関連する法律が食品衛生法、JAS法、景品表示法、計量法、健康増進法、医薬品医療機器法と6種類あり、整合性がないとの指摘がある。
- 註5:ANVISA 保健省国家衛生監督局。
- 註6:ブラジルのタバコのパッケージは警告タイプですね。日本のように「危険性を高めます」のようなヌルイ表示ではなく「この製品は心臓病や心筋梗塞をおこします」や「この製品はインポの原因になります」等、短い文章とギョッとする写真が表示されてます。。
- 註7:主に「カロリー量」「砂糖」「飽和脂質」「トランス脂肪酸」「ナトリウム」「人工甘味料」の表示。
- 註8:健康に危険なほど、赤。
- 註9:但しメーカー案では「総糖体量」「総脂質量」「ナトリウム量」の簡易案。
- 註10:ここに砂糖が入る。