医業をしたければ医者になればいいのよ

By: Kazusei Akiyama, MD


2013年09月

今月のひとりごと:『医業をしたければ医者になればいいのよ』

このコラムの22人の読者様、皆さんお元気でしょうか?暑かったり寒かったりで体調が不安定ですね。このところ続いて申し訳ないのですが、今月もかたい話です。今年の7月に11年間議会で議論されて立案された「ブラジル医行為法」が一部拒否の状態(註1)で大統領府に承認されました(註2)。これに対するひとりごとです。

医師や医療に関する法律や規則はそれぞれの国で異なりますが、大概共通する点があります。まず、「いかに人の健康を守る(註:その延長で「健康を害しない」)」、そして「その健康を守る従事者や機関の秩序」ではないかと筆者は愚考します。日本の例を挙げると、このテーマに関する法律は「医師法」「医療法」があります。前者は医師とは何か、何ができるか、何をしないといけないか、を定義してます。後者は医療を提供する業界の定義です。違った観点からいうと、前者が医業に携わる個人に対する規則で後者が同、体制と法人(行政も含む)に対する規則でしょう。日本の場合、どちらも戦後、1948年の法律です。しかし、実は日本でも「医行為」(または「医業」)の法定義はなく、それぞれの場面で「解釈」されてきたのが現状です。日本の厚労省の解釈では「医師の医学的判断および技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、または危害を及ぼすおそれのある行為」とあります(註3)。もっと解りやすいのが「医師が行うのでなければ保健衛生上危害の生じるおそれのある行為」であると考えます(註4)(註5)。

ここでまた全世界で共通するのが、医学や医療行為そのものが進歩してきて、非常に複雑になってきたことです。また、平均寿命の延長や都市構築の進化で人口や疾病の構成が変化してきたこともあります。この状況で医療サービスの広大複雑化がおこり(註6)医業そのものの定義が見直されないといけない時期にきているのかもしれません。

『ブラジルで起こっているすったもんだも結局純粋な医行為そのものの法定以上に医師以外の医療従事者のプレッシャーで生じているものである。つまり、彼らが複雑化する医療行為の範囲をできるだけ取り囲もうとする動きがあるからだな(註7)。また、「医業は独占であり、独占は悪である」といったロビー活動が特に(現時点で資格すらも確定されていない)鍼灸施術者により同時に行われている。でもそれを言うと、反対になんでもありで、医者などいらないのでは(註8)?  要するに、「医行為」の法定とともに「医業類似行為」の法定も同時に行わなかったのが失敗の元ではないかと思う。しかし11年間議論し、上院と下院に通過した法案をばっさり削除するか?』

ちなみに医業の独占事項とは、「診断」と「治療方針の決定」であると愚考します。そして、「医業に携わりたい者は医学部にいって医者になれば良いのだ。」と思います。


註1:この法案の一番の特徴である、診断や治療など医師の業務に関する肝心なところが削除されたので、意味のない法律になってしまった。

註2:先月のコラムで「ブラジル医師法」と書きましたが、正しくは「ブラジル医行為法」「Lei do Ato Médico」です、訂正します。

註3:平成17年7月26日の医政発第0726005号。

註4:平成13年11月8日医政発第10号。

註5:この2つの医政は内容的に同じだろう。時期の違う厚労省から発令されているが、17年のは「政治的に正しい」世論の反面かな?

註6:例えば介護サービスの展開、昔はなかったですよね。

註7:例えば、看護師による子宮頸癌検査サンプルの採取、検査技師による画像検査の実施

註8:日本では幸い(?)医業類似行為という概念があり、その中に按摩・マッサージ師、鍼灸師、柔道整復師などの業務が入っているので、それほど問題にならない(のかな?)。